2012年4月25日のシリア情勢

国内の暴力

シリア革命総合委員会など反体制活動家は、UNSMIS先遣隊の視察後にアサド政軍・治安部隊が各地で反体制活動家や市民を弾圧していると宣伝した。一方、シリア政府も武装テロ集団が攻撃をエスカレートさせていると非難した。

シリア人権監視団は、民間人14人を含む17人が各地で死亡したと発表、また別の反体制活動家らによると、死者数は「少なくとも25人」、ないしは「少なくとも40人」に及んだという。

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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会や複数の活動家によると、ドゥーマー市、ハラスター市、カフルバトナー町、サクバー市、ハムーリーヤ市、ルハイバ市などが軍・治安部隊の砲撃に曝され、市街地が「完全」に破壊され、多くの市民が避難する一方、UNSMISとの面談と反体制デモを阻止すべく厳戒態勢が敷かれ、活動家や市民が逮捕された。

複数の活動家によると、とりわけ前日(24日)に国連停戦監視団(UNSMIS)が視察したドゥーマー市では、軍・治安部隊による砲撃が再開され、ヘリコプターが上空を旋回、検問所が再び設置され、多数の活動家や通行人が逮捕され、UNSMISと面談した活動家2人が射殺された、という。

彼らによると、弾圧は、ドゥーマー市市民の一部がUNSMISと面談する一方、自由シリア軍の武装とアサド政権打倒を求める夜間デモを行ったことへの「報復」だという。

またこの弾圧に関連して、シリア革命総合委員会は、ドゥーマー市で17歳の少年を含む複数が殺害され、シャートゥーリーヤ村に治安部隊が突入し市民1人を殺害したと発表した。

こうしたなか、シリア赤新月社は声明を出し、ドゥーマー市で救急医療活動を行っていた隊員のムハンマド・アフマド・ハドラー氏が死亡、ムアイイド・クサイバーティー氏が負傷し、21人が依然として市内で「包囲されている」、と発表し、「関係当事者」に隊員の保護を求めた。

同声明では誰によって包囲されているのかの詳細は示されていない。

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イドリブ県では、シリア革命総合委員会が、ハーン・シャイフーン市で軍・治安部隊がバスを襲撃し、乗客4人を殺害したと発表した。しかし、SANA(4月25日付)によると、ハーン・シャイフーン市で武装テロ集団がバスを襲撃、4人を殺害した。

またシリア人権監視団によると、シャンナーン村出身者がヒムス市で逮捕後に拷問され死亡した。

一方、SANA(4月25日付)によると、対トルコ国境のヒルバト・ジューズで関係機関がシリア領内への進入を試みていた武装テロ集団を拘束した。またサイジャル市で、治安維持部隊兵士が車爆弾の爆発に巻き込まれて死亡し、サラーキブ市でも市民1人が武装テロ集団に殺害された、という。

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ダルアー県では、シリア革命総合委員会が、ブスラー・シャーム市で男性1人が軍・治安部隊の砲撃で死亡、1人が軍・治安部隊と離反兵の交戦で死亡したと発表した。

またタファス市でも治安部隊の発砲で1人が死亡し、3人が軍・治安部隊と離反兵の交戦で死亡した、という。

一方、SANA(4月25日付)によると、ダルアー県では、ブスル・ハリール市で治安維持部隊士官1人が武装テロ集団に射殺された。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会が、ハマー市のダーヒリーヤ地区に軍・治安部隊の車輌が多数展開し、逮捕・取締活動を行ったと発表した。

一方、SANA(4月25日付)によると、ハマー市で、武装テロ集団の自宅で破壊工作のために準備していた爆弾が爆発し、隣接する家々に住む女性・子供ら市民16人が死亡、12人が負傷した。

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アレッポ県では、シリア革命総合委員会が、バヤーヌーン町に軍・治安部隊が砲撃を加えたと発表した。

また複数の活動家によると、アレッポ市裁判所前で弁護士が政権打倒を求めるデモを行った。

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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会が、マリーイーヤ村での反体制デモで10歳の少年が軍によって殺害されたと発表した。

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会が、ラスタン市で青年1人が殺害されたと発表した。

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SANA(4月25日付)によると、このほかアレッポ県、イドリブ県などで武装テロ集団が爆弾を爆破させ、また武装テロ集団に誘拐されていた市民の遺体が発見された。

