英国のデヴィッド・キャメロン首相は、英議会下院で、英空軍が8月21日に無人戦闘機でシリア領内のラッカ市を空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)メンバーの英国人2人を含む3人を殺害したと証言した。
殺害されたメンバーの1人はレヤード・ハーン容疑者(21歳、カーディフ出身)で、ハーン容疑者は、2014年にダーイシュへの勧誘ビデオに登場、キャメロン首相によると「明白かつ現在の危険」だったという。
キャメロン首相は下院議員に対し「自衛行為として、また綿密な作戦計画のもと、レヤード・ハーンは、8月21日に英空軍の遠隔操作無人戦闘機の正確な空爆により殺害された。空爆時、彼はシリアのラッカを車で移動中だった…。空爆の標的であるレヤード・ハーンのほかにも、2人の仲間が殺害された。そのうち1人、ルフル・アミンも英国籍であることが確認されている。彼らは戦闘員で、民間人に犠牲者が出なかったと確信している」と述べた。
空爆は、米国が主導する有志連合の枠内ではなく、英国単独で実施されたという。
『ガーディアン』(9月7日付)などが伝えた。
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フランスのフランソワ・オランド大統領はパリで記者会見を開き、対シリア政策を方針転換し、シリア領内でダーイシュ(イスラーム国)に対する空爆を行う、と発表した。
オランド大統領はこれまで、イラク領内のダーイシュに対する有志連合の空爆には参加してきたが、アサド政権に利するとの理由で、シリア領内での空爆を見送ってきた。
記者会見で、オランド大統領は「私は国防省に対し、明日(8日)からシリア上空での偵察飛行を行い、ダーイシュに対する空爆を計画するよう要請した」と述べた。
オランド大統領は、シリア領内への地上部隊の派遣については、派遣部隊が「占領軍になりかねない」と述べ、「必然性がなく、非現実的だ」として否定、「自らの責任を果たすのは(フランスではなく)地域諸国の部隊であり、フランスは政治的解決策をもたらすために活動する」と表明した。
そのうえで、シリア情勢に関しては、アサド大統領の退陣が紛争解決の「本質」をなすと改めて述べた。
AFP(9月7日付)などが伝えた。
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英仏両首脳の発表に先立ち、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は4日、「シリア政府への軍事、技術支援を続ける」と述べる一方、『ニューヨーク・タイムズ』(9月4日付)などが、ロシアがシリア政府への軍事支援を強化しようとしていると伝えていたが、英仏はロシアに先んじて、シリアに軍事介入することになる。
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『ハヤート』(9月8日付)は、ギリシャ外務省消息筋の話として、ギリシャ政府当局が、9月1日から24日にかけてギリシャ領空のロシア軍機の通過を阻止するよう求める米国からの要請への対応を検討している、と報じた。
同消息筋は匿名を条件に「我々は土曜日(5日)に要請を受け、検討している」と語った。
AFP, September 7, 2015、AP, September 7, 2015、ARA News, September 7, 2015、Champress, September 7, 2015、The Guardian, September 7, 2015、al-Hayat, September 8, 2015、Iraqi News, September 7, 2015、Kull-na Shuraka’, September 7, 2015、al-Mada Press, September 7, 2015、Naharnet, September 7, 2015、NNA, September 7, 2015、Reuters, September 7, 2015、SANA, September 7, 2015、UPI, September 7, 2015などをもとに作成。
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