ヒムス県では、『ハヤート』(5月18日付)などによると、シリア軍がUNESCO世界文化遺産のパルミラ遺跡を擁するタドムル市(人口約3万5,000人)北部一帯でダーイシュ(イスラーム国)と交戦、その進軍を食い止めるとともに、北部郊外の複数カ所を奪還した。
ヒムス県のタラール・バラーズィー県知事は、AFP(5月17日付)に対して、シリア軍がダーイシュの進軍を挫折させ、ダーイシュによって占拠されていたタドムル市の北部および東部郊外から戦闘員を放逐するとともに、同市北西部の高地、テレビ・ラジオ電波塔一帯、同市入口にあるスィット検問所を奪還・制圧したと述べた。
バラーズィー県知事によると16日以降のシリア軍による作戦で、ダーイシュ戦闘員130人以上を殲滅したという。
またシリア人権監視団は、シリア軍と国防隊がタドムル市北部地区に進軍し、ダーイシュを後退させることに成功したと発表した。
同監視団によると、シリア軍はまたタドムル市の砦(パルミラ砦)一帯に進軍した。
これに先立ち、シリア軍はタドムル市北部一帯、砦周辺、タドムル刑務所一帯のダーイシュ拠点に対して、戦闘機とヘリコプターで激しい空爆を行い、タドムル刑務所一帯での「樽爆弾」による空爆と戦闘では、ダーイシュ戦闘員20人以上が死亡したという。
一方、ダーイシュによる占拠が続くスフナ市に対しても、シリア軍が空爆を行い、5人が死亡、15人以上が負傷した。
なお、シリア人権監視団は、5月13日にスフナ市、アーミリーヤ村へのダーイシュの侵攻が始まって以降のタドムル市一帯での戦闘による死者数が295人に達していると発表した。
このうちシリア軍・国防隊委員は123人、ダーイシュ戦闘員は115人、ダーイシュによって処刑された民間人は49人にのぼるという。
他方、SANA(5月17日付)は、アーミリーヤ村および周辺の丘陵地帯、アーラーク油田一帯、ハイル油田一帯、ワーディー・アブヤド・ダム一帯、タドムル市東部および北東部の農場地帯で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊したと報じた。
またダーイシュ戦闘員はタドムル市内に3度目となる突入(潜入)を試みたが、シリア軍がこれを撃退し、外国人戦闘員多数を殺傷したという。
このほか、シリア軍は東サラーム村、ウンム・サフリージュ村、アブー・ハワーディード村、ムシャイリファ村近郊の丘陵地帯でも、ダーイシュと交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊したという。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市北東部のシャフバー・ダム地帯で、ダーイシュ(イスラーム国)とジハード主義武装集団が交戦した。
一方、SANA(5月17日付)によると、シリア軍がマンビジュ市内のダーイシュ(イスラーム国)拠点複数カ所に対して集中的に攻撃を加え、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
シリア軍はまた、アレッポ市東部の航空士官学校一帯でもダーイシュと交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(5月17日付)によると、ダイル・ザウル市フワイジャト・サクル地区、農学部一帯、ガッサーン・アッブード交差点地区、カナーマート地区、工業地区で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラッカ県では、ARA News(5月17日付)によると、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のユーフラテスの火山合同作戦司令室が、タッル・アブヤド市西部および東部前線でダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、クーラク村、カルク・シャイハーン村、シャーシュ村を制圧した。
一方、クッルナー・シュラカー(5月18日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)がラッカ市内での厳戒態勢を強化し、「軍事、治安関係の任務を放棄した」との理由で外国人戦闘員(ムハージリーン)複数名を逮捕した。
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ハサカ県では、ARA News(5月17日付)によると、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊がタッル・タムル市とアーリヤ穀物サイロ間の国際幹線道路上に位置するアルバイーン村一帯で、ダーイシュ(イスラーム国)と交戦、同村を制圧した。
AFP, May 17, 2015、AP, May 17, 2015、ARA News, May 17, 2015、Champress, May 17, 2015、al-Hayat, May 18, 2015、Iraqi News, May 17, 2015、Kull-na Shuraka’, May 17, 2015、May 18, 2015、al-Mada Press, May 17, 2015、Naharnet, May 17, 2015、NNA, May 17, 2015、Reuters, May 17, 2015、SANA, May 17, 2015、UPI, May 17, 2015などをもとに作成。
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