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国内の動き(シリア政府の動き)
アサド大統領はダマスカス訪問中のアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と会談した。
会談後、宿泊先のシェラトン・ホテルに戻ったブラーヒーミー共同特別代表は、「シリアの状況は依然として懸念を呼ぶものだ。我々はすべての当事者が、シリア国民の切望する解決に向かうことを希望する」と述べた。
またアサド大統領と「いつものように将来とり得る措置に関して意見を交換した」と付言した。
一方、SANA(12月24日付)によると、アサド大統領は、ブラーヒーミー共同特別代表に対して、シリア国民の国益に資するあらゆる努力を成功させ、主権と独立を維持することに専心する意思を示した。
会談には、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣、アフマド・アルヌース外務在外居住者省次官らが同席した。
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クルディーヤ・ニュース(12月24日付)は、「シリアのクルド人地区」で行った最新の世論調査結果として、回答者の87.6%が自由シリア軍の進入に反対、10%が賛成、2.4%が分からないと回答したと報じた。
同世論調査は、シリア国内外で暮らす500人を対象とし、そのほとんどがインターネットを通じて回答した、という。
回答の選択肢は、「はい、自由シリア軍はシリア全土の軍である」、「いいえ、クルド人が自分たちの地域を自衛する」、「分からない」の三つ。
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『ガーディアン』(12月24日付)は、NATOによるトルコへのパトリオット・ミサイル配備に対抗するかたちで、シリア政府がロシア製の地対空ミサイルを導入、ロシアの軍事顧問団が常駐している、と報じた。
同紙によると、ブークM2、パーンツィリーS1などが多数買い入れられたという。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、東グータ地方の都市・村(ジスリーン町など)に対して、軍が空爆を行った。
またムウダミーヤト・シャーム市、ダーライヤー市などでは軍と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(12月24日付)によると、ヤブルード市各所、ドゥーマー郊外、スバイナ町、フサイニーヤ町、ダーライヤー市などで軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
アクス・サイル(12月25日付)が自由シリア軍消息筋の話として、ジャルマーナー市で軍事情報局の部隊司令官が反体制武装勢力の要撃を受け、暗殺された、と報じた。
反体制武装勢力は同市で車に爆弾を仕掛けて爆発させ、市民5人を殺害、現場に駆けつけた部隊を要撃した、という。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区で、軍が反体制武装勢力と交戦した。
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ハマー県では、シリア人権監視団が、シャームの民のヌスラ戦線、部族自由人旅団、シャーム自由人大隊が、軍および体制支持者との交戦の末、アラウィー派が多く済むマアーン市の大部分を制圧したと発表した。
この戦闘で反体制武装勢力戦闘員11人と、軍・体制支持者20人以上が死亡した。
またハーニー・ハマウィーを名乗る活動家は、反体制武装勢力は地対空兵器を使用して、マアーン市郊外で戦闘機を撃墜したと主張した。
一方、SANA(12月24日付)によると、ラターミナ町、マアーン市で、軍が住民の要請を受け反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
またアズィーズィーヤ市の検問所、アブー・ウバイダ村(ムハルダ市郊外)などで、軍は反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、手製のロケット弾などを押収した。
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アレッポ県では、SANA(12月24日付)によると、アレッポ市カルム・マイサル地区、旧市街、ライラムーン地区、フライターン市、マアーッラ・アルティーク村、ハイヤーン町、ズィルバ村、カフルナーハー村、ナッカーリーン村などで軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
またアレッポ市ブスターン・カスル地区では、反体制武装勢力が仕掛けようとしていた爆弾が誤爆し、多数の戦闘員が死傷したという。
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ヒムス県では、SANA(12月24日付)によると、ラスタン市で、軍が反体制武装勢力のアジトを攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
反体制勢力の動き
『ハヤート』(12月25日付)は、シリア国内外の有識者が「www.creatvesyria.com」を開設し、体制派、反体制派双方における穏健な「サイレント・マジョリティ」による対話を呼びかけている、と報じた。
このサイトは、反体制派のアーリフ・ダリーラ、タイイブ・ティーズィーニー、カミール・ウートラークジー(研究者)、親体制派のマーズィン・ビラール、マーズィン・バイティンジャーナ、ファーティフ・ジャームースら約40人が立ち上げた。
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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表のシリア訪問に合わせるかたちで、ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団は、ヒムス県の複数の活動家の話として、「日曜(23日)夜、ヒムス市ハーリディーヤ・バイヤーダ戦線で、6人の反体制派戦闘員が、白い煙を放つ無臭のガスを吸って…激しいめまいや頭痛をもよおした」と発表した。
同監視団によると、「軍が放った爆弾が壁に衝突して白い煙を出し…、明らかに伝統的兵器とは異なる」が、「ガスの種類は特定できない」という。
同様の発表はこれまでにも地元調整諸委員会が行っており、それによるとヒムス市ハーリディーヤ地区で、軍が反体制勢力に対して、麻痺症状、呼吸困難、視覚障害などをもたらすガスを使用したのだという。
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クッルナー・シュラカー(12月24日付)は、フェイスブックの情報として、トルコのシャンウルファ市のホテルで、アラブ、トルクメン、クルドの部族長、キリスト教徒、自由シリア軍の司令官合わせて600人が集い、ジャズィーラ・ユーフラテス解放戦線を発足したと報じた。
クルディーヤ・ニュース(12月25日付)によると、会合は3日間にわたって開かれ、シリア国民評議会メンバーでシリア革命反体制勢力国民連立メンバーでもあるナウワーフ・バシールが指導、「テロ組織」である民主統一党の要求を退ける必要、同党に対抗するため自由シリア軍を派遣する必要を確認した、という。
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シリア国民評議会は、ハマー県ハルファーヤー市で発生し、60人以上が死亡したとされるパン屋への「樽爆弾」による空爆を「虐殺」と非難した。
パレスチナ人の動き
PFLP-GC(ラーマッラー)のフサーム・アラファート報道官は、ダマスカス県ヤルムーク区での反体制武装勢力との戦闘の指揮を執っていた政治局メンバーのニダール・アルヤーンが、シャームの民のヌスラ戦線によって同地区で暗殺されたと発表した。
アラファート報道官はまた、シリア革命反体制勢力国民連合が「この犯罪の全責任」を負っていると非難した。
諸外国の動き
ロイター通信(12月24日付)は、トルコ高官の話として、トルコがこれまでの拒否の姿勢を撤回し、NATOの非軍事活動へのイスラエルの参加を2013年以降認めることに合意したと報じた。
トルコは、2010年5月にガザへの支援物資を運んでいたマヴィ・マルマラ号がイスラエル軍の襲撃を受けて以降、イスラエルの参加を拒否していた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、RT(12月24日付)に対して、「シリアが化学兵器を使用するとは思わない。そのようなことをしたら、政府にとって政治的自殺行為のようなものだ」と述べた。
AFP, December 24, 2012、Akhbar al-Sharq, December 24, 2012、’Aks al-Sayr, December 25, 2012、The Guardian, December 24, 2012、al-Hayat, December 25, 2012、Kull-na Shuraka’, December 24, 2012、al-Kurdiya News,
December 24, 2012, December 25, 2012、Naharnet, December 24, 2012、Reuters,
December 24, 2012、SANA, December 24, 2012などをもとに作成。
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