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国内の主な動き
反体制勢力、アサド政権ともに各地で大規模なデモ・集会が行われたと宣伝する一方、前者は軍・治安部隊による弾圧(少なくともが、後者は武装テロ集団による破壊活動が発生したと発表、非難した。
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ダルアー県では、反体制勢力筋によると、政治治安部のアブドゥッラフマーン・バリーディー曹長が暗殺された。
遺体には拷問の跡が見られる、という。
SANA(1月20日付)は、この事件に関して、曹長が武装テロ集団に自宅で誘拐され、殺害されたと報じた。
しかしシリア人権監視団は、軍から離反し、反体制勢力を支援しようとしたために殺害された可能性が高い、と発表した。
一方、複数の活動家によると、ダルアー市のウマリー・モスク周辺には治安部隊が重点的に展開し、金曜礼拝後のデモが阻止された。
反体制勢力筋によると、治安部隊は各地でモスク周辺を中心に厳戒態勢を強化し、金曜礼拝後の反体制デモを阻止したという。
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ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(1月21日付)によると、軍と自由シリア軍との間で停戦合意が成立したザバダーニー市で、約12,000人が同市の「解放」と軍の撤退を祝うデモを行った。
またドゥーマー市では、シリア人権監視団によると、約15,000人が金曜礼拝後にカビール・モスク広場に集まり、反体制デモを行った。
しかし地元調整諸委員会によると、ダーライヤー市内のモスク周辺には治安部隊が多数展開し、デモを阻止した。
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ヒムス県では、ヒムス市ハーリディーヤ地区で大規模なデモが行われた。
『ハヤート』(1月21日付)によると、同地区は自由シリア軍によって完全に制圧されている、という。
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ダマスカス県では、SANA(1月20日付)によると、サブウ・バフラート広場でアサド政権の改革路線支持、外国の干渉拒否を訴える大規模集会が開かれた。
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イドリブ県では、シリア革命総合委員会によると、19日に誘拐された市民6人の遺体が遺族に引き渡された。
またシリア人権監視団によると、アリーハー市などで反体制デモが行われた。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市マルジャ地区、ハイヤーン町、バザーア村で反体制デモが発生した。
一方、SANA(1月20日付)によると、アレッポ市サラーフッディーン地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士1人が負傷した。
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ハサカ県では、シリア革命総合委員会によると、ダルバースィーヤ市、アームーダー市で反体制デモが発生した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(1月20日付)によると、ダイル・ザウル市ナフル通りで、でアサド政権の改革路線支持、外国の干渉拒否を訴える大規模集会があった。
一方、シリア人権監視団によると、ブーカマール市で市民1人が殺害された。
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ラタキア県、タルトゥース県では、市内に治安部隊が多数展開し、反体制デモが阻止された。
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SANA(1月20日付)によると、ハマー県タッルドゥー市では武装テロ集団がサミーラ・ムスタファー・ラスラーン女医に暴行を加えた。
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なおシリア革命総合委員会など反体制勢力によると、ハマー県、ヒムス県、ダマスカス郊外県で軍・治安部隊と自由シリア軍との間で戦闘があり、また各地での弾圧で17人が殺害された、という。
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反体制活動家はフェイスブックなどで「革命の逮捕者の金曜日」を銘打って反体制デモを呼びかけていた。
反体制勢力の動き
ヨルダンに亡命中の反体制活動家のカマール・ルブワーニー氏はロイター通信(1月20日付)に対して、「シリア国民の大多数は宗教的に厳格だが、彼らはイスラーム教が宗教であって、党派だとは考えていない」と述べ、イスラーム主義への傾倒に警鐘をならした。
ルブワーニー氏はまた、宗派マイノリティやエスニック・マイノリティが「スンナ派のリベラリスト」と連携し、アサド政権に対するインティファーダにおけるイスラーム主義者の台頭に対抗すべきだ、と述べた。
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シリア国民評議会は声明を出し、飛行禁止空域と安全地帯設定のための国連決議を採択するよう呼びかけた。
またアラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダービー団長に対して、(22日に提出予定)の報告書で、アサド政権の弾圧を「人道に対する罪」と認定するよう求めた。
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AKI(1月20日付)は、シリア・クルド国民評議会(シリア・クルド国民大会)への参加を凍結したクルド民族主義政党が、シリア国民評議会、民主的変革諸勢力国民調整委員会などといった反体制勢力の政党連合に近くオブザーバーとして参加すると報じた。
複数の消息筋によると、シリア・クルド国民評議会への参加凍結後もクルド民族主義勢力は協調を続け、体制打倒という姿勢を維持するという。
加盟資格を凍結されているクルド民族主義政党とシリア・クルド国民評議会への参加を正式に認められていない政党のうち、民主統一党、シリア・クルド左派党、クルド民主党、クルド・シリア民主党は民主的諸勢力国民調整委員会に、シリア・クルド・アーザーディー党とシリア・クルド・イェキーティー党はシリア国民評議会に参加する見込み。
またシリア・クルド進歩民主党と、シリア・クルド民主党パールティ、シリア・クルド民主統一党はダマスカス民主変革宣言に参加する。
一方、シリア・クルド国民評議会は無所属の活動家らに向けて声明を出し、クルド人の統一ブロックを結成するために現在所属している組織を辞めるよう呼びかけた。
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シリア革命総合委員会は、ダルアー県国立博物館の展示品の一部が「治安部隊兵士」に盗まれたと発表した。
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反体制活動家のニダール・ナイーサ氏は『ヒワール・ムタマッディン』(3613号)で、「シリアの反体制活動家へのメッセージ」と題した論説を発表し、そのなかで反体制勢力がフランス委任統治時代の旗を掲揚していることを「不適切」と批判した。
アサド政権の動き
経済学者のムハンマド・カルクーティー氏はアラビーヤ(1月20日付)に対して、シリア中央銀行の外貨不足により、アサド政権は近く公務員への給与支払いができなくなるだろうと予測した。
レバノンの動き
ムスタクバル潮流のアフマド・ハリーリー事務局長(サアド・ハリーリー代表のいとこ)は『シャルク・アウサト』(1月20日付)に対して、1月11日にアサド大統領がダマスカス県ウマウィーイーン広場の集会に姿を現していた際、ヒズブッラーの護衛隊が大統領を護衛していた、と述べた。
諸外国の動き
フランスのニコラ・サルコジ大統領は在仏各国大使との会合で「私ほどバッシャール・アサドに誠実に手をさしのべてきた人物はいないが…、シリアでのスキャンダルを前に沈黙は続けられない…。抗議運動への野蛮な弾圧は受け入れられない」と述べた。
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米国務省は声明を出し、シリアの治安悪化を理由に在ダマスカス米大使館の閉鎖を検討中だと発表した。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチはアラブ連盟に対する公開書簡を出し、そのなかで監視団の報告書を国連安保理に提出するよう求めた。
AFP, January 20, 2012、Akhbar al-Sharq, January 20, 2012, January 21, 2012、Alarabia.net, January 20, 2012、al-Hayat, January 21, 2012、al-Hiwar al-Mutamaddin, January 20, 2012、Kull-na Shuraka’, January 20, 2012, January 21, 2012、Reuters, January 20, 2012、SANA, January 20, 2012、al-Sharq al-Awsat, January 20, 2012などをもとに作成。
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