2013年12月17日のシリア情勢

反体制勢力の動き

イドリブ県バーブ・ハワー国境通行所周辺の拠点・武器庫をめぐって対立していたイスラーム戦線とシリア革命家戦線は和解合意に署名した。

和解合意は、イスラーム戦線政治部門代表のハッサーン・アッブード氏(アブー・アブドゥッラー・ハマウィー)とシリア革命家戦線のジャマール・マアルーフ司令官が署名し、メディアでの中傷合戦の停止、根拠のないこれまでの声明すべての破棄、両組織を「ジハードの道のりにおける兄弟」と位置づけること、道徳問題に対処する委員会の設置の4点を確認した。

『ハヤート』(12月18日付)などが伝えた。

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イラク・クルディスタン地域のエルビル市で、マスウード・バールザーニー大統領のイニシアチブのもと、シリアの主なクルド民族主義組織が一同に会し、ジュネーブ2会議での対応などについて協議した。

シリア・クルド・アーザーディー党(シリア・クルド国民評議会)のムスタファー・ウースー書記長は『ハヤート』(12月17日付)に、バールザーニー大統領が16日に、シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会(民主連合党)の代表と個別に会談したことを明らかにした。

ウースー書記長によると、この動きはトルコ国会議員のレイラ・ザナ女史(クルド人)、PKKメンバーでディアルバクル県知事のオスマン・バイデミル氏が仲介役を務めたという。

一方、AFP(12月17日付)は、シリア・クルド国民評議会のバフジャト・バシール氏の話として、前日の個別会談を踏まえて、17日にシリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会の代表が複数回にわたって直接会談を開いたと報じた。

バシール氏によると、「西クルディスタンにおける「クルド人の家」と政治的言説の統一、ジュネーブ2会議への準備の統合」がめざされる一方、両者の意見対立の解消が図られたという。

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シリア革命反体制勢力国民連立は、声明を出し、シリア軍が16日にジュネーブ諸条約に違反して、アレッポ市インザーラート地区のティーバ初等教育学校を爆撃し、子供、教師、職員合わせて18人を殺害、40人を負傷させたと非難した。

声明ではまた、それ以外にも、アレッポ市シャッアール地区(17人)などへの樽爆弾の攻撃で43人が死亡したと発表、「ジュネーブ2会議や政治的解決に対するアサド政権の姿勢の真意が暴露された」と非難した。

さらにロシアとイランに対して、アサド政権による殺戮を停止させるため圧力をかけるよう呼びかけた。

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シリア革命総合委員会は声明を出し、「自由シリア軍」が16日にラタキア県カルダーハ市をロケット弾4発で攻撃、またジャブラ飛行場にもロケット弾3発を打ち込み、人的被害を与えたと発表した。

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スワイダー県調整、シャフバーおよび周辺村調整、スワイダー学生調整、自由のためのスワイダー弁護士委員会など423の組織・活動家が共同声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立、シリア国民評議会などに対し、移行期政府のタグリード・ハジャリー文化大臣の解任と連盟への参加資格凍結を求めるとともに、シャームの民のヌスラ戦線が拘束しているスルターン・バーシャー・アトラシュ大隊のハーリド・リズク氏、ラーイフ・ナスル氏の釈放、および自由シリア軍参謀委員会傘下の軍事法廷への身柄引き渡しを求めた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のルワイユ・サーフィー報道官が声明を出し、連立脱会を表明した。

「偏向状況の克服」、「個人的、党派的、イデオロギー的な利益でなく国益の提示」を求めてきたが、「地域諸国の政治闘争の意思から独立した愛国的な決定」が必要だと感じたことが理由だという。

シリア政府の動き

外務在外居住者省報道官は、シリアでの化学兵器使用に関する国連調査団による最終報告書に関して「シリアの現在と未来を標的とした破壊計画の敗北」を示すものだと高く評価した。

同報道官は「アキ・セルストロム団長による報告は、ハーン・アサル村やダマスカス郊外県グータ地方各所で武装テロ集団によってサリンガスが使用した…とのシリア政府の申し立てを認める一方、米英仏、そしてその手先のサウジアラビア、カタール、トルコなどがアル=カーイダ、シャームの民のヌスラ戦線などのテロリストの犯罪を隠蔽するために主張していた(シリア政府による化学兵器使用に関する)嘘の申し立て40件以上を却下した」と強調した。

