トルコによるイラク北部のPKK拠点への爆撃、米国によるシリア北部の「安全保障地帯」設置、「穏健な反体制派」への支援に関する米トルコ間の合意の全貌(2015年8月5日)

『ハヤート』(8月5日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)は、ダーイシュ(イスラーム国)による領内での「テロ」に端を発するイラク北部へのトルコ軍の空爆やシリア北部での「安全保障地域」(安全保障島、جزيرة آمنة)の設置などをめぐる米国とトルコの合意内容の詳細を伝えた。

西側の高官が『ハヤート』に明らかにしたところによると、この合意は過去8ヶ月間におよぶ米国とトルコの折衝を経て成立し、以下の項目を骨子とするという:

1. トルコ政府は、ダーイシュ殲滅をめざす有志連合を主導する米軍に限り、トルコ南東部のインジルリク空軍基地の使用を認める。
2. トルコ政府は、ダーイシュに対する「インキラーブ」(政策転換)を開始し、領内のダーイシュのネットワークを解体し、対シリア国境、および対西欧国境の規制を強化する。
3. 米政府は、シリア北部アレッポ県ジャラーブルス市一帯からアアザーズ市一体、ユーフラテス西岸からマーリア市一帯、バーブ市一帯にいたる全長117キロ、幅70キロの地域を「安全保障島」として実質承認する。
4. 米政府は、米軍がトルコ領内で教練したシリアの「穏健な反体制派」への航空支援を行う。
5. トルコ政府は、クルディスタン労働者党(PKK)に対する武力行使を行う。
6. 「安全保障島」の設置を通じて、西クルディスタン移行期民政局が実効支配するアレッポ県アイン・アラブ市一帯(コバネ)とアフリーン市一帯(アフリーン地区)、さらにはハサカ県(ジャズィーラ地区)を分断する。
7. 「安全保障島」の設置は国連決議などで承認せず、有志連合戦闘機の飛行を通じて実体化する。
8. 米政府は、イラク政府を通じて、シリア政府に対して「安全保障島」上空での有志連合戦闘機をレーダーで捕捉し、シリア軍戦闘機を近づけないよう告知・要請する。

AFP, August 4, 2015、AP, August 4, 2015、ARA News, August 4, 2015、Champress, August 4, 2015、al-Hayat, August 5, 2015、Iraqi News, August 4, 2015、Kull-na Shuraka’, August 4, 2015、al-Mada Press, August 4, 2015、Naharnet, August 4, 2015、NNA, August 4, 2015、Reuters, August 4, 2015、SANA, August 4, 2015、UPI, August 4, 2015などをもとに作成。

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