ラアス・アイン市で人民防衛隊と自由シリア軍が交戦、シリア外務省高官は軍が反体制勢力にスカッド・ミサイルを使用したとの報道を否定(2012年12月13日)

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国内の暴力

ダマスカス県では、SANA(12月13日付)によると、カタナー市で早朝、車に仕掛けられた爆弾が爆発し、子供7人を含む16人が死亡、20人以上が負傷した。

同報道によると、爆発は、カナター市の住宅街ラアス・ナブア地区のミハイル・スィムアーン学校前で発生した。

またジュダイダト・ファドル町でも、車に仕掛けられた爆弾が爆発し、女性3人、子供2人を含む8人が死亡、30人以上が負傷した。

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同じくダマスカス県では、SANA(12月13日付)によると、ジャウバル区で反体制武装勢力が家族を襲撃し、母親が死亡、子供2人が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(12月13日付)によると、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町などで、軍が反体制武装勢力を追撃、複数の戦闘員を殺傷した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(12月13日付)によると、ラアス・アイン市ダウワール・ハサカ地区で、民主統一党人民防衛隊と自由シリア軍が交戦し、後者の軍事評議会メンバー1人と使徒末裔大隊の戦闘員1人が死亡、5人が負傷したと報じた。

民主統一党はこの戦闘で人民防衛隊に死傷者は出なかったとしているが、複数の目撃者によると隊員2人が負傷した、という。

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アレッポ県では、SANA(12月13日付)によると、アレッポ市ブスターン・バーシャー地区、ライラムーン地区、フライターン市、マアーッラト・アルティーク村、ヤーキド・アダス村、ダーラ・イッザ市、ハンダラート・キャンプ、ムスリミーヤ村、などで軍が反体制武装勢力を攻撃し、タウヒード旅団メンバーや外国人戦闘員などを含む多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(12月13日付)によると、反体制武装勢力がヒムス市郊外のジャンダル街道で労働者が乗ったバスを襲撃、多数が負傷した。

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ハマー県では、SANA(12月13日付)によると、サラミーヤ地方で、灯油を積んだ貨物車が反体制武装勢力に襲撃された。

反体制勢力の動き

UPI(12月13日付)は、ヨルダンのサラフィー主義潮流の発表として、シャームの民のヌスラ戦線におけるムジャーヒドゥーン・シューラー評議会およびシャリーア委員会が、アブー・アナス・サハーバをアミールに任命することを決定した、と報じた。

サハーバはヨルダンのザルカー市出身。

なおサハーバの前任のアミール、アブー・ジュライビード・トゥーバースィーもザルカー市出身で、イラクのアル=カーイダ機構のアブー・ムスアブ・ザルカーウィーの姉妹の夫だという。

アミール交代の理由、トゥーバースィーの消息について、ヨルダンのサラフィー主義潮流は明らかにしていない。

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『ワタン』(12月13日付)は、12日にダマスカス県カフルシューバー地区の内務省施設を狙った連続爆破事件がムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣を狙った暗殺テロだったと報じた。

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ダマスカス県カフルスーサ区での12日の連続爆弾テロに関して、シャームの民のヌスラ戦線はフェイスブック(12月13日付)で声明を出し、戦線メンバー2人による自爆攻撃だったと犯行を認めるともに、休憩施設で休憩中だったムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣を狙ったと発表した。

この自爆テロおよびその後の交戦で多数の治安要員と「シャッビーハ」を殺害したと戦果を鼓舞したもの、シャッアール内務大臣を殺害したとは宣言しなかった。

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AFP(12月13日付)は、スペイン空軍の元士官のルイス・モナーズなる人物が、同国の経済危機を受けて、シリアに入国し、反体制武装勢力の教練を行っていると報じた。

AFPの取材に対して、モナーズは「私は傭兵ではない」としたうえでシリアに入国したのが「無抵抗の子供が殺される映像に我慢できなかった」と述べた。

モナーズは2度シリアに入国、一度目は自費でイドリブ県、アレッポ県に入り、二度目は在外シリア人の援助を受け、ファールーク大隊と接触したという。

モナーズによると、彼が教練した戦闘員はシリア人だけで、誰も戦死しておらず、教練を通じて、10代前半の子供たちとも交流したという。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、ロイター通信(12月13日付)とのインタビュー(12日)に応じ、反体制武装勢力(シャームの民のヌスラ戦線など)がダマスカス周辺に進軍するなかで、シリア国民は外国の軍隊の介入を必要としなくなった、と述べた。

