シリア革命反体制勢力国民連立総合委員会が政治委員会のメンバー計19人を選出するなか、同委員会のジャルバー新議長は反体制勢力の劣勢を理由にアサド政権との対話を拒否、ジュネーブ2に参加しない意思を示す(2013年7月7日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・アースィー・ジャルバー新議長は、自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長と会談した。

『ハヤート』(7月8日付)などによると、会談は「シリア国内」で行われたとのことだが、詳細な場所は明らかにされなかった。

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イスタンブールで開催中のシリア革命反体制勢力国民連立総合委員会は、選挙に政治委員会の定数を11人から19人に8増させ、そのメンバーを選出した。

政治委員会には、議長、副議長(2人)、事務局長、そして15人のメンバーから構成される。

新政治委員会メンバーの氏名は以下の通り:

1. アフマド・アースィー・ジャルバー議長(シリア民主主義者連合、民主ブロック)
2. ムハンマド・ファールーク・タイフール副議長(シリア・ムスリム同胞団)
3. スハイル・アタースィー副議長
4. サーリム・ムスラト
5. バドル・ジャームース事務局長
6. ルワイユ・サーフィー(シリア国民評議会)
7. アブドゥルバースィト・スィーダー(シリア国民評議会前事務局長)
8. ムワッファク・ニールビーヤ(市民権潮流)
9. ミシェル・キールー(シリア民主主義者連合代表、民主ブロック)
10. カマール・ルブワーニー(シリア民主主義者連合)
11. ハーディー・バフラ
12. アナス・アブダ
13. ファーイズ・サーラ(シリア民主主義者連合)
14. ムナー・ムスタファー
15. ザカリヤー・サッカール
16. ナズィール・ハキーム
17. アクラム・アッサーフ
18. ムンズィル・マーフース(駐フランス代表)
19. アフマド・ラマダーン(シリア国民評議会)

また総合委員会は、ガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班の進退をめぐって集中審議を行った。

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シリア革命反体制勢力国民連立のズィヤード・アブー・ハムダーンは『グムフーリーヤ』(7月7日付)に、「ムハンマド・ムルスィー大統領の退陣はシリアの同胞団にも影響を及ぼすだろう」と述べた。

またアブー・ハムダーンは、カタールのハマド・ビン・ジャースィム首長退位によって、「シリア・ファイルがドーハからリヤードの手に移ったかのようだ」と述べ、タミーム首長のもとでのカタールの外交政策が「慎重になり、これまでのように強硬ではなくなった」と指摘した。

さらに「言われている通り、シリア国民連立議長への(アフマド・アースィー)ジャルバーの就任をサウジは支持していた。しかしこれは悪いことではない。なぜなら、サウジアラビアは地域において影響力があるからだ…。革命の目標の達成と政権交代のための支援なら、サウジによるものであれ、カタールによるものであれ、我々は歓迎する」と付言した。

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シリア・ムスリム同胞団はツイッター(7月7日付)を通じて声明を出し、米国およびEUに対して、自由シリア軍への武器供与を求めた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・アースィー・ジャルバー新議長は、ロイター通信(7月7日付)に対して「この状況下でジュネーブに行くことは不可能だ。ジュネーブに行くことを検討するのなら、現地で強者とならねばならない。しかし我々の現状はというと、弱者だ」と述べ、反体制勢力の劣勢を理由にアサド政権との対話を拒否した。

また自身を後援するサウジアラビアがカタールに代わって反体制勢力支援を主導するようになっていることに関して「我々はこの方向に向かっている。事態は以前より良くなっている。これらの武器(サウジアラビアからの武器)はシリアにまもなく届くだろう」と述べた。

そのうえで「シリア国民支援は軍事的側面と人道的側面によって保障される。それが私の優先事項だ。先端兵器と中距離兵器を自由シリア軍と解放区に供与するために活動する」と強調し、ラマダーン月(7月9日~)であってもアサド政権との停戦に応じる意思はないと述べた。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ハミーディーヤ地区などを軍が砲撃し、両地区などで反体制武装集団と交戦した。

