2011年12月7日のシリア情勢

シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記

2011年12月7日のシリア情勢

アサド政権の動き

米ABCがバッシャル・アサド大統領との単独インタビューを報じた。

アサド大統領の主な発言は以下の通り。

SANA, December 7, 2011

SANA, December 7, 2011

「率直に言うと…、あなた(アサド大統領にインタビューしたバーバラ・ウォルター氏)はここ(シリア)に住んでいない。どのようにこれらのこと(子供を含む民間人の弾圧や拷問)を知ったのか?ここに来て実際に見てみなければならない…。それ(子供の拷問)は正しいニュースではない…。私は(拷問された子供の)父親と会った。子供の父親も子供もメディアで言われているように拷問されたことはなかったと言っている」。

「国連が信頼できる機関だと誰が言ったのか?」(国連人権理事会がシリアでの死者数が4,000人を越え、人道に対する罪が行われているとの決議を採択したことに関して)

「殺害された人の多くは政府を支持していた、その逆ではない…。(治安機関などによる)蛮行のすべては個人によるものでもなく、特定機関によるものでもないということを理解しなければならない…。弾圧政策と一部の高官による過ちとの間には違いがある。大きな違いがあるのです」。

「我々は国民を殺していない。国民を殺す政府などない。もし政府が狂った人間に指導されていれば別だが」。

「我々は自分たちが民主的国家だなどと言ったことはない…。我々は計画に向かって進んでいる…。完全な民主制になるには時間と成熟が必要だ」。

「国民を守るために最善を尽くしてきた…。最善を尽くしているときに罪悪感など感じることはできない。失われた命に対して済まないとは感じる。しかし人を殺していないのに有罪だと感じるだろうか。つまり有罪に関わる問題ではない」。

http://abcnews.go.com/International/defiant-syrian-president-bashar-al-assad-denies-ordering/story?id=15098612#.Tt9a8XK3Nv8
http://abcnews.go.com/International/bashar-al-assad-interview-defiant-syrian-president-denies/story?id=15098612&page=2

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、アサド大統領のインタビューでの発言に冠して、「合衆国をはじめとする多くの国々はシリアでの悲惨な暴力とアサド政権が犯したことを非難することで一致しており、何が起きているか、そして誰がそれに責任を負っているかをよく知っている」と非難した。

カーニー報道官はまた「インタビューを観た人のなかにアサド氏の答えに信頼に値するものがあったと考える者がいるとは思えない」と付言した。

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これに対してシリアのジハード・マクディスィー外務省報道官はただちに記者会見を開き、「シリアには憲法に基づき国の治安と安全を守る任務に就く部隊がある。すべての者が責任のもとに行動しており…、これは司法のしくみに従っている」と述べ反論した。

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一方、シリア国民評議会渉外担当責任者で在米のラドワーン・ズィヤーダ氏は、アサド大統領が国連人権高等弁務官事務所が発表した犠牲者数に疑義を呈したことに関して、「自身が犯した刑事犯罪への責任を否定する前兆」と非難した。

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SANA, December 7, 2011

SANA, December 7, 2011

SANA, December 7, 2011

SANA, December 7, 2011

アサド大統領は法律第23号を発止、一部食料品、サービスに対する消費支出税の税率引き下げを決定した。

対象となったのは、ホテル、食堂などでのサービス料、植物油、動物油など。

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『クッルナー・シュラカー』(12月7日付)は、ダマスカス県の複数の情報筋の話として、県職員幹部に対して、統一地方選挙でバアス党、さらにはアサド政権支持者を支援するよう口頭で要請があったと報じた。

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SANA(12月7日付)は、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市で、アラブ連盟の経済制裁に反対する集会が実施されたと報じた。

SANA, December 7, 2011

SANA, December 7, 2011

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サーイル・クドスィー人民議会議員はフェイスブックで12月1日の人民議会の会合で現政権と反体制勢力からなる挙国一致内閣の発足を提案した、と綴った

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AKI(12月7日付)は、アラブ連盟の対シリア経済制裁やEUの追加制裁により、シリア・ポンドが闇レートで1ドル60ポンドまで下落した、と報じた。

反体制勢力の動き

「共に」運動はダマスカスで第1回大会を開催した。

国民民主変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役、ダマスカス国民民主宣言のリヤード・サイフ前人民議会議員、タイイブ・ティーズィーニー氏、ムハンマド・ムリッス氏、マイ・スカーフ女史が来賓として招かれた。

大会は来賓による講演のち、国内の平和やマイノリティの役割を保障するための各委員会、他の政治組織との調整を行うための各委員会を設置、それそれが部会を開き、審議を行った。