SANA(12月17日付)が伝えた。

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ダルアー市、タルトゥース市、ハマー市、ラタキア市で、アドラー市ウンマーリーヤ地区での反体制武装集団の「テロ行為」に抗議する集会が開かれ、各会場にはそれぞれ市民数百人が集った。

SANA, December 17, 2013

SANA, December 17, 2013

各デモには、労働総同盟関係者、県知事、バアス党各県支部の幹部らも参加した。

SANA(12月17日付)が伝えた。

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カドリー・ジャミール前経済問題担当副首相はRT(12月16日付)に「米国や西側の古くて新しい計略の実現阻止し、自衛できたシリア・アラブ軍はすばらしい(ブラボー)」と賞賛した。

その一方、ジャミール前副首相は、シリア政府の改革実施の遅れが、外国の介入の素地を作ったと批判、また紛争の軍事的な解決は不可能との見方を示した。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市シャッアール地区に軍が爆撃を行い、子供2人、女性2人を含む13人が死亡した。

ラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、過去数日間で反体制武装集団が占拠するアレッポ市内の街区への樽爆弾などによる軍の攻撃が激化しており、軍が同地区に進軍しようとする意思が感じられる、という。

一方、アレッポ市で活動するメディア活動家のアブドゥルカリーム・ライラー氏はクッルナー・シュラカー(12月17日付)に、アレッポ市内で活動する武装集団、革命家集団は、非常警報を出し、アレッポ県シャッアール地区、カーティルジー地区、ハイダリーヤ地区、マアーディー地区、バーブ市、ムスリミーヤ村に対する軍の攻勢に対して「鉄拳」をもって徹底抗戦するよう呼びかけたことを明らかにした。

この呼びかけは、国民イニシアチブ委員会の名でアレッポ市で活動する約260の反体制活動家・組織が呼びかけたもので、20日(金曜日)を「アレッポ救済のための怒りの金曜日」と定め、徹底抗戦を呼びかけている。

他方、SANA(12月17日付)によると、ナイラブ村南部、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、バーブ市一帯、シハービー農場、クワイリス村、アルバイド村、カスキース村、ナッカーリーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、シャッアール地区、スッカリー地区、ジャズマーティー地区、ハイダリーヤ地区、サーフール地区、ハナーヌー地区、アンサーリー地区、カラム・ダーダ地区、サカン・シャバービー地区、シャイフ・ダーヒル地区、ハラク街道地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

しかし、アレッポ市マンシヤ地区、イバーラ地区などに反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民5人が死亡した。

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ダマスカス県では、『ハヤート』(12月18日付)によると、ヤルムーク区に軍が迫撃砲など重火器で攻撃を加え、パレスチナ難民キャンプ入口付近で反体制武装集団と交戦した。

他方、SANA(12月17日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またムハージリーン区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が死亡した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市南部入口のパノラマ検問所で、爆弾が仕掛けられた車が爆発し、軍側に死傷者が出る一方、同市ジャウラ地区で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(12月17日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区、ジュバイラ地区、工業地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ジュンド・アズィーズ旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またズィーバーン町付近で、イラク・シャーム・イスラーム国などを含む反体制武装集だのメンバーが、盗掘・密輸した油田の分け前をめぐって衝突、複数の戦闘員が死傷した。

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ダマスカス郊外県では、クッルナー・シュラカー(12月17日付)によると、サウジアラビア人がのった旅客バス2台がドゥマイル市の軍検問所で失踪した。

このバスはサウジアラビアに向かっていたという。

一方、SANA(12月17日付)によると、アドラー市ウンマーリーヤ地区、アーリヤ農場、リーハーン農場、シャイフーニーヤ村、ドゥーマー市、ヤブルード市、ザマルカー交差点周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(12月17日付)によると、ラスタン湖、バルグースィーヤ村、アルシューナ村、ダール・カビーラ村、ガントゥー市、ラスタン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(12月17日付)によると、ビンニシュ市、マアッラト・ヌウマーン市、マルナド村、バザーブール村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカフルナジュマ市では、送電設備の修理にあたっていた電力公社職員が反体制武装集団に襲撃され、1人が死亡、3人が負傷した。

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ダルアー県では、SANA(12月17日付)によると、ダルアー市旧税関地区など所、インヒル市、アトマーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、アクナーフ・ウマリー大隊、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(12月17日付)によると、ティシュリーン油田周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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『ザマン』(2013年12月17日付)は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、『ミッリイイェト』紙の取材に同行していたトルコ人カメラマンのベンヤミン・アイギュン氏を拉致したと報じた。

