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国内の暴力
地元調整諸委員会によると、シリア各地で57人が殺害された。
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フェイスブック(3月27日付)などによると、ザバダーニー市でアリー・ジャムール准将が発砲命令を拒否した兵士に射殺された。
ジャムール准将はラタキア県ジャブラ地方ダイルータン村出身のアラウィー派。
またシリア人権監視団によると、ドゥーマー市で治安部隊の発砲により女性1人が殺害され、ザバダーニー市で26日に負傷した2人が死亡した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフルルーマー村で2人、マアッラト・ヌウマーン市で女性3人軍・治安部隊が掃討作戦を続け、4人が死亡した。
またマアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士複数が死亡した。
さらに、『クッルナー・シュラカー』(3月27日付)によると、離反兵(自由シリア軍)が撤退したカフルナブル市で、軍・治安部隊が住宅や店舗を破壊したうえで、略奪脅威を行っている、という。
一方、SANA(3月27日付)によると、サラーキブ市で、治安維持部隊が武装テロ集団の追跡・摘発を続け、同集団と交戦、アブドゥッラー・ハッジー容疑者、ウサーマ・ハンムード容疑者、イヤード・ザイル容疑者、イブラーヒーム・バーキール容疑者、イマード・シャアバーン容疑者、ムハンマド・バーリーシュ容疑者(通称ハーフィー)を殺害した。
またジスル・シュグール市近くでも治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数を殺害、逮捕した、という。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で治安部隊の発砲により2人が殺害された。
またヒムス市内で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士複数が死亡した。
一方、シリア革命総合委員会によると、クサイル市、ラブラ村、ナザーリーヤ村、ジュースィーヤ村に対して、軍・治安部隊が「砲撃」を続け、家々が破壊されたほか、ラブラ村でキリスト教徒1人が死亡した、という。
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ダイル・ザウル県では、『シャルク・アウサト』(3月28日付)によると、自由シリア軍のアッラー・アクバル旅団を名のる組織がブーカマール地方で治安部隊の少佐1人を27日未明に殺害したとの情報を認めた。
またシリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で治安部隊の発砲により青年1人が殺害された。
さらに複数の活動家によると、ダイル・ザウル市ジャウラ地区の総合情報部使節近くで軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦した。
アサド政権の動き
SANA(3月27日付)によると、アサド大統領はヒムス市バーブ・アムル地区を視察した。
同報道によると、視察現場に集まった市民らは、武装テロ集団の占拠により被った被害を訴えるとともに、政府の対応の遅れを批判した、という。
これに対して、『シャルク・アウサト』(3月28日付)は、自由シリア軍のファールーク大隊がヒムス市を訪問したアサド大統領の襲撃を試みたが成功しなかった、と活動家の話として伝えた。
レバノンで避難生活を送る在レバノン・地元調整委員会報道官でシリア国民評議会メンバーのウマル・イドリビーなる活動家によると、この襲撃を受け、アサド大統領はヒムス市の視察を中断したというが、真偽は定かでない。
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『タイムズ』(3月27日付)は、米国や中東諸国に在住の複数の反体制活動家の話として、アサド政権と離反を求める政権中枢(共和国護衛隊など)の高官との間で秘密裏に交渉が行われている、と報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(3月27日付)は、労働者組合総連合が各地の支部に対して、組合員16,300人を反体制活動の監視・通報に動員するよう通達した、と報じた。
その他の国内での動き
スワイダー市で、シャイフ・アクルのアフマド・サルマーン・ヒジュリー師の国葬が行われ、アフマド・バドルッディーン・ハッスーン共和国ムフティーなどが参列した。
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『クッルナー・シュラカー』(3月27日付)によると、ダルバースィーヤ市で暗殺されたジュワーン・ハルフ・カトナ氏(シリア・クルド国民評議会)の葬儀が同市で行われ、多数の市民、反体制活動家が参列した。