アサド政権の動き

SANA(4月25日付)は、ファイサル・ミクダード外務在外居住次官が、「シリアがアナン特使の和平案に合意・履行して以降、武装テロ集団が民間人や軍・治安維持部隊への犯罪をさらにエスカレートさせている」と述べたと報じた。

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アラビーヤ(4月25日付)は、アサド政権がゴミ回収・清掃員(公務員)に棍棒やスタンガンを形態させ、街頭での弾圧に動員、デモ参加者の被害に応じて特別手当を支給していると報じた。

反体制勢力の動き

4月21日にシリア・クルド国民評議会の大会で採択された「暫定綱領」に関して、評議会加盟政党の一つであるシリア・クルド・イェキーティー党のイスマーイール・ハンマ中央委員会書記長が、「自決権」という言葉を削除したのが、他の反体制勢力との協力の是非をめぐる対立を避けるためだと述べた。

その理由として、「自決権」という言葉が、国際法上「分離独立」の権利をも含むためだと述べた。

ハンマ中央委員会書記長はしかし、「クルド人、その民族的アイデンティティ、公用語してのその言語、国際慣習に基づく民族的権利の憲法での承認」という綱領の文言によって「自決権」が実質的に認められているとしたうえで、「クルド人は少なくとも連邦制は受け入れないだろう」と付言した。

なお暫定文書は、他の反体制運動との協力関係を構築する際の相互理解覚書に基礎を提供することになる、という。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、『ハヤート』(4月26日付)に対して、26日に予定されているアラブ連盟の外相会合に関して、アナン特使の停戦案を履行しないシリア政府に対して「警告」を発するべきだと述べた。

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RT(4月25日付)は、変革解放人民戦線のカドリー・ジャミール代表が反体制勢力、政権に国民対話を呼びかけたと報じた。

UNSMISの動き

al-Hayat, April 26, 2012

al-Hayat, April 26, 2012

UNSMIS報道官は、インドネシア人1人とガーナ人1人の合わせて2人が加わり、近く先遣隊にさらなる増員が行われると発表した。

また中国外交筋によると、14日に中国人2人も先遣隊に加わり、隊員数は15人となった。

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スーザン・ライス米国連代表大使は、シリア政府が、「シリアの友」連絡グループに参加する国出身のUNSMIS監視団メンバー1名を「国籍を理由」に拒否したことを明らかにした。

ライス大使はまた、「エルヴェ・ラドスー平和維持活動担当事務次長はシリア政府が「シリアの友」に参加するいかなる国の出身者もUNSMISメンバーとして受け入れないことを決定した…。国連の立場から、こうした行為は決して受け入れられない、と述べた」と付言した。

そのうえで、ラドスー次長が4月末までに100人の隊員が派遣されると述べたことを明らかにし、安保理各国が「展開がきわめて遅い」と考えていると述べた。

AFP(4月25日付)によると、潘基文事務総長は近くUNSMIS司令官を任命する、という。

諸外国の動き

フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、在外シリア人女性活動家3人と面談し、アサド政権の弾圧が続けば、軍事行動を踏まえた対応を検討する必要があると述べた。

ジュペ外務大臣が面談したのは、サムル・ヤズバク氏、リーマー・スライマーン氏、スハイル・アタースィー氏。

ジュペ外務大臣はこの面談で、「シリアの現地情勢を受け入れられない」として、アサド政権によるアナン特使停戦案ノフ履行と弾圧の継続を非難、「未確認情報ではあるが、UNSMISが面談した活動家の一部が面談後に粛清された」と述べ、少なくとも2週間以内にUNSMIS300人の全面展開が必要だとの見方を示した。

またアナン特使による5月5日の安保理への報告によって、同特使の仲介の効果の是非が明らかになるだろうとしたうえで、「我々に挑戦するシリア政府を放置できない。同政権が誓約を履行しない場合、軍事行動など、国連憲章第7章に基づいた別の措置を検討すべきである」と述べた。

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AFP(4月25日付)は、トルコのアレキサンドレッタ港で先週、シリアへの武器密輸容疑で拿捕されたアンティグア・バーブーダ籍船から武器・弾薬は押収されなかったとトルコ当局が発表した、と報じた。

AFP, April 25, 2012、Akhbār al-Sharq, April 25, 2012、al-Ḥayāt, April 26, 2012、Naharnet.com, April 25, 2012、Reuters, April 25, 2012、SANA, April 25, 2012などをもとに作成。

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