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反体制勢力の動き
ジャズィーラ・チャンネル(12月18日付)は、シャームの民のヌスラ戦線指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏との単独インタビューの映像(https://www.youtube.com/watch?v=r4-DsmeL48Q)を放送した。
ジャウラーニー氏がテレビ局のインタビューに応じるのはこれが初めてだが、後ろ姿が映し出されただけで、容姿は明らかにされなかった。
インタビューのなかで、ジャウラーニー氏は「ヌスラ戦線だけで、社会を指導することはないだろう。例えば、シャーム全土を解放する段階に至り、ダマスカスが陥落し、シャームの80%が解放されたというようなことが言われたとしても、犠牲となり、貢献してきた人々、この国(シリア)の外にいたとしても意見を持っている人々のなかから(輩出される)シャリーア諸委員会、アフル・ハッル・ワ・アクド、ウラマー、思想家らが集うことになろう」と述べた。
また「例えば、シャームの民のウラマーが集い、シューラーのための諸評議会、アフル・ハッル・ワ・アクドのための諸評議会を招集し、この国を運営する野にふさわしい計画を策定する。もちろん、この計画はイスラーム法に準じたものとなり、そこではアッラーの法による統治がなされ、シューラーが設置され、公正が拡がることになる」と付言した。
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ロイター通信(12月18日付)は、サウジアラビアに近いシリア革命反体制勢力国民連立メンバーの話として、連立代表が13日のロンドンでのシリアの友連絡グループ会合で、ジュネーブ2会議での和平会談によってアサド大統領退陣が決定されることはなく、またアラウィー派が移行期政府における基本的な当事者としてとどまる、とのメッセージを西側諸国から伝えられたと報じた。
同メンバーによると、西側諸国のこの決定は、アル=カーイダなどサラフィー主義武装集団の台頭と、対トルコ国境地帯での影響拡大が主因で、西側諸国は、アサド大統領を排除すれば混乱が生じ、過激なイスラーム主義者がシリアを支配すると考えているという。
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シリア・クルド国民評議会のカーワー・アーズィーズィー氏はKDP.info(12月18日付)に、評議会が会合を開催し、ジュネーブ2会議に派遣する代表団の人選を終えたと述べた。
アーズィーズィー氏によると、評議会代表団は、アブドゥルハミード・ダルウィーシュ氏(団長)、アブドゥルバースィト・スィーダー(シリア国民評議会前事務局長)、イブラーヒーム・バッルー氏、ムスタファー・サルユー氏、カーミーラーン・ハッジー・アブドゥー氏から構成される、という。
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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長がイラク・クルディスタン地域のエルビル市を訪問した。
『ハヤート』(12月19日付)によると、ジュネーブ2会議の代表団の人選などについて協議することが目的だという。
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シリア国民評議会は声明を出し、シリア国内での人権活動家、宗教関係者(キリスト教司祭、修道士)、ジャーナリストの誘拐・拉致を非難、懸念を表明した。
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シリア革命家戦線司令官の一人ジャマール・マアルーフ氏はクッルナー・シュラカー(12月18日付)に対し、イスラーム戦線との間に何らの本質的な意見の相違はなく、「我々とイスラーム戦線を、我々はバッシャール・アサドの体制と戦う単一の集団だと考えている」と述べた。
マアルーフ氏はまた、イドリブ県バーブ・ハワー国境通行所を72時間以内に両戦線の共同管理下に置き、同通行所周辺の自由シリア軍参謀委員会の武器庫をイスラーム戦線が返還するだろうと付言した。
一方、シリア中部では反体制武装集団の約25%が、北部では約30%が、シリア革命家戦線に参加を予定しており、同戦線がシリア全土に勢力を拡大していると主張した。
シリア政府の動き
外務在外居住者省報道官は声明を出し、イスラーム戦線との接触の可能性を示したジョン・ケリー米国務長官の発言に関して、ジュネーブ2会議に出席する反体制勢力の代表団の人選に失敗した結果だと批判した。
SANA(12月18日付)が報じた。
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外務在外居住者省は、駐ダマスカス・チェコ代理大使に、獄中で死亡した英国人医師アッバース・ハーン氏の死に関する第三者機関の報告書を提出した。
同報告書によると、ハーン氏はシリア領内に不法入国、違法な活動を行ったために逮捕され、首つり自殺を図ったという。
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スワイダー市とアレッポ市の労働総同盟本部前で、アドラー市ウンマーリーヤ地区での反体制武装集団による住民「虐殺」と、サウジアラビア、トルコ、カタールによるテロ支援に抗議する集会が行われ、多数の市民が参加した。
各デモには、労働総同盟関係者、県知事、バアス党各県支部の幹部らも参加した。
SANA(12月18日付)が伝えた。
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アサド大統領は2013年法律第25号を発し、2014年度の予算(15日に人民議会で承認、総額1兆3,900億リラ)を承認した。
SANA(12月18日付)が伝えた。
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SANA(12月18日付)などによると、ダマスカス県のダーマー・ルーズ・ホテルで、「シリアにおけるタクフィール主義潮流の記録」と銘打ったワークショップが開催され、共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師、タウフィーク・ラマダーン・ブーティー氏、ムハンマド・シャリーフ・サウワーフ氏、イランのモジュタビー・フセイニー氏(アリー・ハーメナイー最高指導者の代表)らが出席、テロに対するイスラーム教ウラマーの姿勢などが議論された。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国がビデオ声明を出し、アドラー市ウンマーリーヤ地区で「ヌサイリー派」(アラウィー派)の市民3人を斬首、殺害したと発表した。
