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国内の暴力
17日のダマスカス県での同時爆弾テロに引き続き、アレッポ市でも自動車爆弾による自爆テロが発生した。
テロが発生したのはスライマーニーヤ地区の国家治安局近くで、シリア人権監視団によると、このテロで少なくとも3人が死亡、25人が負傷した。
一方、SANA(3月18日付)は、「武装テロ集団」が協会、小中学校などがある「住宅地区」で自爆テロを行い、2人が死亡、民間人と治安維持部隊兵士30人が負傷したと報じた。
このほか、アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がトルコ国境に近いアターリブ市、アアザーズ市に対する掃討作戦を継続した。
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ダマスカス県では、SANA(3月17日付)によると、ウスマーン・モスクで17日の同時爆弾テロの犠牲者の合同葬儀が行われた。
またギリシャ正教ダマスカス教区の主催によりカッサーア地区のテロ現場で追悼集会が開かれた。
シリア・アラブ・テレビ(3月18日付)は、一部のアラブ諸国の責任を追及する参加者らの映像を放映した。
バアス党の機関紙『バアス』(3月18日付)は、17日のダマスカスでの同時爆弾テロに関して、「資金と武器援助を通じて外国勢力が唱導するテロリスト」の犯行と非難した。
『ワタン』(3月18日付)は、「GCC諸国がダマスカスの大使館を閉鎖した理由がシリア国民に明らかになった」と報じた。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がヒルバト・ガザーラ町近郊で、ダルアー市での弾圧のための物資輸送に使用している橋を離反兵を爆破した。
一方、SANA(3月18日付)によると、ヒルバト・ガザーラ町近くの鉄橋が武装テロ集団によって破壊された。
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ヒムス県では、SANA(3月18日付)によると、クサイル市近郊のフサイバ村で武装テロ集団が住民に発砲し、13人を殺害した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が活動から摘発のため、マルイヤーン村に突入した。
またトルコ国境に位置するヒルバト・ジャウズ村では離反兵と軍・治安部隊が交戦し、前者の兵士4人が死亡した、という。
一方、SANA(3月18日付)によると、治安維持部隊が対トルコ国境に位置するヒルバト・ジャウズ村、アイン・バイダー村で武装テロ集団と交戦し、テロリスト多数を殺害、逮捕し、大量の武器を押収した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市、クーリーヤ市で軍・治安部隊と離反兵が交戦した。
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スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(3月18日付)によると、スワイダー市で100人以上の学生が逮捕されたクラスメートの釈放を求めて座り込みを行った。
アサド政権の動き
SANA(3月18日付)は、ローマ、モントリオール、ストックホルム、キエフ、モスクワなどで在外シリア人が、ダマスカスでの同時爆弾テロに抗議し、外国の干渉拒否とアサド政権の改革支持を訴えるデモを行ったと報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(3月18日付)は、アスマー・アフラス大統領夫人が、アサド大統領とハディール・アリー女史との関係に関して大きなショックを受けており、父で心臓外科医のファウワーズ・アフラス氏が夫婦の関係の修復に奔走している、と報じた。
国内の反体制勢力
『クッルナー・シュラカー』(3月18日付)は、軍を離反したクルド人兵士のうちハサカ県内にとどまる者が「自由シリア軍アーザーディー大隊」の名のもとに結集しようとしている、と報じた。
「アーザーディー」はクルド語で「自由」を意味する。
自由シリア軍アーザーディー大隊の結成をめざすシリア国内のクルド人は大尉以下の下士官、兵士らで、これまでにも「アフリーン革命戦士大隊」、「シャイフ・マアシューク・ハズナウィー大隊」などを名のって活動してきた、という。
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シリア人権監視団によると、治安当局はダマスカス県内で著名な活動家2人を逮捕した。
逮捕されたのはムハンマド・サイイド・ラッサース氏とファーイズ・サーラ氏で、いずれも民主的変革諸勢力国民調整委員会のメンバー。
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シリア革命調整総連合のサーミル・アブドゥッラーを名のる活動家は『ハヤート』(3月19日付)に対して、在外反体制勢力の分裂や活動家の離反が「すべて体制に利する…。「在外の活動家は自分たちがすることが国内にいる我々にどの程度影響を及ぼすか分かっていない」と厳しく批判し、国内の活動家がフラストレーションを募らせていることを明らかにした。
国外の反体制勢力
シリア国民評議会は声明を出し、ダマスカスとアレッポ市での自爆テロに関して、アサド政権の自作自演だと断じた。
声明では「アサド一味が爆発の背後におり、世論を惑わし、ダマスカスやアレッポの住民らの恐怖を煽る無駄な試みを行っている」と主張した。
そのうえで、これらの爆発に対するアサド政権の関与を調査するための国際調査委員会の設置・派遣を呼びかけた。
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AFP(3月18日付)は、シリア国民評議会のサミール・ナッシャール氏がダマスカスやアレッポでの自爆テロをアサド政権による自作自演と断じ、「国が混乱と爆発に曝されている」と人々に恐怖心を与えるために行ったと述べた、と報じた。
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AFP(3月18日付)によると、スペインのマドリード、スイスのジュネーブで「シリア革命」1周年(3月15日)に合わせて、「革命支持」を訴えるデモが行われ、シリア人活動から数百人が参加した。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ロシアがアサド政権による決定の多くに同意していないと述べつつ、改めて危機の政治的解決を主張、コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使のミッションを支持すると述べた。
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『ハヤート』(3月19日付)によると、シリア人約200人が国内での暴力を避けるため、トルコ領内に避難し、シリア人避難民の数は15,900人になった。
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赤十字国際委員会は声明を出し、ヤコブ・ケーレンバーガー会長がシリア情勢に関して議論するためロシアを訪問すると発表した。
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イランのメフル通信(3月18日付)によると、アリー・アクバル・ヴェラーヤティー最高指導者顧問は、「西側諸国がシリア問題解決に行っているという努力には善意がない、その目的は誠実でない…。その目的はシリア国民の権利支援ではなく…、アサド政権の転覆である」と述べた。
またコフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使のミッションに関して、「米国のシリアへの陰謀の枠外にはない」と述べて批判的な見方をしていることを明らかにした。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、ダマスカスとアレッポでの自爆テロに関して、遺憾の意を示すとともに、あらゆる暴力行為の即時停止を呼びかけた。
AFP, March 18, 2012、al-Hayat, March 19, 2012、Kull-na Shuraka’, March 18, 2012、Reuters, March 18, 2012、SANA,
March 18, 2012などをもとに作成。
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