シリア革命反体制勢力国民連立のジャルバー議長がジュネーブ2会議参加に向けた従来の条件を軟化させる、サアドッディーン大佐が(自由シリア軍)最高軍事評議会と参謀委員会の間の「高度な調整」の存在を暴露(2013年9月22日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は、国連安保理に書簡を送り、ジュネーブ2会議への参加に関して、ジュネーブ大会(2012年)の合意に基づき、すべての当事者が全権を有する移行期政府の発足に同意しなければならないとの立場を表明し、アサド政権退陣を参加の条件としてきたこれまでの主張を軟化させた。

ロイター通信(9月22日付)が報じた。

しかし、ザマーン・ワスル(9月22日付)によると、これに対して連立のバドル・ジャームース事務局長は、ジャルバー議長の発言の一部しか公表されていないと反論、「連立の内規にアサド大統領と現政権の幹部、そしてシリア国民に対する犯罪に関与したすべての者の解任」をめざすと規定されていると強調した。

また政治委員会メンバーのカマール・ルブワーニー氏は、「ジュネーブ2会議に参加したものは、犯罪者との共謀容疑で裁かれる…。またイランの占領、さらにはシリア革命への強奪に関与した容疑で裁かれる」と牽制した。

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自由シリア軍参謀委員会(最高軍事評議会)報道官のカースィム・サアドッディーン大佐はクッルナー・シュラカー(9月22日付)に、参謀委員会が近くイスタンブールで会合を開き、ジュネーブ2会議で審議予定の移行期政府の人事に関して協議することを明らかにした。

サアドッディーン大佐は、このなかで自らが報道官だと名乗る「最高軍事評議会」がサリーム・イドリース参謀長率いる参謀委員会の間に「高度な調整」があると述べ、両組織が一枚岩でないことを暴露した。

またファフド・ミスリー氏が率いる自由シリア軍合同司令部中央広報局については、「存在しない…。自由シリア軍を何ら代表していない」と述べた。

そのうえで移行期政府の時人事については、国防大臣と内務大臣のポストを求める意向を示した。

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クッルナー・シュラカー(9月22日付)は、民主統一党支持者がハサカ県ダルバースィーヤ市の住民に対して、イラク・クルディスタン地域の旗を掲げている家を焼き討ちにすると脅迫し、この旗に変えてTEV-DEMの旗を掲揚するよう求めている、と報じた。

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アフバール・アーン(9月22日付)は、37人の女性ジハード主義者が、ダマスカス郊外県東グータ地方で狙撃訓練などを受け、「女性部隊」を結成したと報じた。

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自由シリア軍最高軍事評議会(参謀委員会)報道官のカースィム・サアドッディーン大佐は、チュニジア女性が「結婚ジハード」(慰安婦)としてシリア国内に送り込まれてきたとの情報に関して「メディアのねつ造」と断じ、「不貞行為」とみなしていると述べた。

クッルナー・シュラカー(9月23日付)が伝えた。

シリア政府の動き

ビシュル・リヤード・ヤーズジー観光大臣は、2011年3月の危機以降、271の観光宿泊施設が営業を停止し、3,300億シリア・ポンドの損失が発生、約300の観光プロジェクトが停止し、25万8,000人が職を失った、と発表した。

『ティシュリーン』(9月22日付)が伝えた。

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オリエント・ネット(9月22日付)は、8月21日のダマスカス郊外県での化学兵器攻撃は、アラウィー派将兵からなる秘密治安部隊の「第450部隊」が行ったと主張した。

同ネットによると、この部隊は化学研究調査センターに所属し、シリアの化学兵器プロジェクトを統括しているのだという。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、ダマスカス・ヒムス国際幹線道路沿いの内務省施設近くで、爆弾を仕掛けた車を爆発させ、軍の兵士多数を死傷させた。

同監視団によると、ダマスカス郊外県でのダーイシュのテロはこれが初めて。

これに対して、軍は、ナバク市、ヤブルード市、および両市郊外など、ダーイシュのテロが発生した地点周辺を空爆、砲撃した。

またダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、バイト・サフム市で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

このほか、ハーン・シャイフ・キャンプでは、軍の拘置所で拘束されていた市民3人が拷問を受け、死亡したという。

一方、SANA(9月22日付)によると、ハラスター市、ドゥーマー市郊外、シャブアー町、フタイタ・トゥルクマーン市、ザバダーニー市およびブルダーン市郊外の山間部、リーマー農場、ダーライヤー市、ナバク市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またジャルマーナー市に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が負傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、ロシア外務省は声明を出し、マズラア地区にあるロシア大使館に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾、うち1発が本舎を直撃し、スタッフ3人が軽傷を負った、と発表した。

外務省声明によると、迫撃砲はマッザ区から発射されたという。

他方、SANA(9月22日付)によると、カーブーン区、ジャウバル区、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またマズラア地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民1人が負傷した。

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アレッポ県では、自由シリア軍の北の嵐旅団が声明を出し、アアザーズ市での停戦合意の第1項(身柄拘束者の釈放)をイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が遵守していないと非難した。

北の嵐旅団によると、ダーイシュは40人の身柄拘束者のうちの9人しか釈放しておらず、「猶予期間を経て、ダーイシュが合意を履行しなければ、彼らは法的裁きを受けねばならない」と警鐘を鳴らした。

