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反体制勢力の動き
クッルナー・シュラカー(12月19日付)は、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)など15の反体制武装集団が共同声明を出し、弁護士のラッザーン・ザイトゥーナ女史の誘拐への関与を否定したと報じ、手書きの声明文の写真を掲載した。
共同声明は、ヌスラ戦線、ダーイシュのほか、イスラーム軍、ドゥーマー殉教者旅団、アジュナード・シャーム・イスラーム連合フダー青年大隊、グータの獅子旅団、ラフマーン軍団、ウマイヤの剣大隊、アッラーの獅子大隊、東グータ革命家大隊、地域治安局、総合治安軍、革命治安軍、軍警察、東グータ治安士官の連名で出されている。
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『ハヤート』(12月19日付)は、西側高官の話として、イスラーム戦線がロバート・フォード駐シリア大使との会談を拒否した理由に関して、会談の予定がメディアでリークされたためだと報じた。
また会談拒否は、米国との接触で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)から「シリア版覚醒委員会」、「西側の手先」と批判されたことを懸念したためだと付言した。
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シリア革命家戦線は総合委員会会合を開き、ジャマール・マアルーフ氏(シリア殉教者旅団大隊連合司令官)を総司令官(総司令官付)に、ミスカール・アブドゥッラー氏を副司令官に、ハイサム・ウサイフィー氏(第7師団司令官)を軍事問題担当副司令官に、ターリク・フーリー氏を総務担当副司令官に、ムハンマド・シャウワー氏を報道官に、アフィーフ・スライマーン大佐を北部戦線司令官に選出した。
クッルナー・シュラカー(12月20日付)が伝えた。
シリア政府の動き
ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、獄中死した英国人医師のアッバース・ハーン氏の遺体を明日までに駐レバノン英国大使館に引き渡すと述べた。
AFP(12月19日付)が報じた。
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ナシュラ(12月19日付)によると、アリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣は、国内で活動する反体制組織・野党の政治同盟「平和的変革諸勢力連立」の代表としてカドリー・ジャミール前経済問題担当副首相がジュネーブ2会議に参加すべきだとする一方、国内の反体制勢力は、国外で活動するシリア革命反体制勢力国民連立の傘下に入って大会に参加することはないと述べた。
また、ハイダル大臣は、サウジアラビアがイスラーム戦線を支援することで、国内の紛争の「陣頭指揮をとっている」と非難した。
国内の暴力
アレッポ県では、アレッポ情報センター、シャフバー・プレス(12月19日付)、シリア人権監視団によると、アレッポ市(シャイフ・ナッジャル地区など)、サフィール市郊外、ダーラト・イッザ市、マーリア市、マンビジュ市、アナダーン市に対して、軍が樽爆弾などで爆撃を行った。
一方、SANA(12月19日付)によると、カフルハムラ村、カフルウバイド村、カフルナーハー村、カサーラート村、ワディーヒー村、ヒーラーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市ではサカン・シャバービー地区、ハナーヌー地区、カーディー・アスカル地区、フィルドゥース地区、サーリヒーン地区、マアーディー地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、アッシリア民主機構が声明を出し、政治局長のカブラール・ムーシー・クーリーヤ氏が総合情報部に身柄を拘束されたと発表した。
一方、SANA(12月19日付)によると、ティシュリーン油田周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、クッルナー・シュラカー(12月19日付)が、複数の反体制筋の話として、シャームの民のヌスラ戦線のアミールの一人でヨルダン人のムハンマド・ヒヤーリー氏がダルアー市での戦闘で数日前に死亡した、と報じた。
ヒヤーリー氏は29歳で、当時のアミールだったムスタファー・アブドゥッラティーフ・サーリフ氏がイヤード・トゥーバースィー氏(アブー・フライビーブ、死亡したとされる)の後任としてヌスラ戦線ムジャーヒディーン・シューラー評議会メンバー兼シャリーア委員会メンバーに任命、その後サーリフ氏の死を受けてアミールとなり、2013年4月頃からシリアでの戦闘に参加していたという。
一方、SANA(12月19日付)によると、ダルアー市旧税関地区など、ナマル町・ズィムリーン村街道、ウンム・アウサジュ村・ザマリーン村街道、ズィムリーン村南部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(12月19日付)によると、ダイル・アダス地方、アドラー市ウンマーリーヤ地区、ドゥーマー市、ハーン・シャイフ町、リーハーン農場、アーリヤ農場、ナブク市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス県では、SANA(12月19日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またシャーグール区とザバダーニー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が負傷した。
