ダマスカス郊外県の複数地点で軍が反体制武装集団に対する砲撃を強化するなか、ブラーヒーミー共同特別代表がヨルダン国王や同国外相と会談し「シリアとシリア国民が安全を取り戻すための政治的解決」の必要性を確認し合う(2013年10月23日)

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反体制勢力の動き

アンサール・ワ・ムハージリーン軍のアブドゥッラフマーン・ハッラーク司令官は、「西欧、米国、そしてシリア政府は、自由シリア軍を名乗る集団を送り込み、イスラーム国家やジハード運動に対抗させようとしている」と非難した。

また「複数のアラブ諸国が、一部の集団を武器、資金で買収し、民衆とジハード運動の関係を破壊しようとしている」と付言した。

クッルナー・シュラカー(10月23日付)が報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のファーイズ・サーラ氏は、「連立は、全権を委任されない移行期政府、とりわけ軍、治安機関そして両組織に属するすべての機関に対して完全に権限を行使できない移行期政府の発足を受け入れることはないだろう…。シリアの現体制は、軍と治安機関がそれ以外の機関に対して権力を行使する体制であり、軍と治安機関が服さない政府は機能し得ない」と述べた。

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クッルナー・シュラカー(10月24日付)は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、アレッポ県マンビジュ市で活動するアスハーブ・ヤミーン旅団(自由シリア軍)司令官のムハンマド・カンジュ氏を拉致したと報道した。

同報道によると、カンジュ氏拉致を受け、アスハーブ・ヤミーン旅団は、マンビジュ市、ジャラーブルス市のダーイシュの拠点を襲撃するとダーイシュに警告しているという。

シリア政府の動き

クッルナー・シュラカー(10月23日付)は、信頼できる情報筋の話として、アドラー女性刑務所に収監されていた女性16人が釈放され、ダマスカス県に移送、県知事から恩赦されたことを伝えられたと報じた。

同報道によると逮捕された16人のうち、氏名が明らかになった14人は以下の通り:

1. ガーダ・アッバール
2. スィーサン・アッバール
3. ハッバ・スィーサーン
4. ファーティマ・マルイー
5. ザイナブ・アジューブ
6. リーマー・バルマーウィー
7. ミールファト・ハマウィー
8. マルーワ・ズウビー
9. マルーワ・アミード
10. リーナー・マフムード・アフマド
11. ファーティマ・マルイー
12. サハー・ムハンナー
13. ワルダ・スライマーン
14. サファー・クタイト

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シリア外務在外居住者省は声明を出し、「シリア国民こそが、自らの指導部を選択し、シリアの現在と将来を描き出す当事者である。シリア国民はいかなる外国の勢力が、自らに代わって政府を選ぼうとすること、その権限や任務を決定することをも許さない」と発表した。

また21日のルクセンブルグクのEU外相会議に関して、「EUはテロ集団支援に基づく対シリア破壊政策に依存している」と非難した。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、SANA(10月23日付)によると、イマード・フマイス電力大臣は、ダマスカス県南部の発電所(ダマスカス国外空港から16キロ離れたティシュリーン火力発電所)に燃料のガスを供給するパイプラインが「テロ攻撃」を受け、22日深夜に広い範囲で停電が発生した、と発表した。

これに関して、シリア人権監視団は、ダマスカス国際空港近くを反体制武装集団の迫撃砲で攻撃し、大きな爆発があったと発表した。

一方、ウマイヤの剣大隊の司令官は、ダマスカス県南部一帯の停電に関して、「ダマスカス国際空港に対してロケット弾を撃ち込み、そのうち1発がイラン人戦闘員や武器を積んだイランの航空機に被害を与えたと主張した。

クッルナー・シュラカー(10月24日付)によると、「自由シリア軍」の戦闘員2人が、ハイジャーナ市近郊を通るガス・パイプラインを手製のロケット弾「ヒッティーン3」によって破壊したという。

またこれと時を同じくして、ウマイヤの険大隊が「ヒッティーン3」によってダマスカス国際空港の燃料庫に砲撃を加え、反体制武装集団の狙撃手が直前に離陸した航空機を狙撃、これに対して軍の防空大隊が反撃し、大規模な停電になったのだという。

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同じくダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、キリスト教徒が多く住むサダド村に対して22日から攻撃を加えている反体制武装集団が、住民5人を殺害した。

反体制武装集団はサダド村の西側の地区と北側の地区の一部を占拠、軍の武器庫があるマヒーン町(スンナ派の村)方面への進軍を続けているという。

また武装集団の広報官のアラーバ・イドリース少尉は、サダド村襲撃に関して「史跡のあるこの村で起きていることの責任は政権にある」と述べる一方、戦闘員の進入に際して抵抗はなかったと主張した。

