【トルコ・シリア大地震】国連安保理でシリアの人道状況や政治情勢にかかる月例会合が開催される(2023年2月28日)

国連安保理では、シリアの人道状況や政治情勢にかかる月例会合が開催された。

マーティン・グリフィス国連人道問題担当事務次長、ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表、NGOのセーブ・ザ・チルドレンのラシャー・マフリズ対応担当官らがブリーフィングを行い、その後各国代表が発言した。

グリフィス事務次長は、トルコ・シリア大地震によって少なくとも5万人が死亡、5万人以上が負傷、数万人が行方不明、数十万人が家を失ったとしたうえで、シリア全土の被害に対応するため、2023年の対応計画においては、現在行わている要請のなかで最大規模となる48億米ドルが必要だと述べた。

グレイス事務次長によると、国民の70%に相当する1530万人が人道支援を必要としているという。

トルコからの越境(クロスボーダー)支援については、シリア政府が2ヵ所の通行所の開放に合意したことで、これまでに423輌の貨物車輌が100万人分の支援物資を搬入したと報告した。

合わせて、国連の中央緊急対応基金から4000万米ドルを拠出、今後3ヵ月間のニーズに対応するために3億9760万米ドルが必要だとの緊急要請を行ったことを改めて明らかにした。

ペデルセン特別代表は、現状が前例のないもので、指導力、大胆な発想、協調精神が求められているとしたうえで、今は、シリアを迅速且つ寛大に支援し、救援物資がシリアの被災者に届くのを妨げているすべての障害を取り除くべき時だと述べ、支援を政治利用することなく、シリアの被災者を支援するよう呼びかけた。

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ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連第一副代表は、シリア政府が地震発生直後にトルコとの国境通行所2ヵ所を開放したことを評価、国連安保理決議に人道支援にかかる措置を規程する必要がはなくなったと述べた。

また、シリア政府の支配下になり北西部への物資の輸送についても、国連安保理決議第2672号が定める境界(クロスライン)支援が行われるべきだとする一方、シャーム解放機構が同地への支配を掌握し、住民に物資を売却していると非難した。

さらに、欧米諸国によるシリアへの制裁については、国連でその悪影響について検討すべきだと呼びかけた。

このほか、19日にイスラエルによる首都ダマスカスへのミサイル攻撃を国際法へのあからさま違反だとして厳しく非難、シリアへの武力による挑発を止めるよう求めた。

米国のロバート・A・ウッド代表は、越境支援が諸外国の干渉なく行われるべきだとしたうえで、米国が占領するタンフ国境通行所(ヒムス県)一帯地域(55キロ地帯)内のタンフ国境通行所に対して、シリア政府とロシアが支援を行うべきだと主張した。

UAEのムハンマド・アブー・シハーブ国連副代表は、トルコ・シリア大地震の被災者を支援するため、国際社会による緊急支援をあらゆる方法で拡大させる必要があると発言、UAEとしてはシリアや国連の要請に応じるかたちで救援支援、人道支援を行ってきたと強調した。

英国のバーバラ・ウッドワード国連大使は、アサド体制がシリア北西部への支援物資の配給に干渉し続けているという懸念を踏まえて、国連安保理が状況を注意深く監視し続ける必要があると強調した。

シリアのバッサーム・サッバーグ国連代表は、トルコ・シリア大地震でシリアが被った被害に対処する取り組みは、国際社会の支援が必要だとしたうえで、そのためには人道的配慮を政治的配慮よりも優先させ、違法な一方的制裁を完全かつ無条件で撤廃し、シリアおよびその国民に真摯な真の支援を行うことで可能になると述べた。

イランのエミール・サイード・エルワーニー国連大使は、シリアに対する欧米諸国の制裁を無条件で全廃し、シリアへの人道支援を強化すべきと発言した。

トルコのセダト・オナル代表は、バーブ・ハワー国境通行所を経由したシリア国民への人道支援を続けるとともに、バーブ・サラーマ国境通行所、ラーイー村北の通行所の利便性を高め、国連による迅速且つ大規模な支援を可能とていると述べた。

AFP, February 28, 2023、ANHA, February 28, 2023、al-Durar al-Shamiya, February 28, 2023、Reuters, February 28, 2023、SANA, February 28, 2023、SOHR, February 28, 2023などをもとに作成。

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