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国内の暴力
ダイル・ザウル革命諸委員会連合は声明を出し、自由シリア軍がダイル・ザウル市から撤退したと発表した。
同声明によると、撤退は「民間人への虐殺を回避するため」だという。
またシリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県クーリーヤ市で治安部隊の発砲により1人が殺害された。
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ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合のムハンマド・シャーミーを名のる活動家によると、ダマスカス県内(アッバースィーイーン広場)やムウダミーヤト・シャーム市などに治安部隊が多数展開し、厳戒態勢が敷かれた。
またカーブーン区、バルザ区、ドゥーマー市、ドゥマイル市では、軍・治安部隊と離反兵が交戦した、という。
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ヒムス県では、複数の反体制筋によると、ヒムス市各所、ラスタン市に対して軍・治安部隊が攻撃を加え、シリア人権監視団によると13人が殺害された。
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ハマー県では、複数の反体制筋によると、ハマー市に対して軍・治安部隊が攻撃を加え、1人が殺害された。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アアザーズ市で治安部隊の発砲により青年1人が射殺された。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ジャースィム市で、離反兵がシリア軍兵士1人を殺害した。
一方、『クッルナー・シュラカー』(3月20日付)は、ダルアー県ジャースィム市で、反体制活動家でイスラーム主義者のムハンマド・アンマール氏が治安当局に逮捕された、と報じた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ビンニシュ市で離反兵1人が殺害された。
反体制武装集団の動き
『ザマーン・ワスル』(3月20日付)は、ダマスカス県マッザ区での離反兵と軍・治安部隊の交戦に関して、自由シリア軍が「チェックメイト」作戦の名のもとに行った軍事行動の結果であると報じた。
同報道は、自由シリア軍に近い消息筋の話として、同作戦によって離反兵が、軍・治安部隊およびシャッビーハ約80人を殺害することに成功した。
同作戦は、離反兵が攻撃したビルに居住する准将を誘拐、殺害することにあったという。
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トルコで避難生活を送る自由シリア軍のマーヒル・ヌアイミー報道官は、『ハヤート』(3月20日付)に対して、タルトゥース港に駐留するロシア特殊部隊が弾圧に介入しようとしているとの情報を流した。
この情報発信に先立って、ロシアの艦船が19日、タルトゥース港に寄港した。
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ロイター通信(3月20日付)は、反体制勢力がダマスカス郊外県ドゥーマー市で先週誘拐したシリア軍のヌアイム・ハリール・アウダ准将を釈放した、と報じた。
この釈放と引き替えに、当局は逮捕者多数を釈放するとともに、遺体14体を反体制勢力側に引き渡した、という。
アサド政権の動き
アサド大統領は「シリアとビラード・シャームが、イスラーム諸学、シャリーアの教え、正統なイスラーム教にとって不可欠な源泉としての地位を日に日に強め、この地位はさらに確固たるものになろう」と述べた。
SANA(3月20日付)が、ダマスカス県旧市街のウマイヤ大モスク内のコーランの写本展示会場を訪れたアサド大統領の発言として伝えた。
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SANA(3月20日付)は、外務省が声明を出し、イラクでの同時多発テロとダマスカス、アレッポでの自爆テロを結びつけ、「ダマスカスとアレッポを攻撃したテロリストの手は同時に、友好国イラクの各都市を標的とした」と非難したと報じた。
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SANA(3月20日付)は、シリア外務省が声明を出し、武装テロ集団の殺戮行為が、改革や民主主義を拒否し、政治的解決を頓挫させようとしていることを示す証拠だと非難したと報じた。
パレスチナ人の動き
『クッルナー・シュラカー』(3月20日付)は、政権寄りのサイトと反体制勢力のサイト双方における様々な書き込みや分析などから、各地での爆破テロにファタハ・イスラームの細胞が関与している可能性がある、と報じた。
同報道によると、ダマスカス郊外県のキスワ市、ハジャル・アスワド市、ダマスカス県内のマッザ・ジャバル地区、カダム区で暮らす避難民の多くがファタハ・イスラームに同情的で、ドゥーマー市やアルバイン市などにや同組織の細胞が作られている、という。
またハマースの政策決定に近いパレスチナ筋の話として、ヤルムーク難民キャンプでの爆発事件も、ファタハ・イスラームの犯行だという。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ラジオ番組で、シリア情勢に関して、コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使の停戦案を支持する国連安保理議長声明案を「条件付き」で支持するとの意思を示した。
ラブロフ外務大臣は、「シリア政府は平和的デモ発生当初から間違った対応をとり、危機を悪化させる多くの間違えを犯した…。しかし移行期間にシリアを誰が指導するかという問題は、シリア政府、反体制勢力を包摂する対話以外において決定されてはならず、この対話においてアサドの退任を条件とすることは現実的でない」と述べた。
そのうえで国連安保理議長声明案に関して、「少なくとも二つの条件」付きで支持すると述べ、「安保理は決議を警告や時間的猶予としてではなく、シリア政府とすべての反体制勢力の合意形成に向けた努力継続をするための基礎としなければならない」と主張するとともに、アナン特使の活動を公表するよう求めた。
一方、ラブロフ外務大臣はロシア訪問中のアドナーン・マンスール外務大臣と会談した。
会談後の記者会見でラブロフ外務大臣は、アナン特使の活動と停戦案を支持する用意があるとしつつ、「何よりもまず、これらの提案は公表されねばならない」と述べた。
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国連安保理では、フランスが提出した国連安保理議長声明案とロシアの声明案をめぐる審議が行われた。
『ハヤート』(3月21日付)は、複数の外交筋の話として、ロシア側が暴力停止に関する文言に関して、「政府と反体制勢力双方の暴力行使の同時停止」を明示するよう求めたと報じた。
また「7日以内にアナン特使の提案への解答を安保理に対して行う」ことを求めるとの文言の削除を求めた、という。
一方、ロシアの決議案に関して、イギリスは、ダマスカスとアレッポのテロをほかの暴力行為と切り離して議論すべきでないとの意見を表明し反対した。
またフランスは、「安保理は二つの声明を同時に採択するか、いずれをも採択しない」との姿勢を示し、フランス案へのロシア側の修正要求を牽制した。
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国連の潘基文事務総長は、訪問先のインドネシアで、シリア情勢に関して、「もはや耐えられず、受け入れられない」と述べた。
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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、シリア情勢に関して、シリア政府への制裁強化の「別の方法を検討」するとしたうえで、アラブ連盟諸国にロシアとの通商関係の停止を呼びかけた。
ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、記者会見で、シリア情勢をめぐるロシアの姿勢に関して、「ロシアの姿勢に前向きな進展があった」と評価した。
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AFP(3月20日付)は、トルコ外交筋の話として、トルコがシリアの友連絡グループ第2回会合を4月1、2日にイスタンブールで開催することを決定したと報じた。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリアの反体制武装集団が、誘拐、拷問など「深刻な人権侵害」を犯していると発表した。
AFP, March 20, 2012、al-Hayat, March 21, 2012、Kull-na Shuraka’, March 20, 2012、Naharnet.com, March 20,
2012、Reuters, March 20, 2012、SANA, March 20, 2012、Zaman al-Wasl, March
20, 2012などをもとに作成。
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