在内野党・反体制派からなるシリア平和的変革勢力連立の使節団がモスクワを訪問し露外相と会談するなか、民主的変革諸勢力国民調整委員会がハイサム・マンナーア在外局長と民主統一党の除名を決定(2012年12月14日)

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国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市・サラーキブ市間に位置するズィルバ村にある軍運営学科で、軍と反体制武装勢力が激しく交戦した。

この戦闘により、反体制勢力の戦闘員9人と軍兵士8人が死亡した、という。

al-Hayat, December 15, 2012

al-Hayat, December 15, 2012

一方、SANA(12月14日付)によると、サフィーラ市、ムスリミーヤ村、ハンダラート・キャンプ、アレッポ市スッカリー地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市および周辺の村々が軍の砲撃を受け、ワーディー・ダイイフ基地周辺で軍と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(12月14日付)によると、マアッルバリート村、ハーッス村、マアッラト・ヌウマーン市郊外、ヤアクービーヤ村などで、軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(12月14日付)によると、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、シャブアー町などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(12月14日付)によると、ダイル・ザウル市労働者住宅地区、ブーサラヤー地区、ジュバイラ地区、マリーイーヤ村、ヒサーン村などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなどを殺傷した。

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ハサカ県では、SANA(12月14日付)によると、ハサカ市西部で軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ヒムス市では、SANA(12月14日付)によると、ラスタン市、タルビーサ市郊外で、軍が反体制武装勢力の拠点に対する特殊作戦を行い、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

また国境警備隊がレバノン領からの潜入を試みる戦闘員を撃退した。

シリア政府の動き

シリア国内で活動する与野党・反体制組織からなるシリア平和的変革勢力連立の使節団がモスクワを訪問し、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談した。

SANA, December 14, 2012

SANA, December 14, 2012

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使節団には、団長のカドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣(人民意思党、変革解放人民戦線)のほか、ファーティフ・ジャームース(平和的変革の道潮流)、ターリク・アフマド(シリア民族社会党)、マーズィン・ビラール(世俗民主主義潮流)らが参加した。

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ロシア外務省によると、会談において、両者はジュネーブでの合意(2012年6月)に沿って、即時暴力停止と、政治プロセスを通じた早急な転換を進める必要があるとの認識で一致した。

またRT(12月14日付)によると、ロシア外務省は、ジャミール副首相を「国内の野党を象徴する一人」として迎えた。

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ジャミール副首相は、会談後の記者会見で、外国の介入拒否と暴力停止という姿勢に依拠し、国民対話を通じた平和的解決のみが、シリアの危機解決の唯一の解決策だと述べた。

また在外の反体制勢力が外国による内政干渉を招いていると批判した。

一方、米国がシリア革命反体制勢力国民連立を「シリア国民の正統な代表」と承認したことに関しては、「民主主義の基礎、シリア国民の自決権への打撃」と非難した。

また米国がシャームの民のヌスラ戦線をテロ組織に指定したことについては、「この問題をめぐる米国との関係の経験を踏まえると、米国を信用できない。なぜならシリアの武装集団は西側から命令と支援を受けているからだ…。またなぜヌスラ戦線だけを(テロ組織の)リストに加えたのか…と感じる。彼ら(西側)は、ヌスラ戦線を口実にシリアの内政に干渉しようとしている」と主張した。

反体制勢力の動き

Elaph.com(12月14日付)などによると、反体制活動家がSNSなどを通じて「シリアでのテロに反対、アサドのテロに反対」と銘打ったデモの実施を呼びかけた。

『ハヤート』(12月15日付)はフェイスブックなどの情報をもとに、イドリブ県カフルナブル市などでシャームの民のヌスラ戦線との連帯を訴えるデモが発生したと報じた。

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ロイター通信(12月14日付)は、イドリブ県ジスル・シュグール市にあるシーア派のモスク、フサイニーヤ・モスクが反体制武装勢力によって焼き討ちにされる映像がインターネット上にアップされた、と報じた。

同報道によると、映像は13日にユーチューブにアップされたが、事実確認は取れていないという。

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Elaph.com(12月14日付)は、マフムード・マルイー弁護士の話として、カイロで12月20日に予定されている民主的変革諸勢力国民調整委員会の中央評議会会合で、執行委員会の改選、組織の再編を行うとともに、ハイサム・マンナーア在外局長と民主統一党を除名する、と報じた。