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AKI(12月7日付)は、アレッポのカルディア派司教区のアントワーン・ウードゥー区長がイタリア司教会議のメディアを通じて、「シリアはアサドとともにあろうがなかろうが、自らの路を進み続けることができるだろう…。国民はリビアで起きたような暴力を回避する路を選択せねばならない」と述べたと報じた。

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『クッルナー・シュラカー』(12月7日付)は、ハサカ県カーミシュリー市で、取材した市民に「灯油危機など存在しない」と言わせようとしたドゥンヤー・チャンネルの特派員が市民によって追放されたと報じた。

これ以前にも、反体制デモを取材しようとした同チャンネルのカメラマンがデモ参加者の若者に殴打され、追放されていたという。

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シリア国民評議会渉外担当責任者で在米のラドワーン・ズィヤーダ氏は、アサド大統領が国連人権高等弁務官事務所が発表した犠牲者数に疑義を呈したことに関して、「自身が犯した刑事犯罪への責任を否定する前兆」と非難した。

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AFP(12月7日付)は、トルコに避難しているシリア人の多くが、トルコ当局の一部が避難民をシリアに引き渡していることに恐怖を感じていると報じた。

反体制(武装)闘争

イドリブ県では、複数の目撃者によると、サラーキブ市の対トルコ国境付近で離反兵と軍・治安部隊が交戦した。シリア人権監視団によると、同地での軍・治安部隊の逮捕・追跡活動により、少なくとも3人の活動家が逮捕された。

またシリア人権監視団によると、ザーウィヤ山に近いラーミー村に軍・治安部隊の車輌約50輛が突入した。これにより、16歳の少年1人が殺害され、20人が負傷した、という。

このほか、トルコに向かう国際幹線道路での軍と離反兵との戦闘での負傷者複数名がハーン・シャイフーン市で死亡した。

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ヒムス県では、複数の目撃者・活動家によると、過去2日間にわたる軍・治安部隊の大規模な砲撃により、多数の住民が避難した。

シリア人権監視団によると、市内の離反兵が兵員輸送車輌を破壊した。離反兵は民間人によってかくまわれ、市内で活動しているという。

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ハマー県では、複数の目撃者・活動家によると、ハマー市のスィバーヒー交差点に軍・治安部隊の戦車・装甲車が多数展開、また市内各所で軍・治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。

ハマー市郊外で離反兵と軍・治安部隊が交戦し、離反兵3人が殺害された。またハマー市のフーラ地区で女性1人が射殺された。

一方、SANA(12月8日付)は、シリア軍がハマー県内でアレッポ街道を寸断しようとしていた武装テロ集団と交戦し、「テロリスト」1人を殺害したと報じた。

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アレッポ県では、複数の活動家によると、治安部隊がアレッポ大学の工学部に突入し、反体制デモを行った学生多数を逮捕した。

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ダマスカス郊外県では、ハラスター市、カフルバトナー町で治安部隊が大規模な逮捕活動を行った。

諸外国の動き

トルコの通商大臣はNTVで「シリアからの商品に対して30%の関税を科すだろう」と述べ、追加制裁の発動を示唆した。

またトルコ政府は、エジプト製品の海路による直接輸入と、イラク製品に陸路よる直接輸入を開始したと発表した。

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ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外務大臣は訪問中のリトアニアで記者団に対して、アラブ連盟によるシリア危機解決に向けたイニシアチブは「シリアをめぐるアラブ連盟の計画に関して、忍耐と責任を示す必要がある」と述べた。

また「我々は連盟のイニシアチブを支持するが…、このイニシアチブが警告になることにはきっぱりと反対する」と述べ、それが外国の干渉の口実になることへの警戒感を示した。

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イラクのアブドゥルハリーム・ズハイリー首相顧問(政務担当)は、シリア・イラク関係に関して「イラクはその運命をアサド大統領と共にはしない。すべての可能性に対処し、そのなかには体制崩壊も考慮されている。しかしこの可能性の影響を恐れている」と述べた。

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レバノンのマロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教はのマロン派司教会議後に「地域の緊張や分断をレバノンにもたらすことでは、アラブの大義との結束を示すことにはならない」と述べ、シリアの混乱がレバノンに波及することへの警戒感を示した。

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『ラアユ』(12月7日付)は、米高官が、ロバート・フォード米シリア大使のシリア帰国に関して、「アサド体制はいつ崩壊する」か分からないなか、「ポスト・アサド段階におけてシリア人の国家建設を支援するためだ」と述べたと報じた。

ABC, December 7, 2011、AFP, December 7, 2011、Akhbār al-Sharq, December 7, 2011、AKI, December 7, 2011、al-Ḥayāt, December 8, 2011, December 9, 2011、Kull-nā Shurakā’, December 7, 2011、Naharnet.com, December 7, 2011、al-Ra’y, December 7, 2011、Reuters, December 7, 2011、SANA, December 7, 2011などをもとに作成。

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