英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ロシア・トルコ首脳会談で合意された停戦が発効(3月5日深夜)してから66日目となる5月10日、ハマー県でシリア軍と新興のアル=カーイダ系組織からなる「信者を煽れ」作戦司令室が交戦、無人航空機(ドローン)がイドリブ県を攻撃した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、フッラース・ディーン機構と「信者を煽れ」作戦司令室に所属する武装集団が9日深夜から10日未明にかけて、ガーブ平原のマナーラ村、タンジャラ村一帯のシリア軍拠点を急襲し、タンジャラ村を制圧した。
ドゥラル・シャーミーヤ(5月10日付)によると、「信者を煽れ」作戦司令室はタンジャラ村に加えて、マナーラ村も制圧したという。
ドゥラル・シャーミーヤによると、「信者を煽れ」作戦司令室は、親政権民兵隊がマナーラ村周辺地域に進軍を試みたことを受けて反撃したという。
これに対して、シリア軍はただちに応戦し、フッラース・ディーン機構などと交戦するとともに、両村一帯、アンカーウィー村、クライディーン村、カーヒラ村を砲撃した。
この戦闘で、シリア軍兵士や親政権民兵の戦闘員32人(ドゥラル・シャーミーヤ(5月10日付)によると、中尉1人、少尉1人を含む26人死亡)、フッラース・ディーン機構側の戦闘員13人が死亡、またアンカーウィー村に対する砲撃で女性1人が死亡した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハマー県ガーブ平原での戦闘激化を受けて、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のフライフィル村、バーラ村、カンスフラ村を砲撃した。
また、無人航空機(ドローン)がハルーバ村を爆撃した。
爆撃を行ったドローンの所属は不明だが、ドゥラル・シャーミーヤ(5月10日付)は、ロシア軍の無人航空機(ドローン)がイドリブ市やイドリブ県南部上空に飛来したと伝えた。
シリア人権監視団によると、トルコ軍は、兵站物資などを積んだ車輌55輌をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に新たに進入させた。
ビンニシュ市東で、トルコの後援を受けるシャーム軍団の拠点複数カ所が正体不明の武装集団の襲撃を受け、戦闘となった。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラサーファ市近くでシリア軍の車輌が爆弾の爆発に巻き込まれ、兵士多数が死傷した。
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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を4件(イドリブ県1件、ラタキア県3件、アレッポ県0件、ハマー県0件)確認したと発表した。
トルコ側の監視チームは停戦違反を2件(場所は明示せず)確認した。
AFP, May 10, 2020、ANHA, May 10, 2020、AP, May 10, 2020、al-Durar al-Shamiya, May 10, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 10, 2020、Reuters, May 10, 2020、SANA, May 10, 2020、SOHR, May 10, 2020、UPI, May 10, 2020などをもとに作成。
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