シリア革命反体制勢力国民連立は「西クルディスタン移行期民政局評議会」の発足を発表した民主統一党を「革命に敵対し、アサド政権を支援している組織」として批判(2013年11月13日のシリア情勢

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反体制勢力の動き

11日にイスタンブールで移行期政府を発足したシリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、西クルディスタン移行期民政局評議会(自治組織)の発足を発表した民主統一党を「革命に敵対する組織とみなし…、評議会の発足を、独裁のない自由で独立した統一シリア国家をめざして闘うシリア国民との関係を絶つ分離主義的な動きとみなす」と非難した。

また、シリア国民連立は声明で「人民防衛隊を名乗る軍事部門の活動を通じてシリア国民の利益、革命の原則に対抗し、アサド政権を支援している」と非難した。

この声明と合わせて、シリア国民連立は別の声明を出し、シリア・クルド国民評議会の連立への参加を改めて発表した。

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クッルナー・シュラカー(11月13日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立がメンバーの相次ぐ脱会を阻止するため、メンバーによる書面での脱会申請と総合委員会での採決を義務づけたと報じた。

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イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の「アレッポ国」は、シャームの民のヌスラ戦線など6組織に次いで、インターネットを通じて声明を出し、「ヌサイリー派とラーフィドゥーンの軍がハナースィル街道を奪還し、サフィーラ市、そしてタッルアラン村を占領、解放区を再び占領するためすべて面から進軍し…多くの部隊がアレッポ市およびその郊外から撤退してしまった」と警鐘を鳴らし、「イスラーム教徒の聖地と土地に対する敵の進軍を防ぐようすべての戦線に大号令を発する」と発表した。

『ハヤート』(11月14日付)が報じた。

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シリア・ムスリム同胞団が発足を準備している公正憲法国民党(略称「ワアド」(約束)の実行評議会メンバーはAKI(11月13日付)に、党の活動方針は同胞団から独立したものとなるだろうと述べた。

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シリア人権監視団は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、アレッポ県第80旅団基地での攻防戦で捕捉した反体制武装集団の負傷した戦闘員を「アサド政権を支持するイラク人シーア派戦闘員だと間違って」斬首したと発表した。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などが占拠するタッル・ハースィル村を軍が空爆した。

Champress, November 13, 2013

Champress, November 13, 2013

また国防隊、ヒズブッラーの民兵の支援のもと、軍は、アレッポ・サフィーラ街道の完全制圧を進めるべく反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(11月13日付)によると、アレッポ市旧市街およびウマイヤ・モスク周辺で軍が反体制武装集団を追撃し、同地区の大部分を制圧した。

また、ナッカーリーン村、ザルズール市、タイヤーリーン市、アルバイド村、クワイリス村、カフルハムラ村、マアーッラト・アルティーク村、フライターン市、アナダーン市、マディーナ・スィナーイーヤ地方、キンディー大学病院周辺、アレッポ中央刑務所周辺、アレッポ市カッラーサ地区、バニー・ザイド地区、ブスターン・カスル地区、ラーシディーン地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がマヒーン町の武器弾薬庫の武器弾薬を「安全な場所」に移動し、同施設を爆破した。

一方、SANA(11月13日付)によると、ヒムス市グータ地区、ハムラー地区、インシャーアート地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民9人が死亡、多数が負傷した。

また、ガースィビーヤ村、ドゥワイル村、ラスタン市、マヒーン町、ダール・カビーラ村、ガントゥー市、クナイトラート村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(11月13日付)によると、バーブ・トゥーマー地区、ザバダーニー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が死亡、20人が負傷した。

また、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(11月13日付)によると、サラミーヤ市郊外のフナイフィス村で8日に反体制武装集団に拉致された女性2人が遺体で発見された。

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ダマスカス郊外県では、SANA(11月13日付)によると、軍がフジャイラ村での反体制武装集団の掃討を完了、同市を完全制圧した。

また、ハズラマー市、フタイタト・トゥルクマーン市郊外、バイト・サフム市、スバイナ町郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(11月13日付)によると、サラーキブ市南西部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(11月13日付)によると、ハサカ県グワイラーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(11月13日付)によると、ダルアー市旧税関地区など、アトマーン村、ムサイフラ町、サイダー町、タファス市、タッル・サマン市、ナワー市、インヒル市、シューマラ村、アッラーリー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、ベイルート県郊外のルワイスでのアーシューラーの記念祝典に突如姿を現し、レバノン情勢、イラン情勢、シリア情勢などについて演説した。