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ヒムス県では、SANA(12月19日付)によると、ヒムス市ワアル地区、ハーリディーヤ地区、南マシュジャル地区、タルビーサ市、ラスタン港キースィーン湾、ガースィビーヤ村、ハーリディーヤ村、ダール・カビーラ村、ブルジュ・カーイー村、キースィーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またヒムス市のマハッタ・サカニー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民1人が負傷した。
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イドリブ県では、SANA(12月19日付)によると、アルバイーン山周辺、バスリーヤ村、サラーキブ市、カフルナジュド村、バドリーヤ村、ルワイサ村、サルミーン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(12月19日付)によると、ダイル・ザウル市ジュバイラ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またジャフラ村住民が、反体制武装集団の襲撃に応戦、複数の戦闘員を殺傷した。
レバノンの動き
AFP(12月19日付)によると、ベカーア県バアルベック郡カーア地方の山間部に、シリア領内から発射された迫撃砲弾9発が着弾した。
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レバノン軍は声明を出し、ベカーア県バアルベック郡アルサール市郊外で、オートバイに乗って不法入国しようとした武装したシリア人6人を軍が逮捕したと発表した。
諸外国の動き
ロイター通信(12月19日付)は、ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣がインテルファクス通信とのインタビューで、アサド大統領の大統領選挙出馬への意思表明に関して「緊張を高め、事態の収束にまったく資さない」と述べたと報じた。
同報道によるとボグダノフ外務副大臣はまたアサド政権と反体制勢力の双方に「(ジュネーブ2会議の)交渉を前にして、いかなるものであれ恨み、怒り、反論をもたらすような発言をすべきでない」と述べたという。
しかし、SANA(12月19日付)によると、駐ダマスカス・ロシア大使館は、ボグダノフ外務副大臣の発言に関する報道が事実無根だと否定した。
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ロイター通信(12月19日付)は、欧州の複数の高官の話として、イランとロシアが、アサド政権に国連の人道支援関連の職員にビザを発給するよう影響力を行使している、と報じた。
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国連総会で、アサド政権による人権侵害を非難する決議が、賛成127、反対13、棄権47で採択された。
同決議は、サウジアラビア、米国など11カ国が共同提案し、シリア国内での化学兵器使用に関与した者に対して必要な措置を講じるよう国連安保理に求めているほか、シリア国内での過激派の台頭への懸念を表明した。
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『ハヤート』(12月20日付)は、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表が、シリアの反体制勢力の代表らと会談し、ジュネーブ2会議の準備について意見を交わしたと報じた。
同報道によると、この会談で、ブラーヒーミー共同特別代表は、何者かに拉致された反体制弁護士のラッザーン・ザイトゥーナ女史、当局が逮捕した民主的変革諸勢力国民調整委員会のラジャー・ナースィル氏らの釈放の必要を強調したという。
またブラーヒーミー共同特別代表と会談したシリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長らクルド人活動家らは、シリア革命反体制勢力国民連立とは別にクルド人の統一代表団を派遣したい旨、知らせたという。
ダルウィーシュ書記長はその際、イラク・クルディスタン地域のエルビル市で、シリア・クルド国民評議会、西クルディスタン人民議会が統一代表団派遣で合意したことを明らかにしたという。
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カタールのハーリド・ブン・ムハンマド・アティーヤ外務大臣は訪問先のアルジェリアでの記者会見で、シリア情勢に関して「政治的解決以外にシリアの危機から脱却し得るものはない。我々はこうした解決を支持する」と述べた。
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アムネスティ・インターナショナルは、シリア・イラク・ダーイシュ(イスラーム国)が「自らの支配地域でイスラーム法が適用されていると主張し」、処刑、殺戮、拷問といった人権侵害を行っているとする報告(http://www.amnesty.org/en/news/syria-harrowing-torture-summary-killings-secret-isis-detention-centres-2013-12-19)を発表した。
AFP, December 19, 2013、elnashra.com, December 19, 2013、al-Hayat, December 20, 2013、Kull-na Shuraka’, December 19, 2013, December 20, 2013、Naharnet, December 19, 2013、Reuters, December 19, 2013、Rihab News, December 19, 2013、SANA, December 19, 2013、UPI, December 19, 2013などをもとに作成。
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