2011年11月14日のシリア情勢

アサド政権の動き

ワリード・ムアッリム外務大臣はダマスカスで記者会見を行い、シリアでの「リビア・シナリオの再来はいかなる正当性もない」と述べるとともに、「シリアは鼓動するアラブの心臓であるがゆえ、アラブの共同行動」が必要との立場を明示した。

Kull-na Shurakā’, November 14, 2011

Kull-na Shurakā’, November 14, 2011

ムアッリム外務大臣は、アラブ連盟の決議におけるシリアの加盟資格停止に関して「アラブの共同行動、連盟の基礎、そしてその役割との関連で現在、そして未来にわたってきわめて危険な措置」と厳しく非難、決議を「違法で憲章に従っていない」と評した。

一方、反体制勢力との対話に関して、以下のように述べ、シリア国内での実施を改めて主張した。

「対話は政権と反体制勢力に限定されるものではない。なぜなら様々な要求をもつシリア人がいるからだ。彼らは政権、反体制勢力のいずれにも代表されていない。我々は観が手いるのは、国民対話を包括的対話となるよう拡大することだ…。我々はダマスカスで開催予定の国民対話大会に参加するすべての人々を歓迎する。在外居住者でさえ」。

一方、反体制勢力の弾圧に関しては、「国家が国民を保護し、武装テロ集団と対決するのは義務である」と述べた。

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SANA(11月14日付)は、ダマスカス県の外務省舎前でアラブ連盟の決議に抗議する市民がデモを行ったと報じた。

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SANA(11月14日付)は、パレスチナ人が集住するダマスカス県ヤルムーク・キャンプで、パレスチナ住民がアラブ連盟の決議に反対するデモ行進を行ったと報じた。

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SANA(11月14日付)は、イスラエルの占領下にあるゴラン高原のマジュダル・シャムスでアラブ連盟の決議に反対するデモが行われたと報じた。

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SANA(11月14日付)は、ダマスカス県のウマウィーイーン広場で女性数十人が集まり、自らの頭髪を切り落とし、アラブ連盟の決議への拒否の姿勢を表明した。

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SANA(11月14日付)はシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が旧首相府で会合を開いたと報じた。

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『ガド』(11月15日付)は、14日晩にダマスカスのヨルダン大使館前で約120人の市民がアブドゥッラー国王の発言に抗議するデモを行い、そのなかの2人が大使館内に進入したとウマル・アムド在ダマスカス・ヨルダン大使が述べたと報じた。

反体制勢力の動き

SANA, November 14, 2011

SANA, November 14, 2011

国民民主諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役は、訪問中のドーハで『ハヤート』(11月15日付)の取材に応じ、カイロでの反体制勢力の会合に向けた抱負を述べた。

そのなかでアブドゥルアズィーム総合調整役は、「反体制勢力各派は様々な原則をめぐって遵守すべき文書を作成する必要がある。例えば、対話には体制が参加するのか否か?おそらく一部の反体制勢力がそのために努力し、体制との対話を求めてくるはずである」と述べ、外国の介入だけでなく、アサド政権との関係をめぐっても反体制勢力内で対立があることを示唆した。

アブドゥルアズィーム総合調整役はドーハよりカイロに戻り、アラブ連盟決議に基づき他の反体制勢力と会合する予定。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はアンカラでシリア国民評議会執行部の使節団と会談した。

「アフバール・シャルク」(11月14日付)によると、会談で、ダウトオール外務大臣は、シリア国内のトルコ大使館・領事館への市民の襲撃の責任がアサド政権にあると非難した。

またアラブ連盟の決議に関して、トルコが決議の即時・完全履行にむけて連盟と協調すると述べた。

これに対してブルハーン・ガルユーン事務局長を団長とする使節団は、トルコ国内にシリア国民評議会の代表部の設置を認めるなど具体的な協力を求めた。

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『ザマーン・ワスル』(11月14日付)は、自由シリア軍が声明を出し、暫定軍事評議会を発足すると報じた。