なお『ハヤート』(9月23日付)によると、アアザーズ市の大部分はダーイシュが制圧しており、北の嵐旅団は同市西側入り口を維持しているのみで、アブー・イブラーヒーム・シーシャーニーの一団(ダーイシュ)が両者の兵力を引き話すかたちで検問所を設置しているという。

一方、SANA(9月22日付)によると、クワイリス村、ラスム・アッブード村、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、ハーン・アサル村、ワディーヒー村、アッザーン村、ラスム・ウカイリシュ村、ラスム・シャイフ村、バーブ市・ナスルッラー市街道、ダイル・ハーフィル市・タイバト・イマーム市街道、カブターン・ジャバル村、アイティーン市、ハーン・トゥーマーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、旧市街、バニー・ザイド地区、ブスターン・カスル地区、スッカリー地区、バーブ・ハディード地区、シャイフ・サイード地区、ジュダイダ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、『ハヤート』(9月23日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がバーブ・ハワー国境検問所から約10キロの地点に位置するハザーヌー町を襲撃、「自由シリア軍」と交戦した。

ザマーン・ワスル(9月22日付)は、この戦闘を受けて、トルコの当局が、バーブ・ハワー国境通行所に通じるトルコ両側の通行所も閉鎖した、と報じた。

一方、SANA(9月22日付)によると、タッル・サラムー村、サルジャ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、『ハヤート』(9月23日付)によると、シャッダーディー市郊外で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がシャームの民のヌスラ戦線の拠点を襲撃し、戦線の武器を奪った。

また、民主統一党人民防衛隊はラアス・アイン市郊外のジャーファー村で、武器を輸送していたダーイシュとヌスラ戦線の車輌2台を攻撃、破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市ラサーファ地区で軍と反体制武装集団が交戦、またハミーディーヤ地区に地対地ミサイルが着弾した。

一方、SANA(9月22日付)によると、ダイル・ザウル市ジュバイラ地区で、軍が反体制武装集団の作ったトンネルを破壊したほか、旧空港地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(9月22日付)によると、ヒムス市カラービース地区、クスール地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ガジャル村、ザアフラーナ村、カフルナーン村、ガースィビーヤ村、ダール・カビーラ村、キースィーン村、タッルドゥー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(9月22日付)によると、シャイフ・サアド村、ナワー市、フラーク市、西ムライハ村、ガディール・ブスターン市、ザアルーラ市、アトマーン村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(9月22日付)によると、ラフィード市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ロシアのChannel 1(9月22日)に、シリアの化学兵器廃棄をめぐる問題に関して「米国は、ロシアが国連憲章第7章に基づく決議を支持しなければ、化学兵器禁止機関での活動を止めるとして我々を揺すり始めた…。西側諸国はシリアの体制を転換するという戦略目標によって盲目になってしまっている」と批判した。

また「西側諸国は、リビアで一度裏切ったということを認めたがらない…。イラクでも裏切り、事態を放置した…。彼らの唯一の目的とは優位を確保することだ」と述べた。

さらに、アサド政権が倒れたら「シリアが再び世俗国家になることはなかろう」としたうえで、反体制武装集団の「3分の2から4分の3はジハード主義者だ」との見方を示した。

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ロバート・フィスク記者は『インディペンデント』(9月22日付)で、8月21日のダマスカス郊外県での化学兵器攻撃に使用された毒ガスが、ロシアからシリア軍に供与されたものではないとの「証拠」をロシア側が握っているとの噂がシリア国内で流れていることを明らかにした。

フィスク記者によると、この毒ガスはソ連時代に製造され、アラブ諸国のなかではイエメン、エジプト、リビアにしか供与されていなかったという。

http://www.independent.co.uk/voices/comment/gas-missiles-were-not-sold-to-syria-8831792.html

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ヨルダンのシリア人避難民管理局のウィダーフ・ハンムード局長はAFP(9月22日付)に「多くのシリア人が危機発生以降、教までに自発的に帰国し、その数は91,000人に達する」と述べた。

またハンムード局長によると、ヨルダン国内のシリア人避難民の総数は54万3,029人で、うち12万1,130人がザアタリー・キャンプに収容されているという。

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ドイツ内務省の連邦憲法擁護庁(BfV)はドイツ紙に対し、約170人のイスラーム過激派がドイツからシリアに潜入し、その一部が戦闘に参加していることを明らかにした。

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リハーブ・ニュース(9月21日付)は、イラクのペシュメルガが、シリア領内にカラシニコフ銃40丁を密輸しようとしていた男性2人を拘束、銃を押収したと報じた。

AFP, September 22, 2013、Akhbar al-An, September 22, 2013、al-Hayat, September 23, 2013、The Independent, September 22, 2013、Kull-na Shuraka’, September 22, 2013, September 23,
2013、Kurdonline, September 22, 2013、Naharnet, September 22, 2013、Orient
Net, September 22, 2013、Reuters, September 22, 2013、Rihab News, September
22, 2013、SANA, September 22, 2013、Tishrin, September 22, 2013、UPI, September 22, 2013、Zaman al-Wasl, September 22, 2013などをもとに作成。

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