シリア人権監視団によると、軍の攻撃により、ヒムス市ハーリディーヤ地区の60%から70%が全壊、ないしは半壊したという。

一方、SANA(7月7日付)によると、タドムル市郊外のタイバ村、ヒムス市ハーリディーヤ地区、バーブ・フード地区、カラービース地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またヒムス市郊外で旅客バスが反体制武装集団によって襲撃され、市民1人が死亡、複数が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市などに軍が砲撃を加え、ダーライヤー市、フジャイラ村、ハジャル・アスワド市などで軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月7日付)によると、軍がフジャイラ村ウカイラ地区で反体制武装集団の浄化を完了、同地区の治安を回復した。

またザマルカー町、アルバイン市、ハラスター市、バハーリーヤ市、ダイル・サルマーン市、ズィヤービーヤ町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、カーブーン区、ヤルムーク区が軍の砲撃・空爆を受け、バルザ区では軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月7日付)によると、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カンスフラ村、ブサンクール村などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月7日付)によると、シュグル市、ジャーヌーディーヤ町、スッカリーヤ町、アルバイーン山、ラーミー村、ジャウバート市、ナフリーヤ市、アーファス市、ダイル・サンバル村、マアッラト・ニウマーン市、イフスィム町、マガーラ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市マイサルーン地区に迫撃砲弾複数発が着弾、またサブウ・バフラート地区の学校で爆発が発生した。

またザフラー町などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、シリア人権監視団は、アレッポ中央刑務所を包囲する軍と、イラク・シャーム・イスラーム国、シャーム自由人大隊が交戦し、収監者6人が死亡したと発表した。

同監視団によると、4月以来軍によって包囲されている刑務所の人道衛生状況は劣悪を極め、約120人いるとされる収監者らはネコや鳥を食べて飢えをしのいでいる、という。

他方、SANA(7月7日付)によると、アレッポ中央刑務所にマーリア・イスラーム戦線を名のる武装集団が突撃を試みたが、軍によって撃退された。

またヌッブル市、ザフラー町では、住民の協力のもと、軍が反体制武装集団を撃退し、チェチェン人を含む複数の戦闘員を殺害した。

さらにアレッポ市では、シャイフ・ヒドル地区、スライマーニーヤ地区、シャイフ・マクスード地区、サラーフッディーン地区、サーリヒーン地区、アシュラフィーヤ地区、マンスーラ村、カフルダーイル村、ダフラ・カルア村、ヒルバト・アンダーン村、マンナグ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・ハミース市を軍が空爆した。

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ハマー県では、SANA(7月7日付)によると、カフルヌブーダ町、カルアト・マディーク町、ハウワーシュ丘、カサービーヤ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線などの戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

イラク・シャーム・イスラーム国は声明を出し、エジプトでの政変に関して「イスラーム国は、権利の獲得が力によってのみなされることを改めて知り、投票箱ではなく弾薬庫を選んだ」と発表した。

また「不正の撤廃と変革は、剣によってのみなされる。ホテル(ファナーディク)ではなく、塹壕(ハナーディク)において交渉することを強く主張する」と付言した。

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米国務省は、シリア革命反体制勢力国民連立総合委員会によるアフマド・アースィー・ジャルバー新議長選出を受けて声明を出し、新議長との協力の意思を示すとともに、反体制勢力に統合を呼びかけた。

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フランス外務省報道官は、シリア革命反体制勢力国民連立によるアフマド・アースィー・ジャルバー新議長選出を歓迎し、「自由で民主的なシリア建設のための政治的解決にいたるため、連立と協力を続ける」と表明した。

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『ハヤート』(7月8日付)は、カタール外務省高官の話として、シリア革命反体制勢力国民連立の議長らの選出を「民主的方法」を評価し、新議長との協力の意思を示すとともに、新指導のもとにすべての反体制勢力が結集するよう呼びかけた、と報じた。

AFP, July 7, 2013、al-Hayat, July 8, 2013、al-Jumhuriya, July 7, 2013、Kull-na Shuraka’, July 7, 2013, July 8, 2013、Kurdonline,
July 7, 2013、Naharnet, July 7, 2013、Reuters, July 7, 2013、SANA, July 7,
2013、UPI, July 7, 2013などをもとに作成。

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