ロシア・トルコ・イラン首脳会談でシリア情勢への対応協議:米軍撤退後の情勢、イドリブ県の処遇をめぐって連携を続けることを確認(2019年2月14日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、イランのハサン・ロウハーニー大統領は、ロシアのソチで首脳会談を行い、シリア情勢への対応を協議した。

会談には、各国の外務大臣、国防大臣らも同席した。

会談では、シリア駐留米軍撤退決定への対応、北・東シリア自治区の支配下にあるシリア北部の国境地帯地域の処遇、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握しているイドリブ県および同地一帯の反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)の処遇、紛争の政治的解決に向けた制憲委員会設置への対応、シリア復興への対応などについて意見が交わされた。

会談後、三カ国首脳は閉幕声明を発表、共同記者会見に臨んだ。

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閉幕声明の主旨は以下の通り:

1. シリアの主権、独立、領土統一、国連憲章を尊重する。
2. 「テロとの戦い」を口実として、シリアの国土に新たな現実を作り上げようとするあらゆる試みを拒否する。
3. シリア駐留米軍の撤退は、実行されれば、シリアの治安と安定を強化する。それゆえ、その早期実現を求める。
4. シャーム解放機構が影響力を強めているイドリブ県などシリア北西部の緊張緩和地帯にかかる諸合意を実施するための措置を講じる。
5. ダーイシュ(イスラーム国)、シャーム解放機構、そのほかアル=カーイダやダーイシュとつながりのある個人、組織、国連安保理がテロ組織に指定するそのほかの組織の根絶に向けて協力する。
6. シリア北東部情勢に関して、その治安と安定を保証するための連携して努力を行う。その際、これまでの合意に立ち返り、主権、領土保全を尊重する。
7. 国連安保理決議第2254号に従い、危機の軍事的解決は行わない。
8. 制憲委員会の設置と活動開始に向けて、シリアの当事者、そしてシリア問題担当国連特別代表と連携・協力を継続する。
9. シリア全土における安定回復に向けた支援の努力を継続し、国連、関連機関など国際社会に対して、支援を増大させ、水道、電力、学校、病院などのインフラ復旧に貢献し、シリア難民が帰還するのにふさわしい環境を整備するよう呼びかける。
10. 4月にトルコにおいて三カ国首脳会談を開催する。

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ロシアのプーチン大統領は共同記者会見で、「米軍が発表したシリア北東部からの部隊撤退計画がシリア情勢の進展にどのような影響を与えるのかについて議論がなされた…。我々はこうした措置が前向きなもので、シリア国内のこの地位(北東部)の事態の安定化に資すると見ている。合法的な政府が最終的にこの地域を再び掌握しなければならない」と述べた。

イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「イドリブ県のテロの温床に寛容であることはできない。これを殲滅するための措置が講じられねばならない」と述べた。

また、「イドリブ県における(アスタナ会議)保障国(監視部隊の)駐留は一時的なもので、反体制派の支配下にあるイドリブ県の過激派が行ってくる敵対行為は懲罰なしには済まされない」と付言した。

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イランのロウハーニー大統領は、トルコとシリア政府の断交状態に関して、「イランはアンカラとダマスカスの関係を緊密化させるため万全の用意がある」と述べ、シリアとトルコの関係改善を仲介する意思を示した。

また、イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「ヌスラ戦線(シャーム解放機構)に属していたイドリブ県の戦闘員を浄化する(ロシアの)意志を支援する…。彼らが名前を変えたという理由だけで、彼らを放置するのは間違いだ…。イドリブ県はシリアの一部で、テロリストをそこから浄化する必要がある。どのように名のっていようとシリアから退去させねばならない」と強調した。

そのうえで、「我々はテロとの戦いに関する我々の方針を確認した・我々はイドリブ県にかかる覚書に従ってでき得ることをするよう努力を続ける…。我々はシリアであれ、ほかの地域であれ、イドリブ県であれ、新たな悲劇も新たな人道危機も望んでいない。トルコは、困難ななか、一部諸国の挑発にもめげず、イドリブ県を平穏に保つため、多大な努力を行ってきた」と付言した。

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エルドアン大統領は、ドナルド・トランプ米大統領によるシリア駐留米軍撤退決定について「この決定がいつ実施されるのか、そして実際に行われるのかが不明確だ…。イランはロシア、イランと連携して、シリアからの米軍撤退を支援したい。一方でシリアの国土統一の尊重する必要があり、他方で新たに設置されるであろう安全地帯がテロリストに掌握されないようにすることを保証する必要がある」と述べた。

イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「イドリブ県では停戦が行われている。シリア政府はそれを守らねばならない…。トルコがめざしているのは、シリアの領土統一を実現し、マンビジュ市(アレッポ県)からテロリストを浄化し、イドリブ県のテロ分子に居場所を与えないことだ」と述べた。

シリア政府との関係修復を仲介するとのロウハーニー大統領の提案に対して、コメントはしなかった。

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RT(2月14日付)、SANA(2月14日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(2月14日付)などが伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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