トルコ軍がイドリブ県に新たな拠点を設置、「決戦」作戦司令室とともにシリア軍を砲撃(2020年8月9日)

イドリブ県の緊張緩和地帯(第1ゾーン)は、ロシア・トルコが3月5日の首脳会談で停戦に合意してから156日目を迎えた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、トルコ軍がシリア政府支配下のサーン村、ダイル・サンバル村、ザーウィヤ山地方一帯のシリア軍拠点を砲撃した。

また「決戦」作戦司令室もシリア政府支配下のハーン・スブル村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

これに対して、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のバーラ村、カンスフラ村、マウザラ村を砲撃した。

一方、トルコ軍は、ラタキア県クルド山地方に近いラーキム丘に新たな拠点を設置した。

これにより、シリア領内のトルコ軍監視所・拠点は71カ所となった。
(シリア人権監視団の計算だと67)

トルコ軍の監視所・拠点が設置されている場所は以下の通り:

監視所

イドリブ県:サルワ村、タッル・トゥーカーン村、サルマーン村、ジスル・シュグール市(イシュタブリク村)
アレッポ県:登塔者聖シメオン教会跡、シャイフ・アキール山、アナダーン山、アレッポ市ラーシディーン地区(南)、アイス村(アイス丘)
ハマー県:ムーリク市、シール・マガール村
ラタキア県:ザイトゥーナ村

拠点

イドリブ県:マアッル・ハッタート村、サラーキブ市(3カ所)、タルナバ村、ナイラブ村、クマイナース村、サルミーン市、タフタナーズ航空基地、マアーッラト・ナアサーン村(2カ所)、マアッラトミスリーン市、マストゥーマ軍事キャンプ、タルマーニーン村、バルダクリー村、ナフラヤー村、ムウタリム村、ブサンクール村(3カ所)、ナビー・アイユーブ丘、バザーブール村、ラーム・ハムダーン村、アブザムー町、ムシャイリファ村、タッル・ハッターブ村、ビダーマー町(2カ所)、ナージヤ村、ズアイニーヤ村(2カ所)、ガッサーニーヤ村、クファイル村、バクサルヤー村、フライカ村、バルナース村、アリーハー市、ジャンナト・クラー村、バサーミス村、カイヤーサート村、マルイヤーン村、マアッラータ村、タフタナーズ市、マンタフ村、ムハムバル村(2カ所)、ラーキム丘
アレッポ県:アナダーン市、アレッポ市ラーシディーン地区、ジーナ村(2カ所)、カフル・カルミーン村、タワーマ村、第111中隊基地、アターリブ市、ダーラ・イッザ市、カフル・ヌーラーン村、バータブー村
ハマー県:ムガイル村

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラタキア市ラムル・ジャヌービー地区にある「ロシアの民兵」の住居に武装集団が押し入り、1人を殺害した。

ドゥラル・シャーミーヤ(8月11日付)によると、殺害されたのはアラー・ナージー・イード氏。

ロシアの民間軍事会社に雇われリビアでの戦闘に参加していた人物だという。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を4件(イドリブ県1件、ラタキア県3件、アレッポ県0件、ハマー県0件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を確認しなかった。

AFP, August 9, 2020、ANHA, August 9, 2020、AP, August 9, 2020、al-Durar al-Shamiya, August 9, 2020、August 11, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, August 9, 2020、Reuters, August 9, 2020、SANA, August 9, 2020、SOHR, August 9, 2020、August 10, 2020、UPI, August 9, 2020などをもとに作成。

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