イスラーム旅団を含む国内で活動する43の反体制武装集団が「シリア・イスラーム軍」の名で統合を発表する一方、自由シリア軍合同司令部中央広報局は声明のなかで国連安保理決議第2118号が定める懲罰の不十分さを理由にこれを拒否(2013年9月29日)

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反体制勢力の動き

『ハヤート』(9月30日付)などによると、国内で活動する43の反体制武装集団が「シリア・イスラーム軍」の名で統合した。

司令官はイスラーム旅団司令官でシリア・イスラーム解放戦線代表のムハンマド・ザフラーン・アッルーシュ氏(1970年、ドゥーマー市生まれ)が務めるという。

参加した武装集団は以下の通り:

1. イスラーム旅団
2. イスラーム軍旅団
3. イスラーム教徒軍旅団
4. サイフ・ハック旅団
5. シャームの鷲旅団
6. 勝利の吉報旅団
7. シャーム征服旅団
8. グータの盾旅団
9. スィッディーク大隊
10. タウヒード・シャーム旅団
11. 首都南部大隊
12. バドル旅団
13. ウマル・ブン・アブドゥルアズィーズ旅団
14. ジュンド・タウヒード旅団
15. サイフ・イスラーム旅団
16. ウマル・ブン・ハッターブ旅団
17. マアーッズ・ブン・ジャバル旅団
18. ファールーク旅団
19. ズバイル・ブン・アウワーム旅団
20. ズィー・ヌラーン旅団
21. アンサール旅団
22. ハムダ旅団
23. 防空旅団
24. 迫撃ロケット旅団
25. 機甲旅団
26. イシャーラ旅団
27. ザーヒル・バイバルス旅団
28. サイフ・ハック旅団
29. カラムーン・コマンド旅団
30. アブドゥッラフマーン旅団
31. ムラービティーン旅団
32. バーディヤ旅団
33. アンサール・スンナ旅団
34. アフル・バイト旅団
35. アターリブ殉教者旅団
36. 海岸戦線旅団
37. アイン・ジャールート旅団
38. アンサール・タウヒード大隊
39. ムジャーヒディーン大隊
40. アビー・タッジャーナの鷹
41. スンナ大隊
42. アンサール大隊
43. バッラー・ブン・アーズィブ大隊

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はニューヨークの国連本部で潘基文事務総長と会談した。

マーティン・ニルスキー国連報道官は、会談でジャルバー議長が、ジュネーブ2会議に連立が代表団を派遣する用意があるとの意思を示したことを明らかにした。

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シリア革命反体制勢力国民連立の駐カタール代表部(大使館)で領事を務めていたウマル・イドリビー氏、会計担当のイヤーブ・フィトヤーン氏、広報担当のウマル・ラクルーク氏らが、ニザール・ヒラーキー駐カタール代表に対して辞表を提出し、連立を脱会した。

駐カタール代表部が在外シリア人のニーズに積極的に応えようとしていないこと、そして不明朗な会計などが脱会の理由。

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自由シリア軍合同司令部中央広報局(ファフド・ミスリー氏)は声明を出し、国連安保理決議第2118号がいかなる懲罰行為もアサド政権に迫っていないと非難、拒否すると発表した。

シリア政府の動き

アサド大統領はイタリアのライ・ニュース24のインタビューに応じ、シリアの化学兵器廃棄を定めた国連安保理決議2118号への対応などについて意見を述べた(http://www.youtube.com/watch?v=dH0SYTiyHaQ&feature=c4-overview )。

SANA, September 29, 2013

SANA, September 29, 2013

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

「シリアはすべての化学兵器の廃棄を求めている国連安保理決議を遵守するだろう…。我々はもちろん遵守する。我々の歴史は、我々が署名したすべての条約を遵守していることを示している」。

「我々はこの決議がかたちを得るのに先立って化学兵器禁止条約に加盟した…。加盟は決議ではなく、我々自身の意志と関係がある。もちろん、我々には、そうしたいという意志があるのだ。なぜなら、2003年に我々は、中東全域における化学兵器の根絶を求める提案を安保理に対して行っているからだ…。(シリアは)条約のすべての条項を実施するし、いかなる留保も行わない」。