シリア情勢との関連で、ナスルッラー書記長は、ナジーブ・ミーカーティー内閣解散後の新内閣組閣と絡めて次のように述べた。

「3月14日勢力に新内閣に参加しないようサウジアラビアが呼びかけている…。我々は彼らにシリア危機とレバノン情勢を分けて考えるよう、そしてまた隣国の戦争の結果に期待しないよう忠告してきた…。あらゆる事実が示しているのは、事態がサウジアラビアの望んでいない方向に進んでいることだ。シリアでの勝利でレバノンに内閣が発足すると望んでいる者たちに、「あなた方はシリアの戦争で勝つことはない」と言おう」。

諸外国の動き

ロシア外務省は声明を出し、ダマスカス県各所に対する反体制武装集団の迫撃砲による無差別攻撃を「テロ行為」と非難した。

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米国務省のジェン・サキ報道官は、11日に閉幕したシリア革命反体制勢力国民連立総合委員会の会合での決定に関して、「全権を有する移行期政府樹立に…向けたジュネーブ2会議準備プロセスが進展した」と評価した。

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ローマ法王フランシスコは、12日にダマスカス県のヨハネ学校児童に対する反体制武装集団の迫撃砲による攻撃に関して、5,000人の信者の前で「2日前、迫撃砲で学校から帰宅途中の何人かの子供たちが殺害され、多くの痛みを感じた…。こうした惨劇が今後決して繰り返されてはならないと願う」と述べた。

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コソボ共和国のイスラーム代表評議会は声明を出し、シリアでの戦闘参加が「宗教的諸原則と何ら関係がない」と非難し、そうした行為がアサド政権の延命につながると指摘、コソボ出身の若者たちに参加しないよう呼びかけた。

コソボの当局によると、アルバニア系のイスラーム教徒約150人がシリアに渡り戦闘に参加、うち12人が死亡している、という。

『ハヤート』(11月14日付)が伝えた。

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ドイツ内務省の連邦憲法擁護庁(BfV)長官は、シリア国内で反体制武装集団に参加しているドイツ人の数が把握されているだけで220人に達するとしているとしたうえで、「そこ(シリア)に入ることは彼らにとって容易で、ID Cardとトルコ行きなど、シリア国境に向かうチケットだけあればよい」と述べた。

また「現地に到着したら、戦闘部隊に入ることも簡単だ。同じ言葉をしゃべっている人と戦えばよいのだ」と付言した。

『ハヤート』(11月14日付)が伝えた。

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クッルナー・シュラカー(11月13日付)によると、サウジアラビア当局は、在留シリア人の抗議に対応するかたちで、リヤードのシリア大使館のシリア人職員1人を国外追放処分とした。

同職員が在留シリア人に対して諜報・密偵活動を行っているというのがその理由。

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『ハヤート』(11月15日付)は、シリアの反体制筋の話として、ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣がトルコのイスタンブールを訪問、シリア革命反体制勢力国民連立の代表と会談した、と報じた。

ボクダノフ外務副大臣が会談したのは、バドル・ジャースィム書記長、ファールーク・タイフール副議長、ミシェル・キールー政治委員会メンバーで、ジュネーブ2会議やシリア国内の人道状況について協議したという。

ボクダノフ外務副大臣は、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長をモスクワに招待したが、同議長の日程の都合調整がつかず、訪問は延期となったという。


別の活動家らによると、ボクダノフ外務副大臣は、移行期におけるアサド大統領の役割に関するロシアの姿勢に関して「これはシリア人自身が交渉のなかで決めることだ」と述べたもの、これまでに比べて「柔軟な姿勢」を示したという。

AFP, November 13, 2013、AKI, November 13, 2013、al-Hayat, November 14, 2013, November 15, 2013、Kull-na Shuraka’, November 13, 2013、Naharnet,
November 13, 2013、Reuters, November 13, 2013、Rihab News, November 13, 2013、SANA,
November 13, 2013、UPI, November 13, 2013などをもとに作成。

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