同紙が掲載した声明(14日付)によると、暫定軍事評議会は以下の士官から構成される。

リヤード・ムーサー・アスアド大佐(評議会議長)
マーリク・アブドゥルハリーム・クルディー大佐
アフマド・ヒジャーズィー・ヒジャーズィー大佐
アラファート・ラシード・ハンムード大佐
アーリフ・ムハンマド・ヌール・ハンムード大佐
アブドゥッラッザーク・ラーシド・ラフムーン大佐
アブドゥッサッタール・ムハンマド・ジャミール・ユーンスー大佐
ガッサーン・イスマーイール・フライヒル大佐
マーヒル・イスマーイール・ラフムーン少佐

同評議会は、現政権打倒、軍の組織などを目的とする。

http://all4syria.info/web/archives/36745

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シリア国民評議会の使節団は、ドイツ外務省でギド・ヴェスターヴェレ外務大臣と会談した。

評議会が出した声明によると、ヴェスターヴェレ外務大臣はブルハーン・ガルユーン事務局長ら使節団との会談で、自由と民主主義を求めるシリア国民への支持を表明するとともに、政権による弾圧激化への懸念を示し、「シリアでの人権侵害を前に沈黙できない」と述べたという。

反体制運動掃討

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウバル区で市民2人が治安部隊の発砲により殺害された。

また同監視団によると、同市バーブ・アムル地区で黒煙があがっているという。

ヒムス県ヒムス市マハッタ地区のキリスト教会前で反体制デモが行われる映像がYoutubeに公開された。http://www.youtube.com/watch?v=Okk76vY5fEw&feature=player_embedded#t=0s

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市の軍の検問所で1人が射殺された。

また同監視団によると、ヒルバト・ガザーラ町で軍・治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行い、その直後、離反兵と思われる武装集団と激しい交戦状態に入り、軍・治安部隊兵士4人が少なくとも死亡し、軍・治安部隊の戦闘車両5輌が破壊された。

これに対してSANA(11月14日付)は、ヒルバト・ガザーラ町とアルマー町で武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、部隊兵士2人を殺害したと報じた。

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イドリブ県では、シリア人権監視弾によると、ナイラブ村で軍・治安部隊の兵士の遺体5体が発見された。

軍・治安部隊はカフルバッティーフ、ジューバース、アブディーターで指名手配者の追跡を行っているという。

カフルーバ村では、女性と子供たちが反体制デモを行った。

これに対してSANA(11月14日付)は、マアッラ・ニウマーン地方スィンジャール近くで鉄道の線路に武装テロ集団が爆弾5発を仕掛け、うち1発が爆発したと報じた。残りの4発は爆弾処理班が撤去したという。

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ハマー県では、シリア事件監視団によると、カフルヌブーダ町で反体制デモが発生した。

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アレッポ県では、アレッポ市で夜、トルコ国旗を掲げる市民数百人がトルコ大使館、領事館の包囲に抗議するデモを行った。

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なおシリア人権監視団は11月15日、14日に治安部隊による民間人への攻撃や離反兵と軍・治安部隊の戦闘によって多数死亡したと発表した。

具体的な内訳は以下の通り。

シリア北部および南部で治安部隊の弾圧により、民間人27人が死亡した。

ダルアー県で離反兵と思われる武装集団と軍・治安部隊が衝突し、軍・治安部隊兵士34人と武装集団メンバー12人が死亡。

ダルアー県のブスル・ハリール市、ナーフタ町、ムライハト・アトシュ村などで軍・治安部隊の検問所からの市民への発砲で23人が死亡。

ヒムス県では、カフルラーハー市で軍・治安部隊の検問所からの市民への発砲で4人が死亡。またヒムス市のドゥライブ地区で市民1人が殺害。

この発表は15日の被害と合わせて行われ、シリア情勢が悪化しているという錯覚を与えた。

アラブ連盟の動き

アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、シリア情勢を検討するためのアラブ連盟緊急首脳会談の開催をバッシャール・アサド大統領が呼びかけているとのワリード・ムアッリム外務大臣からのメッセージを受け取ったと述べた。

アラビー事務総長は同メッセージを各国に伝えたという。緊急首脳会合の開催には加盟国の3分の2以上の賛成が必要となる。

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アラブ医師連合支援緊急委員会のイブラーヒーム・ザアファラーニー事務局長は、アラビー事務総長と会談し、シリアへのアラブ監視団の派遣に関して、「民間人の状況とその保護のための報告書作成を準備するためすべての場所を訪問する」と述べた。