マンナーアと民主統一党の除名は「革命とシリアの街頭の立場との調和」を目的としている、という。

執行委員会メンバーでもあるマルイーによると、民主的変革諸勢力国民委員会は現在、執行委員会メンバーの多くがカイロに逃れており、主要な活動拠点も同地にあるという。

カイロに逃れたメンバーとしては、マルイーの他、マイス・ウライディー、マンスール・アタースィー、アブドゥッラフマーン・ハリーファ、ザカリヤー・サッカール、リーム・ファルハ、シュクリー・マハーミード(以上執行委員会メンバ-)、ムフイーッディーン・ハブーシュ(中央評議会メンバー)、マアムーン・ハリーファ(欧州支部書記長)などがいる。

またマルイーは、一部のメンバーが民主的変革諸勢力国民調整委員会の組織名を勝手に使用している、と述べた。

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シリア人権監視団によると、2012年3月以降の死者数が、43,088人に達したと発表した。うち30,195人が民間人、1,450人が離反兵、10,751人が軍兵士、だという。

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自由シリア軍参謀委員会を発足した反体制武装勢力は「シリア・アラブ共和国最高軍事司令評議会」の名で声明を出し、12月8日にトルコのハタイ県アンタキア市で開催された会合の詳細を発表した。

同声明の内容は以下の通り:

  • 550人以上の軍事評議会指導者、革命評議会指導者、各旅団・大隊指導者が出席。
  • 「革命勢力委員会」を設置し、261人の委員を選出。
  • 「最高軍事司令評議会」を設置し、5つの戦線(地区)から6人ずつの合計30人(士官19人、民間人革命家11人)を評議員に選出。
  • 5つの戦線から10人(軍人5人、民間人5人)を評議会副議長(副参謀長)に選出。
  • 評議会議長(参謀長)のもとに5つの戦線を統括する部局およびその長、武装委員会、財務委員会を設置。
  • その下に各県の革命評議会を配置。
  • 最後に、シリア・アラブ共和国の最高軍事権威、国防大臣である評議会議長(参謀長)を選出。

最高軍事司令部評議会メンバーは以下の通り:

1. 東部地区
ズィヤード・ハーッジ・ウバイド空軍大佐
アドナーン・ムハンマド・カウカブ中佐
ラーギブ・バシール・トゥウマ
ヤルマズ・サイード
ファラジュ・ハンムード・ラファジュ
ウマル・ダーダー

2. 北部地区
アフマド・イーサー・シャイフ
ムスタファー・アブドゥルカリーム
ジャマール・ハーリド・マアルーフ
アブドゥルジャッバール・アカイディー大佐
マフナー・ジャファーラ
アフマド・ウバイド

3. ヒムス地区
カースィム・サアドッディーン空軍大佐
ラーミー・ダーラーティー
アブドゥルハリーム・ガンヌーム少佐
イヤード・ジュムア
ムンズィル・アフマド・サッラース
アブドゥッラフマーン・スワイス大佐

4. 西部・中部地区
アブドゥルマジード・ドゥバイス准将
マーズィン・クナイフディー少佐
カマール・ハマーミー
フザイファ・ムスタファー・シャグリー
ユースフ・ムハンマド・ハサン
サアドゥッディーン・ハーシミー

5. 南部地区
ザフラーン・アッルーシュ
ハーリド・フサイン・アルヌース
ハーリド・ムハンマド・ハウラーニー大佐
ファーディー・サアド・アースィミー
アブドゥッラー・リファーイー大佐
イブラーヒーム・トゥーシー

参謀長は以下の通り:

サリーム・イドリース

副参謀長は以下の通り:

1. ヒムス地区
ファーティフ・ハッスーン大佐
ウサーマ・サーイフ・ジュナイディー

2. 東部地区
ムハンマド・アッブード中佐
サッダーム・ジャマル

3. 西部・中部地区
ムスタファー・ハーシム大佐
アブドゥルファッターフ・ウルーブ

4. 北部地区
アブドゥルバースィト・タウィール大佐
アブドゥルカーディル・サーリフ

5. 南部地区
ズィヤード・ファフド准将
バッシャール・アワド・ズウビー

部局およびその長は以下の通り:

1. ヒムス戦線
アブドゥッラー・バフブーフ大尉(作戦課長)
ウマル・シャムスィー中尉、ザカリヤー・ターハー(諜報課長)
アクラマ・バックール大尉(兵站装備課長)
アフマド・アブドゥッラフマーン・ハマウィー(事務財務課長)
ハーリド・バッカール(暫定法務課長)
ガーニム・サアドゥッディーン(暫定法務課長)