反体制武装集団の襲撃を受け、多くの村人が村から避難する一方、軍が奪還をめざし砲撃などを開始した。

一方、SANA(10月23日付)によると、サダド村に潜入した反体制武装集団を軍が撃退・追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

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同じくダマスカス郊外県では、『ハヤート』(10月24日付)によると、ムウダミーヤト・シャーム市に対して、軍が地対地ミサイルなどで「ヒステリックなまでに」砲撃を加えた。

一方、SANA(10月23日付)によると、ジャルマーナー市内に迫撃砲弾5発が着弾し、市民5人が負傷した。

また、フタイタト・トゥルクマーン市、ドゥーマー市郊外、ザマルカー回廊、ダーライヤー市、タイバ村、ムウダミーヤト・カラムーン山地一帯、ナバク市東北部、ジャイルード市東北部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、カアカーア大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、スフナ市から近隣の農村に避難した女性、子供らを含む住民15人(アムール家)を軍と「シャッビーハ」が殺害した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バラームカ地区、ウマウィーイーン広場に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、複数の市民が負傷した。

また、ドゥンマル区(マシュルーア・ドゥンマル)の軍検問所を、反体制武装集団が爆弾を仕掛けた車で攻撃し、複数の兵士が死亡した。

一方、SANA(10月23日付)によると、アッバースィーイーン地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾2発が着弾し、市民4人が死亡、18人が負傷した。

またウマウィーイーン広場にも迫撃砲弾が着弾し、7人が負傷した。

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クナイトラ県では、『ハヤート』(10月24日付)によると、反体制武装集団の攻撃により軍兵士約20人が死亡した。

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ダルアー県では、『ハヤート』(10月24日付)によると、ダルアー市のダム街道地区、キャンプ地区、タファス市入り口の検問所2カ所などを軍が空爆・砲撃した。

一方、SANA(10月23日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装数段の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備、地下トンネルを破壊した。

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アレッポ県では、SANA(10月23日付)によると、アレッポ市のサアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾3発が着弾し、市民6人が死亡し、30人が負傷した。

また、アレッポ市ジュダイダ地区、クワイリス村、ラスム・アッブード村、ダイル・ハーフィル市などで、軍が反体制武装数段の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(10月23日付)によると、ナフリヤー市、ダブシーヤ市、バラーギースィー市、カフルシャラーヤー市、アルバイーン山周辺、クーリーン市、アルマナーヤー市、マアッラトミスリーン市、カフルジャーリス市、サルミーン市、サラーキブ市周辺で、軍が反体制武装数段の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(10月23日付)によると、ウヌキーヤ村で、軍が反体制武装数段の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ナハールネット(10月23日付)は、ベカーア県バアルベック郡ワーディー・フマイイド地方で、シリアから不法入国した車に乗った4人のシリア人を逮捕、大量の武器弾薬を押収したと報じた。

諸外国の動き

ヨルダンのアブドゥッラー・ナスール首相は記者団に対して「ヨルダンはシリア政府が弱体化してからも、シリアの反体制勢力を支援したことはない。シリア政府が2年半におよぶ危機を経て、より強力になっているのに、どうして今になって支援を検討できようか?」と述べた。

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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、ヨルダンのアンマンを訪問し、国王アブドゥッラー2世、ナースィル・ジャウダ外務大臣らと会談、シリア情勢への対応について協議した。

ジャウダ外務大臣との会談に関して、ブラーヒーミー共同特別代表は、「重要で不可避な会談を行った」と述べるととも、「シリア国民を苛む悪夢を終わらせるのは、政治的対話を通じて以外にない」と強調した。

またジャウダ外務大臣も「シリアとシリア国民が安全を取り戻すための、政治的解決が必要」と述べた。

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イスラエルのモシェ・ヤアロン国防大臣は、クネセトの外交防衛委員会で、シリアでの化学兵器廃棄問題に関して「今のところシリア政府は誓約を遵守している」としたうえで、「我々は事態を追跡し、シリアをめぐる我々のレッドライン、すなわちヒズブッラーなどへの敵対勢力へのシリアの最新鋭兵器の供与阻止を強化する」と述べた。

AFP(10月24日付)が伝えた。

AFP, October 23, 2013、AKI, October 23, 2013、al-Hayat, October 24, 2013、Kull-na Shuraka’, October 23, 2013, October 24, 2013、Naharnet,
October 23, 2013、Reuters, October 23, 2013、Rihab News, October 23, 2013、SANA,
October 23, 2013、UPI, October 23, 2013などをもとに作成。

 

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