2012年1月21日のシリア情勢

アラブ連盟をめぐる動き

アラブ連盟監視団の活動状況をめぐって、西側依りの姿勢を強める在外の反体制政治連合のシリア国民評議会とアラブ連盟、そして同評議会と国内を主な活動拠点とする反体制政治連合の民主的変革諸勢力国民調整諸委員会の意見の相違が露呈した。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長以下、運営委員会の使節団がアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長らと会談し、「シリア問題の安保理への付託」を求めた。

ガルユーン事務局長は会談後に記者会見を行い、現状において監視団が客観的な報告書を準備できないと協調し、「我々は事務局長に、報告書が非客観的なら、評議会はその形式、内容を拒否するだろうと告げた」と述べた。

またバスマ・カドマーニー報道官は、会談後の声明で、「我々にとって国際社会の介入とは本件の安保理への付託であり、それ以外の何ものでもない」と述べ、評議会が監視団報告書を国連安保理に付託することを指示するとの立場を改めて明示した。

これに対してアラブ連盟のアフマド・ベンフッリー事務副長は『ハヤート』(1月22日付)に対して、最終決定は閣僚委員会が決するとしつつ、監視団の任務が1ヵ月延長される動きがあり、その場合、監視団に対する財政面、ロジ面、情報面での支援を続けると述べた。

また連盟事務局のアリー・ジャーウィーシュ局長は、多くのアラブ諸国がカタールのハマド・ブン・ハリーファ首長が提案したアラブ軍派遣構想を拒否したと述べた。

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民主的変革諸勢力国民調整諸委員会在外事務局のハイサム・マンナーア代表は、『ハヤート』(1月22日付)の電話取材に対して、「我々には三つの要求がある。監視団メンバーを現在の4倍に増員すること…、シリア国内での移動の自由の保障、事務所の増設」としたうえで、連盟監視団の任務延長を支持する姿勢を示した。

国内の暴力

SANA, January 21, 2012

SANA, January 21, 2012

シリア革命総合委員会は、イドリブ県イドリブ公立病院で遺体60体が発見されたほか、イドリブ市・アリーハー市間で逮捕者を搬送していたバスが爆破され16人が死亡するなど、21日だけで94人が殺害されたと発表した。

しかしイドリブ県でのバス爆破に関して、SANA(1月21日付)は、マストゥーマ村で武装テロ集団が逮捕者を搬送したバスを標的に時限爆弾を爆破させ、逮捕者14人を殺害、逮捕者26人と警察官6人を負傷させたと報じた。また同報道によると、武装集団は現場にかけつけた救急車輌も襲撃したという。

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シリア人権監視団によると、イドリブ県マアッラト・ヌウマーン市では、軍と離反兵が交戦し、軍の士官4人を含む9人と離反兵1人が死亡した。また同県カフルナブル市でも同様の戦闘が発生し、治安部隊兵士1人が死亡し、イフスィム村・バーラ村間でも戦闘があったという。

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SANA(1月21日付)は、20日深夜(21日未明)、レバノン領内からヒムス県タッルカラフ地方に潜入しようとした武装テロ集団メンバー3人を治安維持部隊が殺害したと報じた。

同報道によると、武装テロ集団は大量の武器をシリア領内に密輸入しようとしていたという。

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『ル・フィガロ』(1月21日付)は、ヒムス県ヒムス市で1月11日に殺害されたフランス人記者ジール・ジャクウェール氏に関して、「アラブ連盟は自由シリア軍が過ちを犯したことを知っている」と報じ、同氏の死が反体制武装集団の誤爆による可能性が高いと報じた。

この報道に対して、自由シリア軍のフランス代表部は「強く否定」しているという。

アサド政権の動き

Kull-na Shuraka’, January 21, 2012

Kull-na Shuraka’, January 21, 2012

サウジの日刊紙『シャルク』(1月21日付)は、オランダで会社を経営するシリア人ビジネスマンのフィダー・ナージフ氏の話として、アスマー・アサド大統領夫人がレバノン人の仲介業者を通じて、欧州に本社を置くバージン・オイル製造会社の株を売却しようとしていると報じた。

同報道によると、アスマー氏は同社株の30%を保有しているという。

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『クッルナー・シュラカー』(1月21日付)は、西側の制裁により、国内の生活必需品の物価が急上昇していると報じた。

同報道によると、鶏肉、羊肉、魚、ジャガイモ、バナナ、コーヒー豆、お茶、タバコ、灯油などの物価が50~100%上昇している。

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SANA(1月21日付)は、アサド大統領の恩赦に基づき釈放された逮捕者の人数が5,255人に達したと報じた。

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『サウラ』(1月21日付)は、「ワシントンの命を受けて個人的な目的のためにアラブ連盟監視団を利用しようとしている」とカタールを批判した。

反体制勢力の動き

自由シリア軍のマーヒル・ヌアイミー大佐は逃亡先のトルコで声明を出し、ダマスカス郊外県ザバダーニー市の民間人を防衛するため「奇襲攻撃」と「要撃」を行うだろうと述べ、テロを予告した。

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カイロ在住の反体制活動家らが中心となり、新たな政治組織「シリア国民民主ブロック」を結成した。

レバノンをめぐる動き

SANA, January 21, 2012

SANA, January 21, 2012

SANA(1月21日付)は、シリア海上警備隊がタルトゥース県ハラーバ村沖のシリア領海内で、密輸を試みていた小型ボートを拿捕、載っていたレバノン人3人の身柄を拘束したと報じた。

同報道は警備隊アリー・ユーヌス大佐の話として、この小型ボートがシリア海上警備隊の停戦命令を無視して逃走しようとしていたところに、別のボート5隻が現れ、発砲してきたという。

身柄拘束されたレバノン人3人のうち2人は負傷しており、うち1人がその後死亡した。

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しかし、AFP(1月21日付)は、レバノン領海でシリア側からレバノンの漁船が発砲を受けて拿捕され、乗員レバノン人3人(ファーディー・ハマド氏、ハーリド・ハマド氏、アフマド・ハマド氏)が身柄を拘束され、うち1人(アフマド氏、16歳)が死亡、1人が重態であると報じた。

MTV(1月21日付)によると、これを受けレバノン・シリア国境が閉鎖されたという。

また身柄拘束された3人が暮らす北部県アッカール郡アリーダ村のアリー・アサド・ハーリド村長は「3人を身柄拘束し、シリアへと連行する前に発砲を受けた」と述べた。

諸外国の動き

SANA(1月21日付)はトルコ国会人権委員会のメンバーが、トルコのハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)に脱走兵を教練する特別キャンプがあると述べたと報じた。

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米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官は、「アサド政権がもはや国を完全に支配しておらず、危険の結末へとシリアを追いやる以外に何もしていないことは明白だ」と述べた。

AFP, January 21, 2012、Akhbār al-Sharq, January 21, 2012、Le Figaro, January 21, 2012、al-Ḥayāt, January 22, 2012、Kull-nā Shurakā’, January 21, 2012, January 22, 2012、Naharnet.com,
January 21, 2012、Reuters, January 21, 2012、SANA, January 21, 2012、al-Sharq, January 21, 2012、al-Thawra, January 21, 2012などをもとに作成。

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