バアス党シリア地域指導部が与野党代表らとの会合のなかで軍事攻撃への対応などについて協議するなか、EU加盟28カ国はリトアニアで開かれた外相会合のなかで「国連を通じた紛争解決の必要性」を確認(2013年9月7日)

Contents

反体制勢力の動き

SANA革命通信(9月7日付)は、自由シリア軍合同司令部報道官のカースィム・サアドッディーン大佐が「西側諸国が行うであろう軍事攻撃発生に合わせて、シリアの政権の戦略拠点複数カ所に対して大規模な軍事作戦を行うための「ゼロ時」(作戦開始)を発表する」と述べたと報じた。

**

クッルナー・シュラカー(9月7日付)は、シリア・クルド国民評議会が2日にわたる会合で、シリア革命反体制勢力国民連立への参加を承認したと報じた。

参加承認の採決では、シリア・クルド左派党が棄権した。

評議会はこれと合わせて、加盟組織の参加・脱会、民主統一党が定期した自治構想、クルド最高会議の活性化などについても審議した。

このうち加盟組織の参加・脱会に関しては、シリア・クルド・アーザーディー党の脱会を確認、またシリア・クルド民主党(パールティー)ナスルッディーン・イブラーヒーム派は民主的変革諸勢力国民調整委員会への残留を理由に会合への参加が拒否された。

**

反体制活動家のアブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領は仏雑誌『ヌヴェル・オブザーヴァー』(9月7日付)に、「シリアに行われる軍事攻撃は大多数のシリア人によって求められているとみなすことができる」としたうえで、アサド政権が化学兵器を含むすべての武器を国民に向けようとしていると指摘、軍事攻撃が政権打倒をめざすべきだと述べた。

シリア政府の動き

バアス党シリア地域指導部は、与野党代表らとの合同会合を開き、米国が準備している軍事攻撃への対応などについて協議、政治的・イデオロギー的な対立を越えて攻撃に対応することなどを確認した。

Champress, September 7, 2013

Champress, September 7, 2013

またシリア地域指導部は閉会時に、同日から無期限で合同会合を開会状態にすると発表した。

合同会合には、野党の団結党、民主前衛党、アラブ民主団結党、祖国シリア党、国民成長党、シリア民主党、非公認組織の人民党の代表が参加した。

シリア国民青年公正成長党、シリア国民青年党の代表はシリア国外に滞在中のため欠席した。

SANA(9月7日付)が報じた。

**

ダマスカス県では、1,000人を越えるキリスト教徒住民が、ローマ法王フランシスコの呼びかけをうけるかたちで県内の教会で、シリアに対する軍事攻撃を拒否するための礼拝と断食を行った。

礼拝はギリシャ・カトリック教会アンチオキア(アンタキア)総大司教のグレゴリウス3世ラッハームによって指導された。

AFP(9月7日付)が報じた。

またSANA(9月7日付)によると、ダルアー県ダルアー市のギリシャ正教会でも同様のミサが行われた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍がムウダミーヤト・シャーム市に対して地対地ミサイルなどで激しい攻撃を加え、反体制武装集団と交戦した。

Champress, September 7, 2013

Champress, September 7, 2013

また軍はキスワ市とムカイラビーヤ市の間に位置する農園を砲撃し、民間人16人と戦闘員14人が死亡した。

このほか、ナブク市および同市北部、アルバイン市、ハラスター市なども軍の砲撃を受けた。

さらに【シリア情勢201397日国内の暴力】http://www.ac.auone-net.jp/~alsham/2013_09/07.html#03#シリア市では、反体制武装集団が集結していたサフィール・ホテルがある丘を軍が迫撃、また軍と人民諸委員会が反体制武装集団と同市周辺で激しく交戦、同市入口の検問所を奪還した。

一方、SANA(9月7日付)によると、軍がアイン・ティーナ村街道方面から、マアルーラー市に侵入したシャームの民のヌスラ戦線を掃討するため、同市に向かって進軍し、同市周辺、サフィール・ホテルなどで交戦し、外国人戦闘員らを殺傷、複数の拠点を破壊した。

またアルバイン市、ザマルカー町、ドゥーマー市郊外、ザマーニーヤ市、カースィミーヤ市、フジャイラ村、ダーライヤー市、ルハイバ市、ハーン・シャイフ・キャンプ、ダルーシャー村、マガッル・ミール市、クーウ・ズィヤート市、フーシュ・アラブ村、シャフター・バルター村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、キスワ市近郊のムカイラビーヤ農園では、軍が反体制武装集団の120ミリ迫撃砲を破壊、複数の戦闘員を殺害した。

**

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、カーブーン区、バルザ区などで、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(9月7日付)によると、ジャウバル区で、軍と反体制武装集団が交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカッバース地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民1人が死亡した。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市、西ガーリヤ村、ヌアイマ村、シャイフ・マスキーン市などで、軍と反体制武装集団が交戦し、軍の空爆・砲撃を受けた。

