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国内の暴力
ハマー県では、地元調整諸委員会によると、ハマー市で24日夜から、軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が行われ、反体制勢力が制圧しているとされているバーブ・カルビー地区、ハミーディーヤ地区、マルアブ地区、ジャラージマ地区などで反体制勢力と交戦した。
シリア革命総合委員会によると、この交戦で少なくとも21人が死亡した。しかし、地元調整諸委員会は各地での弾圧で19人が殺害された発表した。
『ワタン』(1月25日付)によると、「関係当局はハマーを武装集団や悪党から解放し、通常の生活を回復するべく、最終的な決定を行った」という。
一方、SANA(1月25日付)は、ハマー市郊外のカフルバフム村でキリスト教神父のバースィリユース・ナッサール氏が武装テロ集団に暗殺されたと報じた。
しかし地元調整諸委員会は武装テロ集団による犯行を否定し、治安部隊に殺害されたと主張した。
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シリア人権監視団によると、ヒムス県クサイル市でも軍・武装部隊による掃討作戦が行われ、市民2人(女性と子供)が犠牲となった。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊と離反形が激しく交戦し、軍の兵員輸送車輌3輌が破壊され、6人が負傷したという。
またイフスィム村では、軍・治安部隊がストライキを解除しようとして発砲した、という。
一方、SANA(1月25日付)は、ハーン・シャイフーン市で、赤新月社イドリブ支部長のアブドゥッラッザーク・ジュバイルー氏が武装テロ集団によって暗殺されたと報じた。
しかし地元調整諸委員会は武装テロ集団による犯行を否定し、治安部隊に殺害されたと主張した。
またSANA(1月25日付)によると、アファーミヤー遺跡で治安維持部隊が武装テロ集団の襲撃を受け、部隊兵士5人が殺害された。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊による大規模な掃討作戦が行われ、ジャラージール町で3人の市民が犠牲となった。
ヤブルード市、フーシュ・アラブ村は戦車で包囲されている、という。
アサド政権の動き
ワリード・ムアッリム外務大臣はダマスカスでアラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダービー団長と会談し、「シリア情勢の真実が明らかになることを望まない一部当事者による障害」にめげず、監視団への「完全なる協力」を行うと明言した。
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SANA(1月25日付)は、ダマスカスで宗教関係施設管理者やムフティーらイスラーム教法曹関係者が大会を開き、外国の軍事介入拒否、アラブ軍の介入拒否という姿勢を確認したと報じた。
反体制勢力の動き
シリア国内で反体制運動を行っている国民民主諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表らはダマスカスで記者会見を開き、アラブ連盟のイニシアチブに基づく問題解決への支持を表明し、国連安保理への問題の付託(いわゆる「国際化」)を拒否する姿勢を明示した。
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アラブ言論・表現の自由擁護センター代表のバヒーヤ・マールディーニーの女史は、EUによる制裁において、アサド大統領の姉のブシュラー・アサド女史が対象となっていないと指摘、追加制裁を主唱した。
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トルコで反体制活動を行うシリア変革大会(アンタリア会議)は声明を出し、アラブ連盟外相会合の決議が、大統領のすべての公職からの即時退任を明記しておらず、挙国一致内閣発足への協力を示唆してはいると一定の留保を設けつつも、連盟のイニシアチブを歓迎した。
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ダマスカス国民民主宣言は声明を出し、アラブ連盟外相会議の決議に関して、「注目すべき進展であり、内外において現体制の正統性が失われているなかで、アラブがその正統性を奪う兆候」と評価した。
しかし同評議会は、連盟監視団の撤収と国連安保理への問題の付託を求めている。
一方、レバノン国民宛に公開書簡を発表し、対レバノン関係をめぐるビジョンを明示した。
公開書簡では、レバノン・シリア最高会議が解体され、二国間合意は改訂されるべきだ、と述べ、1990年代のシリアによるレバノン実効支配時代以来の両国間関係を再検討する必要を強調し、「両国の国益を考慮した新たな合意」、「両国の適切な外交関係の樹立」を呼びかけた。
また「レバノンの問題へのシリアの治安・諜報機関の介入」を終わらせ、「武器密輸を摘発」することを約束した。
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反体制活動家のスハイル・アタースィー女史は、大統領権限の副大統領移譲などを骨子とするアラブ連盟外相会合の決議(行程表)に関して、「非常に遅れた」と遺憾の意を明らかにした。
アラブ連盟の動き
アラブ連盟監視団のアドナーン・ハディール作業部長は、GCC諸国の監視団員55人が撤収、帰国したと発表した。
同作業部長によると、GCCは監視団への資金面での支援は継続し、新規に5,000,000ドルの供与する予定。
レバノンの動き
アドナーン・マンスール外務大臣はシリアのアブドゥルカリーム・アリー大使と会談した。
会談後、アリー大使は、レバノン・シリア間の諸合意に関して、「レバノンにはこれらの合意を履行するより多くの責任がある。なぜなら、シリアに密輸される武器は時にレバノンを経由しているからだ…。シリアはレバノンがこうした活動に勤勉に対処するだろうと考えている」と述べた。
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3月14日勢力事務局は声明を出し、ナジーブ・ミーカーティー内閣がシリアと距離を置こうとしていると非難、「(シリアの)危機の影響からシリアを護るためために活動すべきだ」との意思を示した。
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NNA(1月25日付)は、進歩社会主義党党首のワリード・ジュンブラート議員がロシアへ発ったと報じた。
ロシアではセルゲイ・ラブロフ外務大臣とシリア情勢に関して意見を交わす、という。
諸外国の動き
ニューヨークでは、米仏英独、ポルトガル、サウジアラビア、クウェート、カタール、UAE、ヨルダン、トルコが対シリア国連安保理決議案作成を進めている。
複数の外交筋によると、決議案は、アラブ連盟の行程表の完全履行を求めるとともに、「シリア側が決議採択語15日を経ても行程表を履行しない場合、追加措置をとる」との文言を含むという。
一方、国連の潘基文事務総長は、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣がアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長と連名で提出した文書(会談要請とシリア問題の国連への付託要請)を安保理議長に回付した。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はモスクワでトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣と会談した。
会談後、ラブロフ外務大臣は、シリア国内での暴力停止のための提案は歓迎するとしながらも、安保理での対シリア制裁決議に反対するとの姿勢を改めて示した。
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サウジアラビアのトゥルキ・ファイサル前米大使はCNN(1月25日付)に対して、「もし彼に優先順位や道徳的評価を感じとる最低限の感覚があったなら」退任すべきだ、と述べた。
AFP, January 25, 2012、Akhbar al-Sharq, January 25, 2012、Alarabia.net, January 25, 2012、CNN, January 25, 2012、al-Hayat, January 26, 2012、Kull-na Shuraka’, January 25, 2012、Naharnet.com, January 25, 2012、NNA, January 25, 2012、Reuters, January 25, 2012、SANA, January 25, 2012、al-Watan, January 25, 2012などをもとに作成。
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