2013年12月9日のシリア情勢

反体制勢力の動き

イドリブ県などで活動する武装集団14組織は共同ビデオ声明を出し、イドリブ・シリア革命家戦線を結成すると発表した。

同戦線に参加を表明したのは以下の組織。

1. イドリブ県軍事評議会
2. シリア殉教者旅団大隊連合
3. 来たるべき勝利旅団
4. アレッポ第9師団
5. 北部自由人旅団
6. 北部ファールーク大隊
7. ダマスカス・リヤード・サーリヒーン大隊
8. ザーウィヤ自由人連合
9. アンサール旅団
10. ハマー・ファールーク大隊
11. 第7師団
12. ガーブの狼旅団
13. ダマスカス特殊任務連隊
14. イドリブ殉教者旅団

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は訪問先のクウェートで、連立が「複数の大国から文書および口頭で、ジュネーブ2会議後の…政治プロセスにおいてバッシャール・アサド大統領に未来はないとの保証を得た」と述べた。

ロイター通信(12月9日付)が伝えた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・トゥウマ暫定内閣首班は『シャルク・アウサト』(12月9日付)に「シリア政府が政権存続の見返りとして、アル=カーイダとジハード主義者の根絶を約束する…との取引を米国が拒否したことを(米国から)伝えられた」と述べた。

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シリア革命反体制勢力国民連立は「剣によって!」と題した報告書を発表、そのなかでアサド政権が「死の師団」を複数編成し、反体制運動を行う町や村での虐殺を行っていると主張した。

「死の師団」は「革命」発生直後に編成され、共和国護衛隊、イラン・イスラーム革命防衛隊、「シャッビーハ」、ヒズブッラーの戦闘員などからなっているのだという。

連立はこの報告書で、アサド政権によって「これまでに15万人以上の民間人がさまざまな方法で殺害された」としたうえで、ヒムス県、ハマー県、タルトゥース県、イドリブ県、アレッポ県などですくなくとも20件の虐殺行為が行われ、子供200人、女性120人を含む2,885人がその犠牲となったと主張した。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長は、イランと米英仏独露中との核開発に関する合意に関して、『ハヤート』(12月10日付)に「この合意を我々は懸念せざるを得ない。なぜなら、イランがスポットライトを浴び、国際社会に復帰することで、シリア国民が、化学兵器問題のときいと同じように、イランの核問題のつけを払わされることを恐れているからだ」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、アサド政権にジュネーブ合意(2012年6月)を承認するよう圧力をかけるよう国際社会に要求し、同政権が人道状況を混乱させ続ける限り、ジュネーブ2会議の議論は無益なものになると警鐘を鳴らした。

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クッルナー・シュラカー(12月9日付)は、アレッポ県マスカナ市でシャーム自由人運動とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、指名手配者の処遇をめぐって対立を深めていると報じた。

同報道によると、ダーイシュが、マスカナ市シャリーア委員会によって指名手配されていた男性を拘束したのが発端。

男性の身柄引き渡しのため、シャーム自由人運動の使節団が派遣されたが、ダーイシュは面談と引き渡しを拒否、またダーイシュのパトロール隊が使節団長を拉致しようとして、シャリーア委員会やシャーム自由人運動と衝突した。

その後、今度はシャーム自由人運動が、ダーイシュの司令官の一人を検問所で一時拘束したという。

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自由シリア軍国内合同司令部のファフド・ミスリー中央広報担当官は、レバノンのミシェル・アウン氏率いる自由国民潮流が「シリアの複数地区で教会や修道院を守るとの口実で、シリアに支持者を送り込み、戦わせている」と主張した。

ミスリー担当官はまた、レバノンのキリスト教徒民兵にヒズブッラーが「兵站、技術、軍事支援を行っている」と断じた。


ナハールネット(12月9日付)が伝えた。

シリア政府の動き

外務在外居住者省は国連安保理議長と事務総長に宛てて書簡を提出、サウジアラビアがシリア国内のサラフィー主義武装テロ集団を武器、資金、戦闘員教練を援助し、破壊行為に荷担していると非難、迅速且つ適切な対応を求めた。

SANA(12月9日付)が伝えた。

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通信技術省は声明を出し、「光ケーブルの故障」により、国内電話回線、国際電話回線、インターネット回線が一時普通となった」と発表、復旧作業を行い、早急に回線を再開すると発表した。

『ハヤート』(12月10日付)などが伝えた。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)は、灯油業者のイブラーヒーム・カッスーム氏を7日にサラーキブ市で逮捕、「アッラーを侮辱した」との罪で頭を切断し、処刑した。

ダーイシュの戦闘員がカッスーム氏から購入した灯油を「まがいもの」だと言ったのに対し、カッスーム氏が「知るか、俺が「灯油の主(ぬし、アラビア語で「ラッブ」)」とでも言うのか」と言ったのが逮捕・処刑の理由だという。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍がナバク市をほぼ完全に制圧、また国際幹線道路(ダマスカス・ヒムス街道)を奪還に成功した。

