2012年2月28日のシリア情勢

アサド政権の動き

バッシャール・アサド大統領は、26日の新憲法信任国民投票の結果を受け、法令第94号を発し、27日付で新憲法の施行を宣言した。

憲法全文(アラビア語)はhttp://www.sana.sy/servers/gallery/201202/20120228-120351.docを参照。

反体制勢力の動き

トルコで避難生活を送る自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐は声明を出し、シリア赤新月社と負傷者の搬出、支援物資の搬入に関して協力する意思があることを明らかにした。

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ハイサム・マーリフ弁護士は『シャルク・アウサト』(2月28日付)に対して、自身を含む指導的メンバーが脱会したとの一部報道を否定した。

しかしシリア国民評議会内で「シリア国民行動グループ」を結成したことに関しては認めた。

国内の暴力

ヒムス県ヒムス市、ハマー県ハルファーヤー市などで軍・治安部隊による掃討作戦が続き、反体制消息筋によると、100人以上が死亡した。

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ヒムス県では、複数の反体制活動家筋によると、ヒムス市バーブ・アムル地区の中心街に第4(機甲)師団が入った。

また、同消息筋によると、バーブ・アムル地区から逃走しようとした若者68人が虐殺された。

一方、シリア人権監視団によると、タッルカラフ市でも軍・治安部隊による砲撃が行われ、負傷者が出た。

他方、SANA(2月28日付)によると、タッルカラフ地方の対レバノン国境地域で関係当局が大量の武器弾薬を密輸しようとした武装テロ集団の密入国を阻止した。

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ハマー県では、ハルファーヤー市(人口約35,000人)に対する軍・治安部隊の掃討作戦が続き、少なくとも市民20人が殺害されたという。

サーミル・ハマウィーを名のる活動家がAFP(2月28日付)に述べたところによると、ハルファーヤー市は連日、「無差別砲撃」を受けているという。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町で軍・治安部隊と離反兵が衝突した。

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アレッポ県では、複数の活動家よると、アレッポ大学で学生150人から1,000人が反体制デモを行い、治安部隊が強制排除、多数を逮捕した。

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ダマスカス県では、複数の活動家よると、ダマスカス大学で反体制デモが発生し、治安部隊が強制排除、30人以上を逮捕した。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合のムハンマド・シャーミー報道官を名のる活動家がAFP(2月28日付)に述べたところによると、カフルスーサ区で、26日と27日に治安部隊が殺害した市民の葬儀に数千人が参列し、葬儀後に反体制デモを行った。

またシリア人権監視団によると、マイダーン地区でも犠牲者の葬儀に参列した数百人が抗議デモを行った、という。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市、ザマルカー町などでも反体制デモが発生したという。

キリスト教シリア・カトリックのマール・ムーサー修道院事務局は、2月22日に約30人の武装した「シャッビーハ」が修道院を襲撃したと発表した。

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Naharnet, February 28, 2012

Naharnet, February 28, 2012

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と離反兵の戦闘が発生し、31人が砲撃で死亡した。

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22日にヒムス市での軍・治安部隊の砲撃によって負傷した英国人カメラマンのポール・コンロイ氏が無事、レバノンに搬出された。

一方、同じく22日の砲撃で負傷したフランス人記者エディト・ブヴィエール女史もレバノンに搬出されたとの報道が一時なされたが、ニコラ・サルコジ大統領は「彼女がレバノンに無事出国したことを確認していない。ヒムスとの連絡はきわめて困難である」と否定した。

『ル・フィガロ』紙もまたブヴィエール女史が依然としてシリア国内にいると発表した。

『ハヤート』(2月29日付)によると、ブヴィエール女史の搬出が難航している理由の一つとして、シリア赤新月社がアサド政権と結託しており、信用できないとの疑念が(反体制勢力側に)あると報じている。

しかし、SANA(2月28日付)によると、シリア赤新月社は、中立的でないとの一部報道を拒否する声明を出した。

レバノンの動き

ミシェル・スライマーン大統領は訪問先のルーマニアで「我々はアラブ連盟におけるシリアの加盟資格回復のために活動するだろう」と述べた。

国連での動きimage2

国連人権理事会で、シリアでの「人道的危機」の審議が行われた。

審議には47カ国が出席し、シリア政府に対して国連および人権機関のヒムスなどへの自由な往来を求める決議案(カタール、トルコ、サウジアラビア、クウェートが作成)が提出された。

ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、「発砲の即時人道的な停止」を求めた。

しかし、シリア代表ファイサル・ハッバーズ・ハマウィー大使は、「人道的なニーズを口実にして行われるシリアを標的とした計略で…(理事会が)一部の国の道具とかしている…民間人保護や人道的保護の概念が政治的目的のためにもてあそばれている」と述べ、会場を退席し、議事をボイコットした。

一方、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、シリア政府や赤十字国際委員会との協力の、もと、人道支援や負傷者搬出のための2日間の停戦を実現することが重要だと述べた。

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国連のリン・パスコ政務担当事務次長は、シリア情勢に関して、7,500人以上が犠牲になったと述べた。

この数字は、ロンドンで活動する反体制組織のシリア人権監視団が発表した数字(7,600人以上)とほぼ一致する。

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フランス外務省は、国連安保理に新たな対シリア決議案を提出したと発表した。

同決議案は、暴力行為の停止と、即時かつ無制限の人道支援を求める内容。

諸外国の動き

EUは閣僚6人と大統領顧問1人の渡航禁止と資産凍結を定めた追加制裁を発効した。

対象となったのは、ワーイル・ナーディル・ハッキー保健大臣、アブドゥルガニー・サーブーニー通信技術大臣、ファイサル・アッバース運輸大臣、サーリフ・ラーシド教育大臣、スフィヤーン・アッラーウ石油鉱物資源大臣、アドナーン・サラーフー工業大臣、そしてマンスール・ファドルッラー・アッザーム大統領顧問。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は米上院公聴会で、アサド大統領が戦争犯罪を犯している疑いがあり、「このカテゴリ(戦争犯罪人)のなかで捉えられてしかるべき」と述べた。

しかしその一方、こうした非難だけで、指導者を権力の座から退かせるには限界があるとし、またアサド大統領が退任しつつあるかとの問いに対しては、それを認めたもの、「最終的にどのようになるかは分からない」と述べた。

なお27日にシリア・ムスリム同胞団がアサド政権の行為を「戦争犯罪」と断じた声明を発表している。

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チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領は、シリアでの危機打開のためアサド大統領を受け容れる用意があると述べた。

AFP, February 28, 2012、Akhbār al-Sharq, February 28, 2012、al-Ḥayāt, February 29, 2012、Kull-nā Shurakā’, February 28, 2012、Naharnet.com, February
28, 2012、Reuters, February 28, 2012、SANA, February 28, 2012、al-Sharq al-Awsaṭ, February 28, 2012などをもとに作成。

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