一方、SANA(9月7日付)によると、ダルアー市、ムザイリーブ町、フラーク市、タファス市、アイン・ズィクル村、ナーフィア村、シャジャラ町、サフム・ジャウラーン村、タスィール町、バサーラ市、マクラズ市で、軍が反体制武装集団と交戦し、サウジアラビア人、ヨルダン人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ中央刑務所周辺などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

またアレッポ市では、アシュラフィーヤ地区、シャイフ・マクスード地区で、民主統一党人民防衛隊が、クルド人部隊などを含む反体制武装集団と交戦した。

さらに同市のブスターン・カスル地区に設置されている通行所で、シャリーア委員会の戦闘員と反体制武装集団が交戦、また同通行所に軍が砲撃を加え、複数の市民が負傷した。

このほか、マサーキン・ハナーヌー地区でも即席爆弾が爆発した。

一方、SANA(9月7日付)によると、カフルダーイル村、アナダーン市、ライヤーン村、ブラート村、クワイリス村、ダイル・ハーフィル市、バイス村で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市ではアカバ地区、バニー・ザイド地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブサイラ市で武装集団が市民の住居に向けて発砲し、5人が死亡した。

一方、SANA(9月7日付)によると、反体制武装集団がムッラート村の石油パイプラインを破壊し、大量の石油がユーフラテス川に流出した。

**

ラタキア県では、SANA(9月7日付)によると、カルト村、マルジュ・フージャ村、シャフルーラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジアラビア人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

イドリブ県では、SANA(9月7日付)によると、タフタナーズ市、ビンニシュ市、サルミーン市、サルジャ村、バザーブール村、マールティーン市、マアッル・ブライト市、マンタフ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、サラーキブ自由人大隊、シャームの鷹旅団、シャームの民のヌスラ戦線、ダーウード旅団、北部自由人旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ヒムス県では、SANA(9月7日付)によると、ラスタン市、アイン・フサイン市、ヒムス市ワルシャ地区、カラービース地区、ジャウラト・シヤーフ地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ハマー県では、SANA(9月7日付)によると、サラミーヤ市郊外のハタムルー村、カフルヌブーダ町、ハルシュ・カサービーヤ市、スカイラビーヤ市郊外のウワイナ村で、軍が反体制武装集団を追撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

NNA(9月7日付)などによると、レバノン各地の教会で、アメリカが準備するシリアへの軍事攻撃に反対するためのミサと断食が行われ、レバノン山地県ハリーサー村にある聖母大聖堂では、マロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教が礼拝を指導した。

Naharnet, September 7, 2013

Naharnet, September 7, 2013

参加した信徒らはまた、シリアの反体制武装集団が侵入したダマスカス郊外県のマアルーラー市の住民と歴史的遺産保護のために祈りを捧げた。

**

MTV(9月7日付)などによると、ベイルート県の米大使館前で、前日に引き続き、シリアへの軍事攻撃に反対する市民らが抗議デモを行った。

諸外国の動き

EU加盟28カ国は、リトアニアの首都ビリニュスで6~7日の2日にわたって外相会合を開き、シリア情勢への対応などについて協議し、「国連を通じた紛争解決の必要性」を確認・合意した。

米国が準備しているシリアへの軍事攻撃に関しては、国連調査団の「調査結果を待つべきだ」との認識で一致した。

会合後の記者会見で、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、EU加盟国はアサド政権が化学兵器を使用した「有力な証拠がある」としたうえで、「強い対応が必要」との立場でまとまったと述べた。

なお会合には、ジョン・ケリー米国務長官も出席し、軍事行動への理解を求めた。

**

ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣は、ロシア・サンクトペテルブルグでのG20サミット時に米仏など11カ国が発表した共同声明にドイツも署名する考えを示した。

**

ロイター通信(9月7日付)によると、ロシア海軍のフリゲート艦1隻が9月半ばに、また戦艦およびミサイル艦2隻が同月末にシリア沖の地中海東部海域に向かうだろうと報じた。

**

PFLP-GCは声明を出し、ダマスカス県ヤルムーク区およびダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町での反体制武装集団との戦闘で、パレスチナ人の人民諸委員会の戦闘員14人が死亡したと発表した。

AFP, September 7, 2013、al-Hayat, September 8, 2013、Kull-na Shuraka’, September 7, 2013、Kurdonline, September
7, 2013、MTV, September 7, 2013、Naharnet, September 7, 2013、NNA, September
7, 2013、Reuters, September 7, 2013、SANA, September 7, 2013、UPI, September
7, 2013などをもとに作成。

写真はChampress, September 7, 2013、Naharnet, September 7, 2013。

(C)青山弘之 All rights reserved.