2012年12月31日のシリア情勢

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区内の軍工場地帯で、拷問の傷跡のある身元不明の遺体数十体が発見されたという。

シリア革命総合委員会によると、遺体は50体近くにおよび、首などを切られており、「シャッビーハ」が「戦場処刑」したものだと断じている。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市周辺で軍と反体制武装勢力と交戦し、砲撃で子供1人を含む5人が死亡した。

匿名の活動家によると、反体制武装勢力はダーライヤー市を「迫撃砲や手製のロケット弾の発射拠点にし…アラウィー派が多く住む(ダマスカス県)マッザ区で「シャッビーハ」を攻撃してきた」という。

一方、SANA(12月31日付)によると、ダーライヤー市、ズィヤービーヤ町、ビビーラー市、フジャイラ村、ドゥーマー市などで、軍が反体制武装勢力を追撃、「ゴラン殉教者」メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(12月31日付)によると、アアザーズ市、サフィーラ市、カラースィー村、ラスム・アッブード村、マンナグ市、マンスーラ村、ウワイジャ地区、ナッカーリーン村、ハーン・トゥーマーン村、アレッポ市ジャズマーティー地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ジャンダル地区などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

一方、ロイター(12月31日付)は、アレッポ市で取材活動をしていたリビア人カメラマンのアイマン・サフリーが狙撃され負傷した、と報じた。

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ヒムス県では、SANA(12月31日付)によると、ハスヤー村、タッルドゥー市などで、軍が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。

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ハマー県では、SANA(12月31日付)によると、ムバーラカート市近くで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

国内の動き

シリアのワーイル・ハルキー首相は人民議会で演説し、「国民和解プログラムを支持し、現下の危機を対話と平和的方法によって解決しようとする地域および国際社会のあらゆるイニシアチブと協調し、シリアの内政への外国の干渉を阻止し、シリアの現状をシリア人自身が外国の圧力や指図を受けずに解決する問題と位置づける」と述べた。

SANA, December 31, 2012

SANA, December 31, 2012

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進歩国民戦線加盟政党以外の与党および野党からなる国民民主ブロックがダマスカス県で記者会見を開き、同県で対話会合開催の準備を行うことを決定したと発表した。

記者会見には、国民青年公正成長党のバルウィーン・イブラーヒーム書記長、アラブ民主団結党のマーヒル・カラム書記長、祖国シリア党のマジド・ニヤーズィー書記長ら野党の指導者らが出席した。

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シリアの中東統計局ホームページは、2012年9月のインフレ率が48.1%と、同年8月の8%に比べて40ポイント余りも上昇したとのデータを公開した。

反体制勢力の動き

シリア人権監視団のアリー・アブドゥッラフマーン代表はAFP(12月31日付)に対して、2012年のシリア国内の死者数が39,362人に昇り、2011年3月以降の死者総数が45,000人以上に達したと述べた。

2012年の死者の内訳は、民間人28,113人、軍兵士9,482人、離反兵1,040人。

シリア人権監視団は、発表した死者数に、身元不明者727人、そして「シャッビーハ」およびアサド政権を支持する民兵の死者が含まれないとしたうえで、これらすべての犠牲者を合わせると死者数は「10万人を越えるだろう」と付言した。

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自由シリア軍の広報局はビデオ声明を出し、自由シリア軍最高国防評議会議長(参謀長)のサリーム・イドリース准将を少将に昇進させたと発表した。

声明はアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐が読み上げた。

http://www.youtube.com/watch?v=RO9fVcarqMo&feature=youtu.be

自由シリア軍による昇進人事は、これまでにもたびたび行われ、リヤード・アスアド大佐が准将に昇進しているが、戦闘員の間でこうした人事が認知され、定着している形跡は皆無である。

クルド民族主義勢力の動き

シリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長はクルディーヤ・ニューズ(12月31日付)に対して、シリア革命反体制勢力国民連立に対するクルド最高委員会の姿勢は、シリア国民評議会に対するシリア・クルド国民評議会と同じで、無所属のブロックとして参加することになろうと述べ、国民連立への参加しないことを暗示した。

ダルウィーシュ書記長は、国民連立に対してクルド問題への明確な姿勢を確定するよう要求しているのに対して、同連立がアサド政権打倒後にクルド問題についての協議を先送りしようとしているのが対立点だと述べた。

そのうえで、一部の勢力がクルド問題解決を保障しようとしない人種主義的姿勢をとっていると付言、トルコの支援を受けているシリア・ムスリム同胞団を批判した。

al-Kurdiya News, December 31, 2012

al-Kurdiya News, December 31, 2012

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クルディーヤ・ニューズ(12月31日付)は、民主連合党が主導する西クルディスタン人民議会は、「人民の生活を改善」するため、女性の権利保障、拘置所・刑務所での拷問の禁止、治安維持・検問所警備にかかる経費の関税・租税を通じた徴収、福祉機関・サービスの拡充、教育・高等教育の拡充、などを定めた法規則を制定したと報じた。

 

諸外国の動き

『サフィール』(12月31日付)は、レバノンの複数の消息筋の話として、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表がダマスカスでのアサド大統領ら政権首脳との会談で大統領の退任を提案しなかった、と報じた。

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『ザマン』(12月31日付)は、トルコ軍参謀本部や外交筋の話として、アレッポ県でトルコ空軍の士官4人が身柄を拘束されたとの一部情報を「ねつ造」、「操作された」情報と否定した

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イラクのアリー・ムーサウィー首相付広報顧問は声明を出し、そのなかでアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表による努力への支持を改めて表明するとともに、非政治的な解決は危機を長期化させ、被害、死傷者を増加させるだろうと懸念を表明した。

AFP, December 31, 2012、Akhbār al-Sharq, December 31, 2012、al-Ḥayāt, January 1, 2013、Kull-nā Shurakā’, December 31, 2012、al-Kurdīya News, December 31, 2012、Naharnet, December 31, 2012、Reuters, December 31, 2012、SANA, December 31, 2012、al-Safīr, December 31, 2012などをもとに作成。

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