イドリブ市の支配をめぐってファトフ軍とシリア政府が水面下で綱引き(2015年4月6日)

『ハヤート』(4月6日付)によると、ファトフ軍作戦司令室に参加するジハード主義武装集団の代表らで構成されるイドリブ市統治評議会は、市内の行政をめぐってシリア政府と「水面下の綱引き」を繰り広げていると伝えた。

ファトフ軍は、イドリブ市制圧後、作戦司令室のもとに司法警察委員会、民政福祉委員会、治安委員会を設置し、同市の実効支配をめざしている。

そのうちの治安委員会は、3日付で布告を出し、イドリブ市内の行政機関で働いていた職員らに対して「自らの手を血で染めた者以外」は職場から追放しないとの姿勢を示すとともに、水道、電気、衛生、製パン、製粉部門の職員に対して、イドリブ市の市民生活の正常化に向けて協力するよう呼びかけている。

Kull-na Shuraka', April 5, 2015

Kull-na Shuraka’, April 5, 2015

Kull-na Shuraka', April 5, 2015

Kull-na Shuraka’, April 5, 2015

これに対して、シリア政府は、イドリブ市内で勤務していたすべての公務員に対して職務を放棄し、他県で職務を継続するよう」呼びかけ、これと並行するかたちで、シリア軍が市内に対して激しい空爆を行っているという。

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また、トルコのハタイ県レインヒル市では、ファトハ軍の討議評議会代表やシリア革命反体制勢力国民連立アフマド・トゥウマ暫定内閣の代表らが、イドリブ県で活動しているという活動家の呼びかけに応じるかたちで、イドリブ市の行政に関する会合を開いた。

だが『ハヤート』によると、会議に参加した活動家からは、「イドリブ市解放の成果を横取りしようとしている」との批判がシリア革命反体制勢力国民連立の代表らに向けられたという。

Kull-na Shuraka', April 5, 2015

Kull-na Shuraka’, April 5, 2015

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一方、シリア人権監視団によると、シリア軍がイドリブ県のイドリブ市内各所、マストゥーマ軍事基地一帯、クマイナース村、ビンニシュ氏、サラーキブ市、マルイヤーン村、バシーリーヤ村などを激しく空爆・砲撃した。

またマストゥーマ軍事基地一帯では、シリア軍、国防隊が、シャーム自由人イスラーム運動、ジュンド・アクサー旅団、シャームの民のヌスラ戦線などジハード主義武装集団と交戦した。

これに対して、SANA(4月5日付)は、イドリブ市内、同市南部、マジュダリヤー村、ナイラブ村、サラーキブ市南部、クーリーン村南部、ナスィービーン市南部、マアッルバリート村、カフルナジュド村西部、ビンニシュ市、サルキーン市、アブー・ズフール町、タッル・サラムー村、ハミーディーヤ村、サルミーン市、タフタナーズ市、ジャアキーヤ村、タマーニア町、フバイト村、ナリラヤー村、ファイルーン村、クマイナース村で、「テロリスト」200人以上を殺傷、車輌などを破壊したと伝えた。

AFP, April 5, 2015、AP, April 5, 2015、ARA News, April 5, 2015、Champress, April 5, 2015、al-Hayat, April 6, 2015、Iraqi News, April 5, 2015、Kull-na Shuraka’, April 5, 2015、al-Mada Press, April 5, 2015、Naharnet, April 5, 2015、NNA, April 5, 2015、Reuters, April 5, 2015、SANA, April 5, 2015、UPI, April 5, 2015などをもとに作成。

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