レバノンの動き

UPI(12月17日付)によると、ベカーア県バアルベック郡バアルベック市に、シリア領内から発射された迫撃砲弾6発が着弾、うち1発がレバノン軍の兵舎を直撃、兵士2人を含む3人が負傷した。

これに関して、マルワーン・ハディード中隊とシャームの民のヌスラ戦線がツイッターを通じて声明を出し、「グラード・ロケット6発でヘルメル郡にあるイランの党(ヒズブッラー)の拠点を狙った」と犯行を認めた。

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NNA(12月17日付)によると、ベカーア県バアルベック郡のスブーバー村・ワーディー・アブー・ムーサー村間の街道で、爆弾を積んだ車がヒズブッラーの検問所からの銃撃を受けて、爆発し、ヒズブッラーのメンバーや市民複数が負傷した(しかし、マナール・チャンネル(12月17日付)は人的被害を否定した)。

車は街道にあるヒズブッラーの検問所から約2キロの場所で爆発した。

諸外国の動き

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表付報道官のハウラ・マタル女史は、ジュネーブ2会議の日程に関して、1月22日にスイスのモントルー市で開催されると発表した。

Rihab News, December 17, 2013

Rihab News, December 17, 2013

マタル女史によると、会議は23日一時中断したのち、24日にジュネーブの国連本部で再開され、シリア政府と反体制勢力の使節団の協議により会期が確定するという。

AFP(12月17日付)などが伝えた。

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ジョン・ケリー米国務長官は訪問先のマレーシアでの記者会見で「米国の代表は今のところイスラーム戦線と会していない。しかし、そうしたことが起きるかもしれない。穏健な反体制勢力の基盤と、ジュネーブ2会議におけるシリア国民の基盤の拡大をめざすすべての支援国は現在、努力を行っている」と述べた。

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トルコのイスメト・ユルマズ国防大臣は、国会での答弁で、16日付の『ヒュッリイェト』の報道に関して「2013年にトルコからシリアにいかなる武器も提供されていない」としつつ、猟銃とエアライフルが供与されたことについては認めた。

AFP(12月17日付)が伝えた。

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AFP(12月17日付)によると、ヨルダン北部のザアタリー避難民キャンプでガスボンベが爆発して火災が発生、子供2人を含むシリア人避難民3人が焼死した。

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BBC(12月17日付)は、シリア国内で投獄中の英国人医師アッバース・ハーン氏(32歳)が死亡したと報じた。

この医師は、反体制勢力の野戦病院で医療活動を行っていたが、2012年11月にアレッポで逮捕されていた。

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化学兵器禁止機構(OPCW)は執行理事会で、米国によるシリアの化学兵器の洋上廃棄処理を柱とする廃棄計画を確定した。

OPCW関係者によると、同計画の骨子は以下の通り:

1. 2013年12月13日以降、国内12カ所の貯蔵施設から化学兵器関連物資をラタキア港に集積する。
2. ラタキア港へのシリア軍による化学兵器関連物資の輸送を支援するため、ロシアが装甲車15台、給水車20台、貨物車輌50台、野外調理施設付トレーラー13台、テント52帳を提供する。
3. ロシアが、ラタキア港から化学兵器関連物資を搬出するノルウェーとデンマークの貨物船に、シリア領海を出るまでの安産確保を担当する。
4. 化学物質の流出などの事態が生じた場合、フィンランドが支援し対処する。
5. ラタキア港から搬出された化学兵器関連物資のうち危険性が高い化学物質を、2013年末までに、イタリアで廃棄処理設備を搭載した米国の貨物船に積み替える。
6. 2014年3月末までに、危険性の高い化学物質を米国の貨物船が洋上で廃棄処理を行う。
7. タキア港から搬出された化学兵器関連物資のうち危険性が低い化学物質を、2014年2月5日までに、民間企業が無害化する。
8. 廃液を民間企業が無害化する。

AFP, December 17, 2013、BBC, December 17, 2013、al-Hayat, December 18, 2013、Kull-na Shuraka’, December 17, 2013, December 18, 2013、al-Manar, December 17, 2013、Naharnet, December 17, 2013、NNA, December 17 2013、Reuters, December 17, 2013、Rihab News, December 17, 2013、RT, December 17, 2013、SANA, December 17, 2013、UPI, December 17, 2013、Zaman, December 17, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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