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反体制勢力の動き
エジプトでのアラブ連盟ナビール・アラビー事務総長との会談を終えた国民民主変革諸勢力国民調整委員会など国内の反体制勢力代表からなる使節団は、カタールのドーハを訪問した。
使節団は、ハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役、アブドゥルアズィーズ・ハイイル、サーリフ・ムスリム、ムンズィル・ハッルーム、ハーズィム・ナハール、ハイサム・マンナーアからなる。
シリア・アラブ人権機構代表で国民民主変革諸勢力国民調整委員会在外局長のマンナーア氏は、『ハヤート』(11月14日付)の取材に答え、シリア国民評議会、国民調整委員会、そして無所属の活動家らが反体制勢力の会合に出席し「次期段階におけるシリアの声を代表するための共通の枠組み」を構築すると述べた。
またシリア国民評議会を国際社会で唯一承認しているリビアから国民調整委員会が謝罪を受けたことを明らかにした。
シリア国民評議会と国民調整委員会の意見の相違に関して、マンナーア氏は「シリア国民評議会の結成のありようは、民主的ではなかった。シリアのロードマップを表明するための民主的な観点以上に、個人的、地域的、国際的な観点を考慮して発足された」と述べ、そのありようを批判した。
また「政権打倒を云々するだけでなく、計画を明示しなければならない。国家の形態やその性質を明示せねばならない。我々は外国の干渉に反対している。しかし評議会には、少なからぬメンバーがそれを体制を打倒する方法だと考えている」と述べ、対立点が外国の干渉の是非にあることを示唆した。
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オーストリアのウィーンで在外シリア人連盟の主催で、シリア国民評議会のメンバーなど80人が集まった。
会合では、在オーストリア・シリア人代表のアーミル・ハティーブ氏が、シリア国民評議会メンバー3人をカイロでの反体制勢力の会合に出席させると発表した。
3人とはアブドゥルバースィト・スィーダー、マフムード・カイラーニー、バドル・ジャームース。
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パリ在住の反体制活動家は、リフアト・アサド前副大統領がプルマン・ホテルで来世紀機構主催のもとに開かれた記者会見に抗議すべくピケを張った。
『クッルナー・シュラカー』(11月13日付)によると、リフアト・アサド前副大統領は、「クルド人分離主義者や治安機関に近い傭兵と国民連合評議会」という「反体制勢力」の発足を宣言するために記者会見を行った、という。
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国内で反体制活動を行うシリア国家建設潮流(ルワイユ・フサイン代表)は声明を出し、アラブ連盟の決議を非難した。
同声明で、シリア国家建設潮流は「シリア政府が受理した連盟イニシアチブを成功させるため、真剣に活動」するよう訴えた。
また、3日以内の連盟本部(カイロ)での反体制勢力による会合を呼びかけた決議の項目に関して、「アラブ連盟の保護のもとシリア領内ですべての反体制勢力が会合を開く必要がある。なぜなら、シリアの政治闘争は、広く知られた一部の反体制勢力に限られておらず、連盟と連絡をとっている組織の枠外にも多くの政治運動や活動家がいるからだ」と述べた。
そのうえで「一部の反体制勢力をシリア国民の合法的・唯一の代表などと承認すべきでない」と警鐘を鳴らした。
http://all4syria.info/web/archives/36423
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同じくシリア国内で反体制活動を行うシリア共産主義者統一国民委員会(解放改革国民戦線参加組織)のカドリー・ジャミール委員長は、アラブ連盟の決議に関して、「我々の国の主権に抵触しており、拒否されるべきもので、現下の危機を国際化し、植民地主義的干渉をもたらし、米・シオニズムの計略のもとにシリアの領土と国民を粉砕する」と強く非難した。
http://all4syria.info/web/archives/36517
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サラーム・カワーキビー氏は、「包括的な愛国観、親の民主的行動に依拠し、献身的な友人を励したいとの念により」発足以来関与してきたシリア国民建設潮流を離党すると発表した。
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またイヤード・シュルバジー氏もシリア国家建設潮流からの離反を発表した。
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ゴラン高原のヌアイム部族が声明を出し、アラブ連盟の決議を支持するとともに、シリア国民評議会を「自由シリア国民の代表」と讃えた。
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リフアト・アサド前副大統領はAFPおよび『ル・モンド』との共同会見で、アサド大統領退任に協力するための条件をアラブ世界および国際社会に対して明らかにした。
それによると、リフアト・アサド前大統領は以下のように述べたという。
「解決策は、アラブ諸国がバッシャール・アサドに安全を保障したうえで辞任させ、財政支援(力)があり、バッシャールの集団が続くことを保証できる人物に権力を移譲することがその秘訣であり、そのような人物は、彼自身の家族…つまり、私か私のような人物でなければならない」。