またシリアでのイスラーム主義過激派の台頭に関して、国際社会および地域の諸勢力に責任があると非難した。

一方、ハティーブ議長は、アサド大統領が権力移譲と出国の提案をしてくれば検討する、と述べたが、そうした提案はなされていない、という。

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ザマーン・ワスル(12月13日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立が近くトルコのイスタンブールにも事務所を設置すると報じた。

事務所設置はカイロ(本部)に続く動きで、アブドゥー・フサームッディーン元石油鉱物資源省次官が所長に就任する見込みだという。

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シリア人権機構Mafは声明を出し、反体制人権活動家のズハイル・ブーシュがカイロで何者かに暗殺された、と発表した。

国内の動き(アサド政権の動き)

カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣は、イタルタス通信(12月13日付)に対して、シリア国内で活動する反体制勢力・野党は、シリアの友連絡グループの出席者を「シリアの敵」とみなしている、と述べた。

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SANA(12月13日付)は、シリア外務在外居住者省の高官の話として、シリア領内で反体制勢力への攻撃のために軍が10日にスカッド・ミサイルを使用したとの欧米諸国の報道が、国際社会におけるシリアのイメージと地位を貶めようとする噂に過ぎない、と否定した。

同高官によると、スカッド・ミサイルは長距離ミサイルで、武装テロ集団の攻撃には使用されない、と付言した。

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シリア民族社会党のナズィール・ウズマ政治局長が声明を出し、12日のダマスカス県カフルスーサ区の内務省施設に対する爆弾テロで、党政治局メンバーで人民議会議員のアブドゥッラー・カイルーズが死亡した、と発表した。

カイルーズは、アレッポ市選挙区B部門選出の人民議会議員。

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、『インディペンデント』(12月13日付)に対して、米国をはじめとする国々(シリアの友連絡グループ会合参加国)がシリア革命反体制勢力国民連立を「シリア国民の正統な代表」と承認したことに関して、「現地情勢を変えるものではなく、いかなる成果も実現できない武装テロ集団を後押しすることを目的にしている」と非難した。

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アサド大統領は、アブドゥルカリーム・ハリールの任期終了を受け、ハーラ・ガザールをシリア投資委員会総裁に任命した。

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シリアン・デイズ(12月13日付)は、シリア証券委員会消息筋の話として、ムハンマド・ラーディブ・シャッラーフの任期終了を受け、シリア商業銀行頭取のガッサーン・カッラーウがダマスカス証券市場運営委員会議長に就任した、と報じた。

諸外国の動き

シリア軍が10日に反体制武装勢力の攻撃にスカッド・ミサイルを使用したとの欧米メディアの報道に関して、ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、そうした情報をつかんでいないとしたうえで、「もし(報道が)本当だとしたら、無実の人々の命を軽視した…絶望的な行動だ」と述べた。

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ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣は「反体制勢力の勝利に備えるかどうかだが、もちろん、そうした可能性は排除されない。現実を見なければならない。こうしたかたちで進む動きがある…。政府はますます支配を失いつつある」と述べた。

RT(12月13日付)によると、ボクダノフ外務副大臣はまた「彼ら(反体制武装勢力)は勝利が近い、アレッポ制圧間近だ、ダマスカス制圧間近だ、と言っている…。諸外国による反体制勢力の承認、戦闘員の教練、武器支援は、彼らにとって天啓のようなものだ」と付言した。

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ロシアのヴァレリー・ゲラシモフ参謀長は、「シリアの紛争解決が第3者の介入や武力行使を経ない、当事者どうしのみによってのみ可能だと強く確信している」と述べた。

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アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長は、アサド政権の「崩壊は近い。時間の問題だ」と述べた。

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オーストリア外務省は、モロッコ(マラケシュ)でのシリアの友連絡グループ会合の議長総括で、議長国のモロッコがシリア革命反体制勢力国民連立を「シリア国民の正統な代表と承認した」と発表したことに関して、「すべての参加国が採用した決定ではない。議長国による声明だ」と述べ、オーストリア政府が来週月曜日(12月17日)のEUの会合での方針に準じるとの姿勢を示した。

AFP, December 13, 2012、Akhbar al-Sharq, December 13, 2012、al-Hayat, December 13, 2012, December 14, 2012、The Independent, December 13, 2012、Kull-na Shuraka’, December 13, 2012、al-Kurdiya News, December 13, 2012、Naharnet, December 13, 2012、Reuters, December 13, 2012、SANA, December 13, 2012、Syrian Days, December 13, 2012、UPI, December 13, 2012、al-Watan, December 13, 2012、Zaman al-Wasl, December 13, 2012などをもとに作成。

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