(米国とイランの接近に関して)「これはシリアで起きていることによい影響を与えると考えている…。イランはシリアの同盟国であり、我々はイラン人を信頼している。イラン人はシリア人と同様…アメリカ人を信頼してはいない…。イラン人と米国人の接近は単なるジェスチャーではない。具体的に検討された動きであり、イラン・イスラーム革命以来のイラン人の米国人との関係の経験に基づいている…。もし米国人がこの接近に誠実であるなら、シリア危機だけでなく、それ以外のさまざまな問題にも良い結果をもたらすと思う」。

「率直に言うと、欧州諸国は今日、こうした役割(ジュネーブ2会議開催における役割)を果たすだけの能力を持っていない。なぜなら、成功を実現するための様々な要素を持ち合わせていないからだ…。欧州のほとんどの国は10年前にジョージ・ブッシュが政権を握って以降、他国に対して米国のように対処するようになってしまった…。しかしこうした役割には信頼性が必要だ…。どの欧州の国について信頼性があると言うことができるだろう。人道支援と言っておきながら、独立以来最悪の制裁をシリアに科してきた…。必要な基礎が充たされなければ、こうした役割は果たし得ない」。

国内の暴力

ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市内の高校を軍が空爆し、生徒10人を含む16人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カラムーン山地一帯郊外のナースィリーヤ村にある軍の拠点・武器庫(第413武器庫)など複数カ所を反体制武装集団が奇襲し、兵士19人を殺害した。戦闘では反体制武装集団戦闘員複数名も死亡したという。

またムウダミーヤト・シャーム市、ダーライヤー市などに、軍が砲撃を行った。

このほか、ザマルカー町で反体制武装集団が国防隊の民兵14人を要撃、殺害した。

一方、SANA(9月29日付)によると、アッブ農場、マイダアー町、ダーライヤー市、リーマー農場、ナースィリーヤ村、ナバク市、ダイル・アティーヤ市郊外、ハラスター市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ジュッブ・ジャッラーフ村、マスカル・ヒサーン村、ラッフーム村、アナク・ハワー村、ハウラ地方で、軍と反体制武装集団が交戦し、双方に複数の死傷者が出た。

一方、SANA(9月29日付)によると、ヒムス市ワアル地区、ハミーディーヤ地区、ワーディー・サーイフ地区、クスール地区、サビール地区、アクラマ地区、カラム・シャーミー地区、ラスタン湖ダム、タッルドゥー市、サムアリール村、キースィーン村、ラッフーム村、ダール・カビーラ村、ハーリディーヤ村、ガジャル村、タッルカラフ市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(9月29日付)によると、バルザ区、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ファトフ旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(9月29日付)によると、マルジュ・フージャ村、カサーティル村、サーキヤト・カルト村、マルジュ・ザーウィヤ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人運動の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(9月29日付)によると、ダイル・ザウル市のラシュディーヤ地区、シャイフ・ヤースィーン地区、旧空港地区、マリーイーヤ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(9月29日付)によると、アブー・ジャッバール村、クワイリス村、アルバイド村、カスキース村、ラスム・アッブード村、アレッポ旧市街、ジュダイダ地区、ライラムーン地区、ナイラブ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(9月29日付)によると、マアラカ村、カンスフラ村、ラールーズ村、カフル・ウワイド村、ハッルーズ村、アーリヤ村、タルヒーヤ村、バーッラ村、バザーブール村、カフルルーマー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(9月29日付)によると、サマン村、シューマラ村、ブスラー・シャーム市、ダルアー市、ムダウワラ市、アラーリー村、フラーク市、インヒル市、ヒルバト・ティール市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

MTV(9月29日付)によると、ベカーア県バアルベック郡アルサール村のシャアブ検問所で、レバノン軍がシリアに向かおうとしていたトラックから使用できなくなった迫撃砲を押収した。

諸外国の動き

ヨルダンのペトラ通信(9月29日付)は、同国北部ラムサー市のモスクにシリア領内から発射された迫撃砲弾が着弾した事件(26日)に関して、ムハンマド・ムーマニー広報担当国務大臣(内閣報道官)が、アンマンのシリア大使間にヨルダン政府が抗議文を送り、事件の再発を防ぐための措置を要請した、と報じた。

AFP, September 29, 2013、al-Hayat, September 30, 2013、Kull-na Shuraka’, September 29, 2013、Kurdonline, September
29, 2013、MTV, September 29, 2013、Naharnet, September 29, 2013、Reuters,
September 29, 2013、Rihab News, September 29, 2013、SANA, September 29, 2013、UPI,
September 29, 2013などをもとに作成。

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