また「(シリアの現)体制は退任の用意がある。しかし体制はその構成員だけの(身の安全の)保証だけでなく、退任後に少数派のアラウィー派と多数派のスンナ派の間で内戦が発生しないことの保証も望んでいる」と述べた。
さらに反体制勢力内部、アラブ連盟内部の意見の対立に関しては、西側諸国、ロシア、イランが参加したかたちで「政府との交渉能力を持った…国際的・アラブ的な同盟を作る必要があり…、体制に退任のための真の保証を作り出さねばならない」と述べた。
アサド大統領の指導力に関しては、アサド大統領のみが国を運営でき、陰の長がいるとの一部見方を否定した。
軍や治安機関の中枢に多いアラウィー派に関しては、「アラウィー派の士気は停滞しており、彼らはバッシャールへの信頼を失い、危機脱却能力を持っていないと考えている。しかし、(政権からの)報復への恐怖が彼らに沈黙を強いている」の述べた。
アラブ連盟の決議については、その能力に疑義を停止、国連などが事態収拾を主導すべきだとの立場を明示した。
アサド家の面々が権力の在にとどまることを「シリア革命」が制限するか、との問いに対して、「制限するだろう。だがバッシャールはカッザーフィー、ベンアリーとは違う。だから国際社会は彼とその家族に安住の地を与えねばならず、紛争が長期化すれば、内戦になる恐れがある」と答えた。
リフアト・アサド前大統領は会見の最後に、自身を代表とする新たな「反体制」組織、民主国民評議会の発足を宣言した。同組織は、自身が指導する統一民族民主主義連合のメンバーなどからなる。
アサド政権の動き
SANA(11月13日付)は、早朝から、ダマスカス県、アレッポ市、タルトゥース市、ラタキア市、ハサカ市、ダルアー市、ラッカ市、ダイル・ザウル市、ヒムス市、ハマー市、イドリブ市など各地で市民数百万人が、シリアの加盟資格停止などを定めたアラブ連盟の決議拒否を表明するため大規模なデモを行ったと報じた。
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SANA(11月13日付)は、シリア高官筋の話として、シリアがアラブ連盟緊急首脳会談の開催を求めた、と報じた。
同高官はまた、アラブ連盟外相会議の決議に基づきシリアの加盟資格停止が発効する「16日までにアラブ連盟閣僚委員会の訪問を歓迎」するとともに「相応しいと判断し得る監視団、民間・軍事監視団の随行」を認めるとの立場を示したという。
ユースフ・アフマド・アラブ連盟シリア代表はカイロでの記者会見で、緊急首脳会談を求めると述べたが、連盟筋によると「そうした要請はいまだ提出されていない」という。
この点に関して、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は訪問中のトリポリ(リビア)で、「シリア国民保護のためのしくみを準備することが現在、連盟に求められている」と述べ、詳細なコメントを控えた。
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シリア・オリンピック委員会はカタールのドーハで12月に予定されている大会への参加を辞退することを決定した。シリア・アラブ・テレビ(11月13日付)が報じた。
反体制運動掃討
ハマー県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で治安部隊がアサド政権支持のデモに対抗して敢行された反体制デモに発砲し、6人を殺害した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、複数の学生がタカーヤー通りでのアサド政権支持デモのなかで反体制デモを行おうとして、治安部隊に排除され、その際、15歳の学生が殺害された。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、治安部隊の発砲で市民1人が殺害された。
またイブリーン地方アブディーター村で軍・治安部隊と離反兵の間で激しい戦闘があった。この戦闘の直前、バーラ村にある軍・治安部隊の検問所で時限爆弾が爆発したという。
さらにマアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村でアラブ連盟の決議を支持し、政権打倒を求めるデモが発生した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市カイロ通りで治安部隊の発砲により重傷を負っていた市民1人が死亡した。またバイヤーダ地区では2人、ジュッブ・ジャンダリー地区で1人が殺害された。
また市内のバアス大学土木工学部構内でRPB弾が発射され、複数の学生が負傷した。
クサイル市では、離反兵と思われる武装集団が治安部隊を襲撃し、治安部隊兵士2人を殺害した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市やヤードゥーダ村で治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行い、複数が逮捕され、複数が負傷した。
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アレッポ県では、シリア人権擁護連盟によると、アレッポ市教育局次長事務局のワッダーフ・スバーヒー氏を逮捕し、当局は反体制活動家で同氏の兄弟アブドゥルガニー・スバーヒー氏が投降しない場合、その家族を殺害すると脅迫した。
レバノンの動き
ベイルート県ハムラー地区で在レバノン・シリア人がアラブ連盟の決議に抗議するデモを行った。
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ミシェル・スライマーン大統領は北部県トリポリ市を訪問し、自身がいかなるアラブ諸国の孤立を拒否するが、アラブ連盟の決議に反対していないと述べた。
またアサド大統領に対してアラブ連盟のイニシアチブを実行するよう求めたと述べた。