アラブ監視団の派遣の日程はラバトでのアラブ連盟閣僚会議で決定予定。

アラブ連盟高官筋によると使節団は、アラブ地域諸機関の代表、ジャーナリスト、軍人など約500人からなるという。

諸外国の動き

ヨルダンのアブドゥッラー国王はBBCのハードトークに出演し、「私が彼(アサド大統領)の立場だったら、退いていただろうと思う」と述べた。

また「現体制がそのようなこと(アサド大統領の退任)を許すとは思っていない。それゆえバッシャールが国益に関心を寄せているなら、彼は退かねばならない。しかし同時に、彼は、シリアの新たな政治プロセスの始まりを保障するような行動をとらねばならない」と述べた。

ヨルダンではシリアと同様、今年初めから反体制デモが散発しているが、アブドゥッラー国王は退任していない。

なおこの発言が放映された直後、ヨルダンのペトラ通信は、「ヨルダン国王の発言はシリア大統領への直接かつ明確な退任要求ではなく、同じ状況に身を置く人間がどのようなことをするのかという質問への答えに過ぎない」との声明を出した。

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EU外相会議がブリュッセルで行われ、アラブ連盟の決議への支持を確認するとともに、アサド政府高官・関係者18人を新たに制裁リストに追加することを決定した。

また会談後の声明で、アラブ連盟の決議が高く評価される一方、「EUはシリア国民評議会のように非暴力と民主主義の価値観を遵守する反体制勢力の代表と対話の用意がある」との意思が示された。

会談後、フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、民間人保護が国連安保理を通じて拡充されるべきだと述べた。

英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、EUが追加制裁を科すことが重要だとの見解を示した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は国会で「中東で国民と平和に暮らせず、その希望に添えない者たちは去るべきである」と述べた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、アラブ連盟の決議に関して、「正しくない」と評し、「この決定に与した者は、事態に透明性を付与する実質的機会を奪った」と非難した。

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中国の外交部報道官は、記者会見で「現在重視されるべきは、アラブ連盟のイニシアチブを正しく、そして早急に実施することにある…。中国は改めて、シリア政府とすべての当事者に暴力の停止を求める」と述べ、国際社会にアラブ連盟のワーキングペーパーの実施に相応しい環境を作り出すよう呼びかけた。

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イラン外務省報道官は、アラブ連盟の決議に関して「問題の正常化ではなく複雑化をもたらすだろう」と非難した。

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クウェートの『カバス』(11月15日付)は、クウェートでシリア人1人がスパイ容疑で逮捕されたと報じた。

レバノンの動き

レバノンのナジーブ・ミーカーティー首相は、エジプト、ヨルダン、EUの大使と相次いで会談し、アラブ連盟外相会議での対シリア決議にレバノン代表が反対票を投じたことに関して、アラブ諸国に反対したのではく、自国を守るためと説明したと『ナハール』(11月15日付)が報じた。

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ナビーフ・ビッリー国民議会議長は『ジュムフーリーヤ』(11月14日付)で、アラブ連盟はシリアに対する立場を改める必要があると述べた。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は、アラブ連盟の決議をレバノンの代表が棄権したことに関して、「イエメンのアリー・サーリフと同じ態度をとるべきでなかった」と述べた。『ナハール』(11月14日付)が伝えた。

同記事によると、ジュンブラート党首はまた、「レバノンはシリアに関してアラブ・イニシアチブにコミットすることを声高に述べた方がよかった」としたうえで、「アラブ・イニシアチブがシリア救済を意味している」と述べた。

AFP, November 14, 2011、Akhbar al-Sharq, November 14, 2011, November 15, 2011, November 16, 2011、al-Ghad, November 15, 2011、al-Hayat, November 15, 2011, November 16, 2011、Kull-na Shurakā’, November 14, 2011、al-Liwā’, November 15, 2011、al-Nahār, November 14, 2011, November 15, 2011、Naharnet.com, November 14, 2011、al-Qabas, November 15, 2011、Reuters, November 14, 2011、SANA, November 14, 2011、Zamān al-Waṣl, November 14, 2011などをもとに作成。

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