トルコはシリア北西部に対する侵攻作戦「平和の泉」作戦を開始、ラッカ県、ハサカ県の国境地帯に越境砲撃、爆撃を加え、国民軍も侵攻を開始(2019年10月9日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、シリア北西部に対する侵攻作戦「平和の泉」作戦を開始すると発表した。

アナトリア通信(10月9日付)によると、エルドアン大統領は「シリアの地元部隊の支援を受けたトルコ軍は、シリア北部でテロ組織PKK(クルディスタン労働者党)/YPG(人民防衛隊)に対する「平和の泉」作戦を開始した」と発表、「我々の目的は我が国の南部国境近くに作られたテロ回廊を壊滅し、この地域に平和をもたらすことだ」と強調した。

エルドアン大統領はまた「我々は、「平和の泉」作戦を通じて設置する「安全地帯」などへのシリア難民の帰国を保障するとともに、シリアの領土の一体性を維持し、地域住民をテロのかぎ爪から解放する」と付言した。

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シリア人権監視団、アナトリア通信(10月9日付)によると、侵攻作戦「平和の泉」開始を受けて、トルコ軍地上部隊は、北・東シリア自治局の支配下にあるラッカ県タッル・アブヤド市一帯、ハサカ県ラアス・アイン市一帯、アームーダー市西のハムドゥーナ村、ハルズィー村、そして北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるカーミシュリー市に対して越境砲撃を行った。

この砲撃でラッカ県とハサカ県で、民間人8人が死亡、少なくとも13人が負傷した。

死者内訳は、ラッカ県のタッル・アブヤド市近郊で民間人1人、同市に近いマトカルト村で女性1人と子供2人、カーミシュリー市バシーリーヤ地区で女性1人を含む民間人2人、カフターニーヤ市で女児1人、ラアス・アイン市近郊で民間人1人。

またシリア民主軍戦闘員も7人が死亡、28人以上が負傷した。

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CNN Turk(10月9日付)によると、トルコ軍はまた、F-16戦闘機複数機がディヤルバクル県の第8航空基地を離陸、ラアス・アイン市一帯、同市に近いマシュラーファー村、ラッカ県アイン・イーサー市にある人民防衛隊(YPG)の拠点7カ所を爆撃した。

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ドゥラル・シャーミーヤ(10月9日付)によると、トルコ軍地上部隊と国民軍の部隊が越境し、タッル・アブヤド市、ラアス・アイン市方面への進軍を開始した。

また、同サイトよると、ドゥラル・シャーミーヤ(10月9日付)は、トルコの支援を受ける国民軍は、ユーフラテス川西岸のマンビジュ市北の北・東シリア自治局支配地域とトルコ占領地の境界地域に数百人からなる部隊を派遣したとして、その映像を公開した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団、ドゥラル・シャーミーヤ(10月9日付)によると、これに対して、シリア民主軍に所属するジャラーブルス軍事評議会が、ユーフラテス川東岸のズール・マガール村からトルコ占領下のジャラーブルス市およびその一帯を砲撃し、1人が死亡、少なくとも7人が負傷した。

砲弾の一部は、ハブル国内避難民(IDPs)キャンプにも着弾した。

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このほか、北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のカスル・ディーブ村一帯、アイン・ディーワール村を砲撃し、シリア民主軍が応戦した。

これに対してYPGも応戦し、トルコ占領下のジャラーブルス市およぼ同市一帯を砲撃した。

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SANA(10月9日付)は、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるカーミシュリー市での被害の様子を撮影したスマホの映像や、シリア政府支配地域の病院に搬送された負傷者の写真を公開した。

SANAはまた、北・東シリア自治局の共同支配下にあるラアス・アイン市での被害の様子を撮影したスマホの映像を公開した。

 

AFP, October 9, 2019、Anadolu Ajansı, October 9, 2019、ANHA, October 9, 2019、AP, October 9, 2019、CNN Turk, October 9, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 9, 2019、Reuters, October 9, 2019、SANA, October 9, 2019、SOHR, October 9, 2019、UPI, October 9, 2019などをもとに作成。

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