2. 東部戦線
ラーギブ・ハマド大佐(作戦課長)
ウマル・トゥラード少佐(諜報課長)
ウサーマ・ジャースィム少佐(兵站装備課長)
ムスタファー・イブラーヒーム中佐(事務財務課長)
アフマド・アーイド・ハルフ大佐(暫定法務課長)

3. 北部戦線
フサイン・アカイディー准将(作戦課長)
アリー・ザイン中佐(諜報課長)
ムハンマド・ムスタファー・バックール(兵站装備課長)
ファドル・ハッジー大佐(事務財務課長)
アブドゥッラフマーン・ハサン准将(暫定法務課長)

4. 南部戦線
マジード・サイイド・アフマド中佐(作戦課長)
ジャワード・サイード少佐(諜報課長)
アフマド・ナーイフ・フサイン少佐(兵站装備課長)
マズィード・ダッハーン少佐(事務財務課長)
ムハンマド・ワズィール(暫定法務課長)

5. 西部・中部前線
バースィル・スィルウ少佐(作戦課長)
マナール・シャムスィー(兵站装備課長)
マーヒル・ナッバハーン大佐(事務財務課長)
アブドゥッラッザーク・フライジャ(暫定法務課長)
ムハンマド・アワド大佐(諜報課長)

武装委員会は以下の通り:

1. 北部戦線
アブドゥルジャッバール・アカイディー大佐
ジャマール・マアルーフ

2. 東部戦線
ズィヤード・ハーッジ・ウバイド大佐
ファラジュ・ハンムード・ファラジュ

3. 西部・中部戦線
フザイファ・ムスタファー・シャグリー
ユースフ・ハサン

4. ヒムス戦線
カースィム・サアドッディーン大佐
アブドゥルハリーム・ガンヌーム少佐

5. 南部戦線
アブドゥッラー・リファーイー大佐
ハーリド・アルハウラーニー大佐

財務委員会は以下の通り:

1. 北部戦線
アフマド・ウバイド
アフマド・イーサー・アブー・イーサー

2. 東部戦線
ラーギブ・トゥウマ
アドナーン・カウカブ中佐

3. 西部・中部戦線
カマール・ハマーミー
サアドッディーン・ハーシミー

4. ヒムス戦線
ムンズィル・アフマド・サッラース
ラーミー・ダーラーティー

5. 南部戦線
ハーリド・アルヌース
ファーディー・アースィミー

諸外国の動き

ロシア外務省は声明を出し、ミハイル・ボクダノフ外務副大臣が「政府はますます支配を失いつつある」と述べたとの国内外報道に関して、そうした発言は行われなかったと否定した。

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ロシア外務省報道官は、モスクワで記者会見を開き、「我々は自らの立場を変えることはなかったし、今後も変えることはないだろう」と述べた。

またNATOによるトルコへのパトリオット・ミサイル配備が紛争の政治的解決を促さないと批判した。

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RT(12月14日付)は、ブラジルのデルマ・ロセフ首相がモスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談、ロシアの対シリア政策への全面支持を表明した。

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SANA(12月14日付)によると、中国外交部報道官は、シリア情勢に関して、公正かつ平和的な解決のため、シリア国民の主導のもと政治的移行プロセスを推し進める必要があり、そのために国際社会が建設的な支援を行うべき、と述べた。

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米国防総省報道官は、レオン・パネッタ国防長官がパトリオット・ミサイル発射台2基と兵士400人をトルコ軍支援のために派遣する文書に署名した、と発表した。

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ドイツの国会は、トルコにパトリオット・ミサイル発射台2基と兵士400人を派遣することを承認した。

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デヴィッド・キャメロン英首相は、「アサド大統領に、あらゆる選択肢が用意されている、という曖昧さのないメッセージを向けたい…。シリアでの移行プロセスが可能な限り早急に行われるよう反体制勢力と協力したい」と述べた。

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イスラーム諸国会議機構(OIC)のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長は、シャームの民のヌスラ戦線に関して、「イスラームを主唱する者すべてがイスラームを代表していない」と述べた。

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イラク移民避難民省高官は『ハヤート』(12月15日付)に対して、国連難民高等弁務官事務所とは別に、イラクが単独でシリア人避難民に滞在許可を付与することは不可能だ、と述べた。

AFP, December 14, 2012、Akhbar al-Sharq, December 14, 2012、Elaph.com, December 14, 2012、al-Hayat, December 15, 2012、Kull-na Shuraka’, December 14, 2012, December 15, 2012、al-Kurdiya News, December 14, 2012、Naharnet, December 14, 2012、Reuters, December 14, 2012、SANA, December 14, 2012などをもとに作成。

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