西側の制裁によってシリアの石油生産量が例年の30%強にまで落ち込むなか、シリア国民評議会はヒムス市各地区が「虐殺と人道に対する罪の真の脅威」に曝されているとの声明を発表(2011年12月25日)

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反体制(武装)運動をめぐる動き

複数の活動家、目撃者によると、ヒムス県ヒムス市、タルビーサ市、ラスタン市において、軍・治安部隊が攻勢を強め、離反兵による抵抗運動の掃討をめざした。

地元調整諸委員会によると、ヒムス市では子供3人を含む8人が殺害された。

またシリア革命総合委員会によると、市内各地区への「砲撃」で、36人が死傷した。

シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県ジャルズィー村で治安部隊の弾圧で市民4人が負傷、27人が逮捕された。

シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町で25日に死亡した民間人の葬儀の参列者に武装部隊が発砲し、5人が負傷した。

シリア革命総合委員会によると、アレッポ県アレッポ市のアル-バーブ地区で治安部隊が大規模な逮捕が行われた。

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SANA(12月25日付)によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ダルアー県で軍・治安部隊兵士14人が任務遂行中に武装テロ集団に殺害された。

またハラスター市で当局が武装テロ集団を追跡し、多数を逮捕、大量の武器を押収した。

ヒムス県でもタッルドゥー地方で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、多数を逮捕、大量の武器を押収した。

一方、ヒムス市では武装テロ集団がヒムス国立病院の救急車を襲撃し、運転手を殺害した。

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バアス党シリア地域指導部は、武装テロ集団によって暗殺されたガーズィー・ズガイブ中央委員会メンバー(前ヒムス市局長)に哀悼の意を表する声明を発表した。

アサド政権の動き

SANA, December 25, 2011

SANA, December 25, 2011

ロイター通信(12月25日付)は、カイロでのアラブ石油大臣会合に出席したシリアのスィフヤーン・アラーウ石油大臣は記者団に対して、シリアの石油生産量が西側の制裁によって30~35%に落ち込み、260,000バレル/日しか生産していないと述べたと報じた。

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「アフバール・シャルク」(12月25日付)は、シリア国内の複数の火力発電所で、イラクからの陸路での燃料の供給が滞り、1日6時間の稼働停止を強いられている、と報じた。

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SANA(12月25日付)は、白い手キャンペーン、シリアのためにキャンペーンなど市民団体が、ダマスカスとエルサレムでの犠牲者を追悼するための集会をダマスカス県バーブ・トゥーマーで開催したと報じた。

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進歩国民戦線中央指導部が声明を出し、ダマスカスでの同時自爆テロに関して、「可能なあらゆる手段を通じて事態悪化に対抗」するよう呼びかけた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、ヒムス市各地区を軍・治安部隊数千人が包囲、脅迫、また数日前から激しい「砲撃」を加え、「虐殺と人道に対する罪の真の脅威」に曝されていると発表した。

またアラブ連盟監視団(26日に100人の団員がダマスカスに入る予定)に対して、ヒムス市にただちに向かい、包囲されている地区において任務を行うよう呼びかけた。

一方、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン理事長は、ヒムス市での反体制運動に身を投じることなく、安全なフランスからクリスマスに合わせてビデオ声明を出し、シリア人が「恐怖の壁を打ち破った。今日、ダマスカスで革命が起き、アレッポで蜂起が起きるだろう。我々はこの二つの都市にさらに多くを期待する」と述べた。

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シリア人権擁護連盟のアブドゥルカリーム・リーハーウィー所長は声明を出し、アサド政権がアラブ連盟監視団の活動を惑わすため、使節団が訪問を予定していた地区や街路の名称を変更し、逮捕者を監視団が訪問できないような場所に移送している、と非難した。

オガレット・ニュース・ネットワークによると、当局はタバンナフ村入口に「ジャースィム市」という標識を設置し、使節団が弾圧の激しかった同村に入ったと錯覚させようとしている、と報じた。

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シリア国民協議会のアブドゥルフサイン・ジャービリー氏は声明を出し、シリア危機解決のためのイラク・イニシアチブについて話合うために予定されていた使節団の訪問が「技術的理由」で延期になった、と発表した。

『ハヤート』(12月26日付)によると、ターリク・ハーシミー副大統領への逮捕状発行、バグダードの治安悪化などが理由だという。

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シリア・クルド民主諸勢力連合事務局が声明を出し、アサド政権打倒後の移行期間においてシリア国民評議会との協力のもと、地方評議会を発足し「クルド人地区」の安全保障を担当するとの意思を示した。

レバノンの動き

『シャクル・アウサト』(12月25日付)は、マルワーン・シルビル大臣が、ベカーア県バアルベック郡アルサールからアル=カーイダのメンバーがシリア領内に潜入したとのことをファーイズ・グスン国防大臣から確認していたと報じた。

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ムスタクバル・ニュース(テレビ)(12月25日付)は、シリア空軍のヘリコプター数機がベカーア県バアルベック郡アルサール地方上級を旋回し、シリアの空軍基地に帰還した、と報じた。

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『ムスタクバル』(12月25日付)は、レバノンのアドナーン・マンスール外務大臣は、レバノンがアラブ連盟監視団への参加を見合わせたと発表したと報じた。

同報道によると、この決定はミシェル・スライマーン大統領の決定によるものだという。

諸外国の動き

ロシアのRIAノーヴォスチ通信(12月25日付)は、ロシアのタト石油が声明を出し、ダイル・ザウル県ブーカマール市での採掘を停止すると発表したと報じた。

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ローマ法皇ベネディクト16世はクリスマスを記念して信者の前で演説し、シリアにおける暴力行為の停止を呼びかけた。

AFP, December 25, 2011、Akhbar al-Sharq, December 25, 2011, December 29, 2011、al-Hayat, December 26, 2011、Kull-na Shuraka’,December 25, 2011、al-Mustaqbal, December 25, 2011、Naharnet.com, December 25, 2011、Reuters, December 25, 2011、SANA, December 25, 2011、al-Sharq al-Awsat, December 25, 2011などをもとに作成。

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