ダマスカス郊外県ハーン・シャイフ地方で反体制武装集団が共和国護衛隊と第4機甲師団の駐留する兵舎を攻撃、一方米国務長官はアサド大統領と反体制勢力にジュネーブ声明に従って対話のテーブルに付くことを求める(2013年3月13日)

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国内の動き

『ハヤート』(3月14日付)は、ダイル・ザウル県のマヤーディーン市で、シャームの民のヌスラ戦線の退去を求める市民のデモが3日目を迎えたと報じた。

シリア人権監視団によると、デモは、シャームの民のヌスラ戦線のシャリーア委員会警察部隊の車列がダイル・ザウル市東部郊外で行軍を行ったことを受けて発生したという。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、ロイター通信(3月13日付)が、複数の反体制消息筋の話として、ハーン・シャイフ地方で反体制武装集団が共和国護衛隊と第4機甲師団の駐留する兵舎を攻撃した、と報じた。

同消息筋によると、この攻撃に先立って、反体制武装集団は、11日に同地方のミサイル部隊を攻撃し、30人の兵士を殺害したのだという。

この報道を受け、フェイスブックには、反体制武装集団が軍兵士や捕獲した旧式ロケット弾、装備の映像をアップし、フルカーン旅団、アブー・ダジャーナ大隊(使徒末裔大隊)などが防空拠点を制圧したと発表した。

『ハヤート』(3月14日付)によると、ハーン・シャイフはダマスカス県とゴラン高原を結ぶ地点に位置し、反体制武装集団はゴラン高原の兵力引き離し地域への進軍を続けており、軍は兵舎周辺に結集している反体制武装集団を撃退するため、迫撃砲などで応戦している、という。

一方、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、アフマド・シハーダ駐シリアEU代表部顧問がダマスカス郊外県ダーライヤー市郊外で迫撃砲弾を受けて死亡したと発表し、哀悼の意を表した。

他方、クッルナー・シュラカー(3月13日付)が、ハラスター市の長距離旅客バス(ボールマン)・ターミナルが反体制武装集団によって占拠されたと報じ、その写真を公開した。

同報道によると、長距離旅客バスは現在、アッバースィーイーン立体交差点から発着しているという。

このほか、SANA(3月13日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市および郊外、シャブアー町、アドラー市、フサイニーヤ町、ズィヤービーヤ町などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ファトフ大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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『ハヤート』(3月14日付)は、複数の反体制消息筋の話として、自由シリア軍の戦闘員がハサカ県のヤアルビーヤ国境通行所一帯から撤退したが、同地域にはシャームの民のヌスラ戦線の戦闘員が残留していると報じた。

同消息筋によると、自由シリア軍とシャームの民のヌスラ戦線によるハサカ県の他の都市・農村での調整は継続しているという。

一方、クッルナー・シュラカー(3月13日付)によると、タッル・ブラーク町で軍と反体制武装集団が交戦した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区に対して軍が空爆を行った。

また対レバノン国境のジュースィーヤ村では、レバノンから潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退、戦闘員4人が死亡した。

一方、SANA(3月13日付)によると、ヒムス市バーブ・アムル地区、ラスタン市郊外、タドムル市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャーム自由人大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またレバノン領からの潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。

このほか、クッルナー・シュラカー(3月13日付)は、フェイスブックなどの情報として、イヤード・スライマーン人民議会議員がヒムス市郊外で反体制武装集団に拉致された、と報じた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ヒーシュ村周辺で、軍と反体制武装集団が交戦した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、マンナグ航空基地周辺に対して軍が空爆を加えた。

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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、SANA(3月13日付)によると、ビフティヤール地区の住宅地に反体制武装集団が発射した迫撃砲複数発が着弾し、市民3人が死亡、50人以上が負傷した。

またハジャル・アスワド市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(3月13日付)によると、ドゥワイリーナ市、マンナグ村、アルカミーヤ村、カナブ市、アアザーズ市、ハイヤーン町、ジブリーン市、タッル・ハースィル村、ムスリミーヤ村、ヒーラーン村、カフルナーハー村、アウラム・スグラー村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、マサーキン・ハナーヌー地区、バニー・ザイド地区、ジャズマーティー地区、カルム・マイサル地区、サーフール地区、旧市街などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(3月13日付)によると、サルミーン市郊外、アリーハー市、ナイラブ村、ナフリーヤ地方、マクバラ地方、ラーミー村、ダイル・サンバル村、フリーカ市、ビンニシュ市、トゥウーム村、マアッラトミスリーン市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(3月13日付)によると、グナイミーヤ村、カサーティル村、ハーン・ジャウズ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(3月13日付)によると、ダイル・ザウル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバー(チュニジア人)を含む複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(3月13日付)によると、ハルファーヤー市近くで軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、4人の戦闘員を殺害した。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はRT(3月13日付)に対して、シリア政府と反体制勢力が交渉のテーブルに着く必要を強調したジョン・ケリー米国務長官の発言(13日)に関して、「単に口が滑ったのではなく、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表が、紛争の政治的解決に向けた米・ロシアのコンセンサスに尽力した結果」としたうえで、この新方針により政権および反体制武装集団双方の暴力が軽減し、政治解決、平和的政権移譲が促されるだろうと語った。

またシリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による対話イニシアチブについても「非常に重要で前向きだ」としつつ、こうした姿勢が、外国の軍事介入に頼ろうとするシリア革命反体制勢力国民連立、シリア国民評議会のなかでは充分に浸透していないと評価した。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、シリアでの紛争が3年目を迎える3月15日(金曜日)から1週間を、「シリア各地で、シリア国民と祝福された革命を救済するため」の連帯週間と定め、祝典や行進の実施を呼びかけた。

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トルコのガズィアンテップ市で、在外反体制活動家が発足したアレッポ県評議会の議長選挙が行われ、ムハンマド・ナアナーウが議長に選出された。

諸外国の動き

ジョン・ケリー米国務長官は「我々は、アサドと反体制勢力が、ジュネーブ声明(2012年6月)に従って、移行期政府樹立のために(対話の)テーブルに付いて欲しい」と述べた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、訪問先のロンドンで記者会見を開き、シリアの反体制武装集団への武器供与は国際法に抵触している、と厳しく非難した。

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ロシアの非常事態省報道官は、ロシア人76人、ロシア周辺国の27人が、人道支援物資輸送のためにラタキア県のバースィル・アサド国際空港を訪れていた航空機に乗って、シリアを出国したと発表した。

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ヨルダンのアブドゥッラー・ナスール首相は、ヨルダンのシリア人避難民の数が100万人を超えたと発表した。

AFP, March 13, 2013、Akhbar al-Sharq, March 13, 2013、al-Hayat, March 14, 2013、Kull-na Shuraka’, March 13, 2013、al-Kurdiya News, March 13, 2013、Naharnet, March 13, 2013、Reuters, March 13, 2013、SANA, March 13, 2013などをもとに作成。

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