イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年7月6日)

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シリア国内の動き

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線の一大拠点シュハイル市を制圧したダーイシュ(イスラーム国)は、住民約3万人以上を市外に強制移住させた。

ダーイシュはまたシュハイル市に先立って制圧したヒシャーム村の住民約1万5,500人と、タービヤ村の住民約1万5,000人も追放し、帰宅を認めていない。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)によって占拠されているシャッダーディー市一帯を空爆した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、バーブ市のマルトゥー広場で、ダーイシュ(イスラーム国)が、「ヌサイリー体制(アサド政権のこと)と協力」した罪で男性2人を公開処刑した。

またジャラーブルス市郊外のズール・マガール村、バイヤーダ村、ズィヤーラ村の奪還をめざす西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊は、ダーイシュと交戦した。

一方、ARA News(7月6日付)によると、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊は、ダーイシュが占拠していたジュッブ・ファルジュ村、ハッラーブ・アトゥー村を奪還した。

このほか、シリア人権監視団によると、アフタリーン市郊外では、ジハード主義武装集団がダーイシュ戦闘員2人を拘束した。

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シリア人権監視団によると、ワルド油田を除くダイル・ザウル県内の油田を掌握したダーイシュ(イスラーム国)は、原油の販売を開始した。

ダーイシュは業者に1バレルあたり12ドル(2,000シリア・ポンド)で原油を販売するとともに、業者に対しては「シリア国民の人道的危機を考慮」し、ダーイシュ制圧地区で1バレルあたり18ドル(3,000ポンド)で流通させるよう求めているという

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シリア・ムスリム同胞団のイスラーム法源解釈委員会は声明を出し、ダーイシュ(イスラーム国)によるカリフ制樹立宣言に関して、「無効であり、シャリーアに則したものとはみなし得ない」と批判した。

同胞団はまた、ダーイシュについては、「イスラーム教徒、民革命家さらには自由シリア軍の英雄への背教宣告」によって、無実の人々を殺害したと断罪し、「これらの者に忠誠」を誓うことはないと強調した。

そのうえで「カリフとは、弱肉強食でも流血でもなく、至高なるアッラーの法に根ざした政治・宗教職」だと主張、イスラーム国のカリフ制が「独裁者を別の独裁者にとりかえること」だと非難した。

イラク国内の戦況

キルクーク市に駐留するイラク・クルディスタン地域のペシュメルガ第1旅団司令官のシールクー・ファーティフ・シャワーニー准将は、ダーイシュ(イスラーム国)の侵入を防ぐため、キルクーク県南部に全長50キロの土塁を建設すると発表した。

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イラク軍総司令部報道官のカースィム・アター大将は記者会見で、サラーフッディーン県バイジ製油所一帯、アンバール県、バービル県ジュルフ・サフル地方、ニナワ県タッルアファル郡などでのイラク軍による掃討作戦で、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員82人を殺害、車輌18台を破壊したと発表した。

AFP, July 6, 2014、AP, July 6, 2014、ARA News, July 6, 2014、Champress, July 6, 2014、al-Hayat, July 7, 2014、Kull-na Shuraka’, July 6, 2014、al-Mada Press, July 6, 2014、Naharnet, July 6, 2014、NNA, July 6, 2014、Reuters, July 6, 2014、SANA, July 6, 2014、UPI, July 6, 2014などをもとに作成。

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