一方、SANA(12月18日付)によると、リーマー農場、マアルーラー市郊外、ハジャーリーヤ農場、アーリヤ農場、シャイフーニーヤ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
またバイト・サフム市入口で、関係当局に投降しようとした市民多数に向かって、反体制武装集団が発砲、投降を阻止しようとした。
これにより、子供1人を含む市民3人が死亡、20人以上が負傷し、ダマスカス県内の病院に搬送された。
さらにキスワ市とハルジャラ市を結ぶ街道で、反体制武装集団によって仕掛けられた爆弾が爆発し、子供1人を含む市民6人が負傷した。
他方、クッルナー・シュラカー(12月19日付)は、複数の活動家の話として、シリア赤新月社がドゥマイル市に安置されていたシリア軍兵士とイラン人戦闘員の遺体100体以上を搬出した、と報じた。
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ダマスカス県では、SANA(12月18日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、SANA(12月18日付)によると、カフルナジド市、ハラシュ・ムスィッビーン村、ハミーマート・ダーイル村、サルジャ村、タフタナーズ市、ビンニシュ市、マアッルザーフ町、バイーニーン村、タルマラー村南部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ダーウード大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、SANA(12月18日付)によると、ヒムス市ハミーディーヤ地区、ワアル地区、ラスタン市、ルービーダ村、ティールマアッラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、SANA(12月18日付)によると、ダルアー市旧税関地区など各所、アトマーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市各所に対するシリア軍の爆撃が続き、過去4日間で、子供数十人を含む135人が死亡した。
一方、SANA(12月18日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、タッラト・ガーリー、ナイラブ航空基地北部、マンスーラ村、マンナグ村周辺、タッル・リフアト市、アナダーン市、フライターン市、カフルダーイル村、ナクリーン村、ハッダーディーン村、ラスム・バクルー村、ダイル・ハーフィル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、アレッポ城周辺、旧市街、サラーフッディーン地区、スッカリー地区、アンサーリー地区、ブスターン・バーシャー地区、シャイフ・マクスード地区、サカン・シャバービー地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
諸外国の動き
ロバート・フォード駐シリア米大使はアラビーヤ・チャンネル(12月18日付)に対して「イスラーム戦線は、理由を明らかにせずに我々と席をともにすることを拒否した…。我々は彼らと席をともにする用意がある。なぜなら、我々はシリアのすべての当事者、政治集団と話しているからだ」と述べた。
またフォードフォード大使は、「我々の姿勢は革命当初から確固たるものだ。バッシャール・アサドは完全に正統性を失った」と述べつつ、「ジュネーブ2会議は、アサドの支配の終わり、ないしは退任を必ずしも意味しない。このことは政治的解決に向けて歩もうとしないダマスカスの姿勢から明らかだ」と述べた。
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欧州連合(EU)のクリスタリナ・ゲオルギエバ委員(国際協力・人道支援・危機対応担当大臣)は、ブリュッセルで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界食糧計画(WFP)、およびユニセフと、シリアに対して1億4,700万ユーロの戦災支援を供与する合意に調印した。
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『ハヤート』(12月19日付)は、複数のアラブ・西側外交筋の話しとして、トルコ政府がイスタンブール市で17日に予定されていたイスラーム戦線幹部と米英仏外交官との会合の招致をとりやめた、と報じた。
同報道によると、米国は会合に前向きだったが、フランスが「自由シリア軍」の弱体化を招き、「得体の知れない」武装集団の存在を認めることになるとして出席を拒否したのだという。
英国は当初米国とともに、会合を支持していたが、ほどなくフランスに同調したという。
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米財務省は、カタール人のアブドゥッラフマーン・ブン・ウマイル・ヌアイミー氏とイエメン人のアブドゥルワッハーブ・ムハンマド・アブドゥッラフマーン・フマイクニー氏の2人が、シリア、イラク、ソマリア、イエメンのアル=カーイダに対して資金・物資提供などの支援を行っていると認定した。
『ハヤート』(12月19日付)が報じた。
AFP, December 18, 2013、Alarabia.net, December 18, 2013、Aljazeera.net, December 18, 2013、al-Hayat, December 19, 2013、Kull-na Shuraka’, December 18, 2013, December 19, 2013、Naharnet, December 18, 2013、Reuters, December 18, 2013、Rihab News, December 18, 2013、SANA, December 18, 2013、UPI, December 18, 2013などをもとに作成。
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