国連安保理は、周辺国からシリアへの越境(クロスボーダー)人道支援をさらに1年延長する決議案の採決を行ったが、ロシアと中国が拒否権を行使し、廃案となった。
ロシアと中国以外の13カ国は決議案に賛成していた。
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決議案は、国連安保理決議第2504号(2020年1月11日)が定める越境人道支援の有効期限である2020年7月10日が迫るなかで、ドイツとベルギーが共同提出し、支援の仕組みを維持したまま、これを2021年7月10日まで1年間延長することを提案していた。
しかし、ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使は「通行所の数を1つに制限するかたちで、現行の支援の仕組みを半年延長する我々の決議案を提出する」としたうえで、「テロリスト」の支配下にあるイドリブ県の残りの地域に人道支援を搬入し、そこでの市民の必要に対応するには通行所は1つで充分だと考えている」と付言、2カ所の通行所を維持するとした決議案に反対の意思を示した。
また、中国の張軍国連大使は、「一方的な強制措置が解除されない限り、シリアの人道状況の本質的な改善にはならない…。シリアの市民の苦難に懸念を主張する国があるが、その国がシリアに一方的に強制措置を科し、シリア国民の暮らしを締め付けている」と非難し、シリアに対する制裁の解除を求めた。
AFP, July 8, 2020、ANHA, July 8, 2020、AP, July 8, 2020、al-Durar al-Shamiya, July 8, 2020、Reuters, July 8, 2020、SANA, July 8, 2020、SOHR, July 8, 2020、UPI, July 8, 2020などをもとに作成。
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