また、SANA(12月9日付)によると、軍がナバク市を制圧し、同市周辺での残党追撃を続けた。

また軍はリーマー農場、ドゥーマー市、ハラスター市、アーリヤ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(12月9日付)によると、フマイリー市、ヒルバト・アーリフ市で、反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民3人が死亡した。

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ダマスカス県では、SANA(12月9日付)によると、サーリヒーヤ区の市場に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が死亡、多数が負傷した。

また、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(12月9日付)によると、軍がヒムス市グータ地区、カラービース地区、バーブ・フード地区、ラスタン市郊外、ガースィビーヤ村などで、反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点、装備、地下トンネルを破壊した。

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ダルアー県では、SANA(12月9日付)によると、東ムライハ町、ナーフタ町、ダルアー市各所、ヒルバト・ガディール・ブスターン村、ラスム・カター村、タファス市、ナワー市、アブー・ガーラ村、アイン・フライハ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(12月9日付)によると、ダッバーガート村、ワディーヒー村、アルバイド村、クワイリス村、カスキース村、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、ナイラブ航空基地東部、キンディー大学病院周辺、アレッポ市カースティールー地区、アナダーン市、カッファイン市、マフドゥーム村、ナッカーリーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、アシュラフィーヤ地区、シャイフ・サイード地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(12月9日付)によると、カフルラーター市、マルイヤーン村、シュワイハ市、バラーギースィー市、ジュッブ・アフマル村、カストゥーン村、タンジャラ村、ハミーマート・ダーイル村、ムスタリーハ村、タルマラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(12月9日付)によると、タッル・ブラーク町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

自由国民潮流代表のミシェル・アウン議員(元国軍司令官)はMTV(12月9日付)のインタビューに応じ、シリア情勢などについて語った。

Naharnet, December 9, 2013

Naharnet, December 9, 2013

インタビューのなかで、アウン議員は、自由国民潮流がキリスト教徒の戦闘員をシリアに派遣しているとの自由シリア軍幹部の主張に関して「この主張に驚いた。そうした意思が仮にあったとしたら、公然とやっていたはずだ」と述べ、強く否定した。

またアウン議員は「シリアの反体制勢力は…そこ(シリア国内の教会・修道院)で戦争犯罪を行っている。すべての国際法廷が彼らを裁くべきだ。なぜなら教会・修道院は軍事施設ではなく、信仰の場だからだ…。彼らがマアルーラー市や同市の教会に進入する権利があるというのか?」と非難した。

一方、ヒズブッラーに関しては「イスラエルに対するレジスタンスは選択肢であり、北東部の対シリア国境の防衛も選択肢だ…。ヒズブッラーはシリアに干渉せざるを得なかった」と擁護した。

他方、2014年のレバノン大統領選挙に関して、アウン議員は「議員が望まないのであれば、私は大統領候補にはならない…。私が国家を作るのであれば、レバノン国民が従属者であってはならない…。歴史を通じて、外国の意思が介在せず、レバノン人が選んだ大統領などいない…。しかし大統領任期の延長にも、政治的真空にも反対だ。新大統領選出を支持している」と述べた。

諸外国の動き

AFP(12月9日付)によると、ベルギーの司法当局は、ブリュッセルおよびロンデルゼールで8日、ベルギー警察テロ対策課が、著名なイスラーム教伝道師のジャン・ルイ・デニス氏と親戚4人を、シリアに戦闘員を派遣していた容疑で逮捕したと発表した。

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フランスのローファン・ファビウス外務大臣は、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(12月9日付)に「ジュネーブ2会議は開催されるだろうが、非常に困難な状況にある。なぜなら、バッシャール・アサドが自らの代表を派遣すると言っているからだ」と述べ、アサド政権の参加に疑義を呈した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、シリアでの紛争開始から1,000日目にあたる9日、「シリアにおける交渉を通じた政治的転換こそが紛争を終わらせる唯一の道だ…。紛争を悪化させたアサドは、シリアの未来を構成し得ない」と述べた。

UPI(12月9日付)が伝えた。

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化学兵器禁止機関(OCPW)のアフメト・ウズムジュ事務局長は、シリアの化学兵器廃棄に関して「12月31日の期日までに危険度の高い化学兵器を全廃することは難しい」と述べた。

ロイター通信(12月9日付)が報じた。

AFP, December 9, 2013、al-Hayat, December 10, 2013、Kull-na Shuraka’, December 9, 2013、MTV, December 9, 2013、Naharnet, December 9, 2013、Reuters, December 9, 2013、Rihab News, December 9, 2013、SANA, December 9, 2013、al-Sharq al-Awsat, December 9, 2013、UPI, December 9, 2013などをもとに作成。

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