葬儀には、シリア・クルド・イスラーム覚醒運動、クルド調整連合、シリア・クルド国民評議会などの代表が弔辞を述べた。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会が主催したイスタンブールの反体制勢力の大会が政治綱領「未来のシリアのための国民誓約」を採択して閉幕した。
『シャルク・アウサト』(3月28日付)は、トルコ公式筋の話として、シリア国民評議会と自由シリア軍の関係が最大の争点の一つとなり、シリア国民評議会は自由シリア軍に独立した組織としての行動を行わないよう説得、両組織の「関係強化の必要」を確認するとともに、「バッシャール・アサド体制に変わる新たな体制の枠組みを確定する必要がある」との認識のもと、「未来のシリアのための国民誓約」を採択することに合意した、と報じた。
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閉幕に際してアブドゥッラッザーク・イード氏が閉幕声明を読み上げ、大会出席者がシリア国民評議会を、「シリア国民の正式な基軸にして正式な代表」として承認したことを明らかにした。
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これに続いて、ジョジュル・サブラー氏が採択された「未来のシリアのための国民誓約」を読み上げた。
同綱領は「自由で独立した民主的・多元的市民国家」、「シリア国民のみの意思に従う独立主権国家」の建設、「非合法的体制打倒後の暫定移行内閣の発足」、「制憲法議会を選出するための自由選挙の実施」が掲げられている。
また「アラブ、クルド、アッシリア人、トルクメン人など、宗教、宗派、民族の差別を行わない」と明記しているほか、軍・治安機関の再編、あらゆる合法的な手段でのゴラン高原の解放などを公約している。
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またブルハーン・ガルユーン事務局長は、国際社会に対して自由シリア軍への武器・財政支援を呼びかけた。
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大会に出席したカタールのハーリド・アティーヤ外務担当国務大臣は、「必要とされているのは、反体制勢力の統合ではなく、統一的ビジョンの案出である」と述べた。
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トルコの代表として出席した外務省高官のハリト・ジェリク氏は、アサド大統領の退任以外に現下のシリア情勢の打開する選択肢はないと述べた。
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しかしシリア国民評議会が主催したイスタンブールの反体制勢力の大会は、反体制勢力内の分裂、とりわけ国内で活動する反体制勢力とシリア国民評議会の対立をさらに助長しただけだった。
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ハイサム・マーリフ弁護士は、『シャルク・アウサト』(3月28日付)に対して、「自身が座る席がない」と述べ、シリア国民評議会が議事を独占し、他の活動家に意見表明の場を与えていないと非難し、大会をボイコットしたと述べた。
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ワリード・ブンニー弁護士も、「現体制が40年間にわたって行ってきたのと同じように、(基本)原則を見出すという口実で、シリア国民評議会の発言に別の発言がなされることはない」と非難し、大会をボイコットした。
またクルド問題の民主的公正な解決とクルド人のアイデンティティの憲法での保障の必要を訴えた。
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一方、シリア国民評議会内のクルド・ブロックが同評議会の組織の抜本的改編と新内規作成のための共同委員会設置を求める文書を提出した。
『クッルナー・シュラカー』(3月28日付)によると、この文書には、憲法でのクルド人民の民族的アイデンティティの保障、クルド問題の民主的・公正な解決の保障、クルド人に対するすべての差別的政策の廃止などの採択が求められていたが、その是非をめぐって対立が、大会に出席していた評議会外のクルド人代表らを巻き込んだかたちで激しく行われた、という。
最終的にこの文書は採択されず、大会出席者の多くはシリア国民評議会が策定した「未来のシリアのための国民誓約」を採択し、クルド・ブロックを事実上黙殺した。
この決定に関して、クルド人活動家のタラール・イブラーヒーム・バーシュ・ミッリー氏は、「我々はクルド問題の政治解決をこの声明(未来のシリアのための国民誓約)に盛り込む必要があると考えていた。しかし、彼ら(シリア国民評議会)は、今後検討すると返答した」と述べた。