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ナビーフ・ビッリー国民議会議長は、サウジアラビアのアブドゥッラー国王に対して電報で、「アッラーを除いた場合、あなた以外にシリア人どうし、そしてアラブ人どうしの和解を後押しできる人物を見つけることはできない」とのメッセージを送り、アサド政権への強硬な姿勢を改めるよう暗に求めた。
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3月14日勢力は、アラブ連盟の決議を受け、ミシェル・フーリー在ダマスカス・レバノン大使を召還するよう求めた。
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『アンバー』(11月13日付)は、米国がレバノンに対して、シリア人避難民の追放など「消極的な結果をもたらす」ような行動をとらないよう警告を発したと報じた。
アラブ諸国によるアラブ連盟決議への消極的姿勢
アルジェリアのムラード・マドリスィー外務大臣とエジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣と会談した。
会談後の記者会見で、マドリスィー外務大臣は、アラブ連盟の決議に関して、「シリアのアラブ連盟資格停止が一時的なものであり、可能な限り早期に解除し得る」と述べるとともに、アルジェリアが在ダマスカス大使を召還しないことを明らかにした。
またマドリスィー外務大臣は、「もし原案のまま決議案が提出されていたら、我々は撤退していた」と述べ、大使召還などをめぐる決議案の文言にアルジェリアが強く反対し、連盟閣僚委員会からの撤退さえ検討していたことを明らかにした。
一方、アムル外務大臣は、「アラブ連盟のイニシアチブが依然として生きており、シリアの問題を解決基礎であり続けている」と述べ、エジプトがアルジェリアとともに、外国の介入を回避することを最優先の目的としていたことを明らかにした。
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イラク政府はアラブ連盟の決議を「受け入れられないこと」と非難した。
アリー・ダッバーグ首相報道官は、決議が「受け入れられないかたちで決せられた。こうしたことはシリアよりも激しい危機に見舞われている他の国では採用されたことがない」と述べたうえで、「我々は反体制勢力との対話、シリア国民の自由を支持している…。しかしこのような厳しい方法は問題を国際化するだけだ」と非難した。
イラクの法治国家連合はアラブ連盟の決議を「外国の計略を実行する」ためのものと非難した一方、イラーキーヤ、クルディスタン同盟は、決議を支持し、イラクが棄権したことを批判した。
諸外国の動き
サウジアラビアは、ダマスカスのサウジアラビア大使館を市民が包囲し、投石などを行ったことに関して、治安当局がデモ排除など充分な措置をとらなかったと非難した。
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フランス外務省もまた、ダマスカスのフランス大使館、アレッポ、ラタキアの領事館を市民が襲撃したことを受け、ラミヤー・シャックール在パリ・シリア大使を呼び出した。
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トルコ外務省は在アンカラ・シリア大使を呼び出し、ダマスカスのトルコ大使館、アレッポ、ラタキアの領事館を市民が襲撃したことに関して、厳重抗議した。
また外務省はアラブ連盟の決議に関して声明を出し、国際社会が「声を一つにして」シリア情勢に対応するよう呼びかけた。また、ダマスカス県のトルコ大使館がアサド政権を支持する市民の包囲・襲撃を受けたことを受け、シリア在住のトルコ人に対して、不要不急の渡航・滞在を控えるよう勧告を発し、大使館職員の家族らを帰国させた。
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国連の潘基文事務総長はアラブ連盟の決議に関して「協力で勇敢」な措置と評価した。
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カイロ、アンマンのシリア大使館周辺では、アラブ連盟の決議を支持するデモが行われ、数百人が参加した。
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ヨルダン・ムスリム同胞団のイスラーム行動戦線は、ヨルダン政府に駐シリア・ヨルダン大使の召還を呼びかけた。
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『リヤード』(11月13日付)は、アラブ連盟の決議に伴うシリアとサウジアラビアの関係悪化に伴い、シリア経由の物流が滞る可能性があると指摘。
ただし、同報道によると、現在のところシリアからの物流は通常通りで、約600輌の大型貨物車輌が30,000トンの製品を毎日サウジに搬入している、という。
AFP, November 13, 2011、Akhbar al-Sharq, November 13, 2011, November 14, 2011、al-Anba’, November 13, 2011、al-Hayat, November 14, 2011、Kull-na Shuraka’, November 13, 2011, November 15, 2011、Naharnet.com, November 13, 2011、Reuters, November 13, 2011、al-Riyad, November 13, 2011、SANA, November 13, 2011などをもとに作成。
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