青山弘之「過激派組織「イスラム国」の実態と欧米の対応」
講演要点
今週は青山弘之氏の<『イスラム国』と欧米>に関するお話です。青山氏はアラブ問題研究の専門家。
イスラム過激派組織「イスラム国」の実態に迫るに当たってシリアとイラクの政治情勢さらには欧米との複雑な関係を浮き彫りにした。
1979年のイラン革命に始まり、湾岸戦争、イラク戦争などの経緯を振り返り、同時に欧米との関係などを解説し「イスラム国」結成の背景や実態を明らかにした。
「イスラム国」はアルカイーダ系の組織で、イラク・アルカイーダが2006年に結成したイラク・イスラム国(ISI)が母体という。
従来のアルカイーダがイデオロギー重視であるのに対して「イスラム国」はこれを非現実的とみて敵視し転覆を狙う。
主にシリアで勢力を拡大しアサド政権に対抗する。
戦闘員は2~3万人とされ、その4分の1から5分の1が外国人で約80カ国から来ているとみる。
「イラクとシリアの緩衝地帯など両国の実効支配が及ばない地域で主に活動している」という。
グループは残忍性、恐怖政治、宗教に厳格で盲目的に信じるなどの特徴を持つ。
これに対する欧米の基本的な戦略は「強いシリア」「強いイラク」化をけん制する意味で
イスラム国に対応してきた面もある。
つまり「イスラム国」を利用してシリアのアサド政権やイラク政権の強化にブレーキをかける魂胆もあるという。
ただ「イスラム国」が石油資源などを有するイラクに侵入したことに危機感を持ち「米国中心に欧米や中東諸国がイスラム国の空爆を断行した」との背景を説明した。
青山弘之(あおやま・ひろゆき) プロフィール
1968年生まれ。東京外国語大学卒、一橋大学大学院修士課程修了。在ダマスカスIFPO(フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員、東京外国語大学准教授を経て2013年4月から現在の東京外国語大学総合国際学研究院教授。
専門は現代シリア・レバノン政治。著書は「混迷するシリア:歴史と政治構造から読み解く」(岩波書店)、「シリア・アラブの顛末記」など。
http://www.rekijitsukai.co.jp/koushi_a/2014/aoyama-hiroyuki14-11-02.html