シリア国民評議会と国民民主変革諸勢力国民調整委員会が反体制勢力の統一大会の開催などに関して原則合意、アラブ連盟事務総長が訪問先のバグダードでイラク政府に対しシリア制裁をめぐる姿勢変更を求める(2011年12月8日)

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反体制(武装)闘争

SANA(12月8日付)は、ヒムス県のヒムス精油所北西に位置するスルターニーヤ地方で、シリア石油輸送社が所有する石油パイプラインが犯罪破壊集団に破壊されたと報じた。

しかし地元調整諸委員会は、軍の砲撃によるものと非難した。

SANA, December 8, 2011

SANA, December 8, 2011

ヒムス石油精製所は、政府の発表によると380,000バレル/日の石油を生産し、国内の需要の多くをまなかっている。

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ヒムス県では、SANA(12月8日付)によると、タッルカラフ地方で当局が武装テロ集団が隠していた大量のPRG弾や中距離迫撃砲などを押収した。

またサダド地方で、税関当局が武装テロ集団と交戦し、テロ集団メンバー複数と税関当局職員1人が負傷した。

一方、シリア人権監視団、シリア革命総合委員会などによると、ヒムス市で少なくとも9人が治安部隊の攻撃で殺害され、フーラでは8人が負傷した。

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イドリブ県では、サラーキブ市の放送局近くで離反兵と軍・治安部隊が交戦し、軍の兵員輸送車輌が爆破された映像が公開された。

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ダルアー県では、複数の活動家によると、離反兵を逮捕するためタイバ町に治安部隊が突入した。

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ダマスカス郊外県では、複数の活動家によると、ドゥーマー市、マダーヤー町で離反兵と治安部隊が交戦した。

アサド政権の動き

SANA, December 8, 2011

SANA, December 8, 2011

アサド大統領はダマスカスを訪問したレバノン・ドゥルース派聖職者の使節団(レバノン民主党のタラール・アルスラーン党首を団長とする約70人)と会談した。

SANA(12月8日付)によると、使節団は、シリアと地域を分断しようとする陰謀に対抗するシリアの政府、国民を支持するとの立場を表明した。

これに対して、アサド大統領は「シリアは国民のおかげで、そしてまた同胞である友好的な人々の支援ゆえに協力である…。シリアは現状を克服し、いかなる圧力のもとでもその姿勢、原則、そして主権を放棄しない」と述べたという。

使節団はその後、ドゥルーズ派が多く住むスワイダー県を訪問した。

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『クッルナー・シュラカー』(12月8日付)は、12月12日投票予定の統一地方選挙の投票会場となるダマスカス県内の学校に、投票用紙が詰め込まれた投票箱が運ばれたと報じた。

反体制勢力の動き

AKI(12月8日付)は、信頼できる複数の消息筋の話として、カイロで続けられている在外の反体制組織であるシリア国民評議会と、シリア国内で活動を行う国民民主変革諸勢力国民調整委員会の間で行われている準備会合で、アラブ連盟主催による反体制勢力の統一大会の開催などに関して原則合意に達したと報じた。

同合意によると、統一大会には100人から150人が参加し、うち20%の参加者は両組織にいずれにも属さない無所属活動家とし、残り80%は両組織で等分するという。

また、現体制の完全な打倒、外国の軍事介入の拒否、国際法に基づく民間人の保護、すべての政治犯釈放、平和的デモ継続に向けた行動といった一般原則に関しても合意した。

さらに多元的民主制を確立するための体制転換期をめぐっても合意した、という。

Kull-na Shuraka', December 8, 2011

Kull-na Shuraka’, December 8, 2011

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シリア国内で活動する反体制勢力の重鎮リヤード・トゥルク氏(シリア人民民主党前書記長)は声明を出し、イランとヒズブッラーに対して、アサド政権を支持しないよう呼びかけた。

同声明でトゥルク氏は、「ヒズブッラーの戦略的な的はイスラエルであって、アラブ諸国、とりわけシリアの革命ではないはずだ…。この党がシリア革命の行方にいかなるかたちで介入しても、シリアの革命、党自体、そして同党をシリアと結びつけるであろう将来にまったく資さない…。私は、この党の指導部に対して、専制的で崩壊が避けられない体制を支援するのでなく、ハマースの指導部のように沈黙していて欲しいと考えていた」と述べた。

一方、イランに関しては「イラン政府には、シリア国民の正当な要求を見て見ぬふりをし、シリアの独裁体制や国民に対する犯罪行為を無条件で支持している者がいる」。

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ジャズィーラの女性キャスターのルーラー・イブラーヒーム氏は、フェイスブックの自らのページで以下のようにつづりシリア国民評議会など反体制勢力のメディアへの対応を非難した。

