外国人戦闘員によるシリア紛争への直接関与が報じられるなか、トルコのアンタキヤ市で反体制武装勢力の統合司令部「自由シリア軍参謀委員会」の発足が発表される(2012年12月8日)

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国内の暴力

AFP(12月8日付)は、外国人戦闘員がシリアの反体制武装勢力の側について紛争に直接関与するようになっていると報じた。

SANA, December 8, 2012

SANA, December 8, 2012

同報道によると、外国人戦闘員のほとんどはサラフィー主義集団に属し、戦闘を行っているが、その数、展開地域、実際の影響力については不明な点も多い。

しかしその多くは、トルコのハタイ県アンタキヤ市を経由してシリア領内に不法入国しているという。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ヤブルード市などで軍と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(12月8日付)によると、軍がフサイニーヤ町、フジャイラ村、アクラバー村郊外、マディーラー市、ミスラーバー市、アルバイン市、ダーライヤー市、ドゥーマー市、ザマルカー町などでシャームの民のヌスラ戦線、イスラーム旅団の追撃を続け、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殲滅、装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(12月8日付)によると、フライターン市、カブターン・ジャバル村、ジャブール村、ムスリミーヤ村、ダーラ・イッザ市、アレッポ市ブスターン・バーシャー地区、ライラムーン地区などで軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

またアレッポ市カーディー・アスカル地区では、テロ集団退去を求める市民のデモに反体制武装勢力が発砲し、市民1人が死亡した。

一方、ザマーン・ワスル(12月8日付)は空軍情報部北部地区課長のアディーブ・サラーマ少将が、アレッポ市で暗殺されたと報じた

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ハマー県では、SANA(12月8日付)によると、ザラーキーヤート市などで軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦、多数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(12月8日付)によると、タルビーサ市郊外のサアン村などで軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦、多数の戦闘員を殺傷した。

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イドリブ県では、SANA(12月8日付)によると、ダイル・サンバル村、マガーラ村、サルジャ村などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦、トルコ人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。

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ダルアー県では、SANA(12月8日付)によると、ヒルバト・ガザーラ町で反体制武装勢力どうしが略奪品の分配をめぐって衝突し、多数の死傷者が出た。

一方、自由シリア軍東部地区前線司令官の一人ムハンマド・ラーフィイーは『ハヤート』(12月9日付)に対して、ヤルムーク大隊をはじめとする部隊連合はシリア・ヨルダン国境地帯の大部分を制圧した、と語った(未確認情報)。

ラーフィイーによると、反体制武装勢力は、第3連隊本部など軍の検問所多数に突入、爆破し、国境地帯に展開しており、近日中に同地帯全土の制圧を宣言できるのだという。

他方、ヨルダン軍総司令部は声明を出し、シリア領から発射された迫撃砲がヨルダン領に着弾し、兵士1人が負傷したと発表した。

サミーフ・ムアーイタ内閣報道官は『ハヤート』(12月9日付)に対して、砲撃を受け、ヨルダン軍はただちに反撃を行ったと述べた。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(12月8日付)によると、ラアス・アイン市南西部のマナージール村とアルバイーン村に自由シリア軍が進入しようとしたが、村人が撃退した。

同報道によると、ラアス・アイン市周辺の農村では2日前から自由シリア軍と村人との間で戦闘が続いており、両村での戦闘では、自由シリア軍側に多数の負傷者が出て、3人がトルコ領内に搬送されたという。

国内の動き

シリアの外務在外居住者省は国連安保理議長と事務総長宛てに書簡を提出し、「いかなる状況でも」、「(化学兵器が)存在したとしても」、シリア政府が化学兵器を使用することはないと伝えた。

また、「テロ集団」がシリア国民に対して化学兵器を使用する可能性があると警鐘を鳴らした。

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クッルナー・シュラカー(12月8日付)は、国民安全保障会議議長のアリー・マムルーク少将が法務大臣に、レバノンのサアド・ハリーリー前首相とウカーブ・サクル国民議会議員を「シリア国内でのテロ支援」で起訴するよう要請した、と報じた。

反体制勢力の動き

Kull-na Shuraka', December 8, 2012

Kull-na Shuraka’, December 8, 2012

クッルナー・シュラカー(12月8日付)は、トルコのハタイ県アンタキヤ市で開かれていた反体制武装勢力代表者ら(550人が出席)の会合が統合司令部「自由シリア軍参謀委員会」を発足、メンバー30人を選出して閉幕した。

参謀委員会の主なメンバーは以下の通り。

サリーム・イドリース准将(参謀長、ヒムス県ムバーラキーヤ市出身)
ムスタファー・アブドゥルカリーム准将(副参謀長)
アブドゥルカーディル・サーリフ大佐(委員長補佐)
ミスカール・バティーシュ准将
アフマド・ハーリド・バドリー准将
ジャマール・マアルーフ(イドリブ県ザーウィヤ山地方)
アフマド・イーサー(イドリブ県ザーウィヤ山地方)
アブドゥルバースィト・タウィール(イドリブ県ザーウィヤ山地方)
アブドゥルジャッバール・アカイディー(アレッポ県、副議長)
アブドゥルカーディル・サーリフ(アレッポ県)
アドナーン・ラーシド
アフマド・クーシュ
ジャマール・ヌーリー
ファイサル・ヤークート
ウサーマ・ディヤーブ

Kull-na Shuraka', December 8, 2012

Kull-na Shuraka’, December 8, 2012

メンバー30人のうち20人が軍人、10人が文民だという。

トルコのハタイ県アンタキヤ市で設立・選出された「自由シリア軍参謀委員会」に関して、ロイター通信(12月8日付)は、メンバー(30人)の約3分の2がシリア・ムスリム同胞団のメンバーとその同盟者だと報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のムスタファー・サッバーグ書記長はAFP(12月8日付)に対して、アンタキアで選出が合意された「自由シリア軍参謀委員会」には、シャームの民のヌスラ戦線メンバーは含まれないことを強調した。

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サミール・シーシャクリーは、自身を革命反体制勢力国民連立が10日に発表予定の暫定政府首班の候補者だと報じた『シャルク・アウワト』(12月7日付)の記事に関して、事実を否定した。

クッルナー・シュラカー(12月8日付)が報じた。

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クッルナー・シュラカー(12月8日付)は、シリア政府に近い消息筋の話として、ロシアが数日前に化学兵器の使用を消し去るための化学物質をシリア軍に供与した、と報じた(未確認情報)。

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ザマーン・ワスル(12月8日付)はアレッポ警察学校のサッルーフ・アフマド校長が政権を離反したと報じた。

諸外国の動き

英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、アサド政権に対して生物化学兵器をしないよう警告するとともに、英国がこれまでシリアへの軍事介入を否定したことはないと脅迫した。

しかし、化学兵器使用の可能性の根拠は示さなかった。

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国連人権高等弁務官事務所によると、イラクに避難したシリア人避難民の数が63,000人を越えた。

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国連のヘルヴェ・ラドス平和維持活動担当事務次長は、ゴラン高原でのシリア軍と反体制武装勢力の散発的戦闘の発生に対処するかたちで、UNDOFを増強すると発表した。

AFP, December 8, 2012、Akhbar al-Sharq, December 8, 2012、al-Hayat, December 9, 2012、Kull-na Shuraka’, December 8, 2012、al-Kurdīya News,
December 8, 2012、Naharnet, December 8, 2012、Reuters, December 8, 2012、SANA,
December 8, 2012、Zaman al-Wasl, December 8, 2012などをもとに作成。

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