またシリア・クルド国民評議会を構成するシリア・クルド左派党のシャッラール・カッドゥー政治局員は、イスタンブールの大会で「クルド人民の民族的権利がまったく承認されておらず、またクルド人がシリアの主要な民族であると言及していないがゆえ、大会から撤収した、と述べた。
レバノンの動き
MTV(3月27日付)など、複数のメディアが地元住民の話として伝えたところによると、ベカーア県バアルベック郡カーア地方にシリアの軍・治安部隊が侵入し、反体制(武装)勢力と交戦した。
しかしナハールネット(3月27日付)は、レバノン高官がシリア軍の進入の事実はないと述べたと報じ、NNA(3月27日付)も、シリア軍進入の事実はないと報じた。
アドナーン・マンスール外務大臣もまた、「武装集団を追跡していたとしても、シリア軍がレバノン領内に進入したことはない」と述べた。
これに対し、ロンドンで活動するシリア人権監視団はレバノン領内で戦闘があったと断じた。
ただし、シリアとレバノンは国境画定を行っておらず、ベカーア地方の領有権も厳密には確定していない。
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ムスタクバル潮流は定例会合で、シリア・ムスリム同胞団の「尊厳と権利の誓約」宣言に関して、「アラブの春の精神とスローガンの実施」をめざすものだと高く評価した。
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SANA(3月27日付)は、ベイルート県などレバノン各地でアラブ民族主義青年機構が、「シリア、心にかけて」と銘打ったデモ行進を組織し、シリア(アサド政権)支持、連帯、外国の陰謀拒否を訴えた、と報じた。
アラブ連盟の動き
複数のメディアによると、28日にアラブ連盟外相級会合で審議予定の連盟首脳会議声明案には、シリアでの民間人に対する「人権侵害」を厳しく非難するとともに、ヒムス市バーブ・アムル地区での弾圧を「人道に対する罪」と断じ、責任者の処罰を求める文言が盛り込まれている、と報じた。
同声明案はまた、アナン特使の停戦案への支持を表明しつつも、アサド政権に対して「すべての暴力と殺戮の即時停止」を一方的に要求している。
一方、反体制勢力に対しては糾合を呼びかけている。
なおGCC諸国などの支援のもとに弾圧されたバーレーンの事例に関しては具体的な記述はない。
諸外国の動き
ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領は、滞在先のソウルで記者団に対して、「アサド大統領の退任がすべての問題の解決を意味するという考え方は近視眼的で、そうした場合に紛争が続くだろうということは、世界中が分かっている」と述べた。
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ロバート・フォード駐シリア米大使は下院での人権問題に関する公聴会で、アサド政権によるアナン調停案の受諾に関して、「我々は、バッシャール・アサド大統領の言葉ではなく行動を見るべきだ」と述べた。
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コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使付報道官のアフマド・ファウズィー氏は、アサド政権がアナン特使の6項目停戦案を受諾したことを明らかにし、この決断を「重要な第1段階」と評価し、即時履行が必要だとの見解を示した。
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ラディカ・クマーラスワーミー国連総務は、ニューヨークでの記者会見で、シリアの反体制勢力が軍・治安部隊との戦闘に子供を動員しているとの情報があり、16歳以下の子供の徴兵を禁じた国際社会の合意に反していると非難した。
なおこれに関して、自由シリア軍のマーリク・クルディー大佐は『シャルク・アウサト』(3月28日付)に対して、兵士は「17歳以上」だとクマーラスワーミー国連総務の発言を否定した。
AFP, March 27, 2012、Akhbar al-Sharq, March 27, 2012, March 28, 2012、Kull-na
Shuraka’, March 27, 2012, March 28, 2012、al-Hayat, March 29, 2012、MTV, March 27, 2012、NNA, March 27, 2012、Reuters, March 27, 2012、Naharnet.com, March 27, 2012、SANA, March 27, 2012、al-Sharq al-Awsat, March 27, 2012, March 28, 2012、The Times, March 27, 2012などをもとに作成。
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