「シリア国民評議会や反体制勢力のメンバーの多くが、早朝にメディアと話すことを拒んでいます。電話でもです。今日も、その一人が我々の同僚に「真夜中に電話してくるな」と怒鳴りました。6時45分だったのに。あなたたちにはまぶたを閉じて寝る権利はあります。あなたたちがくつろぐことが大事だと思っています…。不愉快な思いをさせてすみません」。

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Kull-na Shuraka', December 8, 2011

Kull-na Shuraka’, December 8, 2011

Kull-na Shuraka', December 8, 2011

Kull-na Shuraka’, December 8, 2011

シリア・クルド青年調整連合は声明を出し、アサド政権が国籍を取得したクルド人に徴兵義務にただちに服すよう求めていることを明らかにし、すでに徴兵年齢を越えた国籍回復者の徴兵免除と、国籍回復者への補償を求めた。

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『インディペンデント』(12月8日付)は、トルコ領内の対シリア国境地域を取材し、自由シリア軍がイドリブ県内の対トルコ国境沿いに位置するアイン・バイダー村を拠点に反体制武装闘争を行っていると報じた。

同報道によると、自由シリア軍のメンバーのなかには、離反兵だけでなく、反体制デモを行ってきた民間人も参加している、という。

また「トルコで多くの人々がアスアド(自由シリア軍司令官)の召集を待っている」という。

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『シャルク・アウサト』(12月8日付)は、自由シリア学生連盟の話として、アレッポ大学での学生の反体制デモで150人以上の学生が逮捕されたと報じた。

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俳優のムハンマド・アール・ラシー氏が、反体制デモに参加したとの容疑で、ダマスカス県内の自宅で逮捕された。

諸外国の動き

アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は訪問先のバクダードで会見し、アラブ連盟監視団のシリアへの派遣に関する議定書をめぐる問題に関して、「イラク政府は…我々はシリア政府と接触し、問題を終わらせると述べた」と述べ、イラク政府が問題解決において「重みと能力」を持っていることを強調した。

また「ボールは今、シリアのコートにある…。もし経済制裁を停止して欲しいなら、署名せねばならない…。彼らはいつでも来て署名できる」と付言した。

イラク政府筋によると、アラビー事務総長はヌーリー・マーリキー首相との会談で、対シリア経済制裁に関するイラクの姿勢変更を求めるための提案を示した。そのなかには、1990年のクウェート侵攻以降の対イラク国連制裁決議など、イラクと一部アラブ諸国の関係改善を疎外する問題の撤廃などが含まれていたという。

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一方、イラクのホシャル・ゼバリ外務大臣は、イラクがアラブ連盟の大多数の国々の決定に反対しないとしつつ、イラクの立場を理解して欲しい、と述べた。

また対シリア制裁をめぐる姿勢が、マーリキー内閣のイラン寄りの姿勢によるものだとの見方に関しては、これを否定し「これは、自由で、独立した、主権に基づく決定で、我々の国益に基づいている」と述べた。

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アラビーヤ(12月8日付)は、アラブ監視団のシリアへの派遣にかかるアラブ連盟議定書の署名に関して、ロシアがアサド政権に圧力をかけ、条件付きでの署名を求めたと報じた。

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フランスのベルナール・ヴァレロ外務省報道官は記者会見で、アサド大統領のABCでのインタビューに関して、「正義を逸脱している」と述べ、弾圧・殺戮の責任はないとした大統領の発言を厳しく批判した。

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エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣は、シリア情勢に関して、軍事的解決はないとの見方を示した。

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国連安保理で、シリア情勢に関する会合が開かれ、フランスがナバネセム・ピレイ人権高等弁務官を招聘し、シリアにおける人道に対する犯罪に関して意見を聴取することを提案した。

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ジェフリー・フェルトマン米国務次官補は訪問中のレバノンでマロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教と会談し、「シリア国民に対するシリア政府の蛮行を終わらせるべく国際社会と地域の努力を支援」するよう求めた。

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サウジアラビアに「避難」中のレバノンのサアド・ハリーリー前首相は、ツイッターでアサド政権に関して「余命は限られていると思う…。自発的、ないしは力ずくかでシリアを去らざるを得ない」と綴った。

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イスラーム教ウラマー世界連盟は、シリア国民評議会への支持を改めて表明した。

AFP, December 8, 2011、Akhbar al-Sharq, December 8, 2011, December 9, 2011、AKI, December 8, 2011、Alarabia.com, December 8, 2011、Facebook、al-Hayat, December 9, 2011、The Independent, December 8, 2011、Kull-na Shurakā’, December 8, 2011、Naharnet.com, December
8, 2011、Reuters, December 8, 2011、SANA, December 8, 2011、al-Sharq al-Awsaṭ, December 8, 2011などをもとに作成。

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