『ハヤート』(11月16日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)は、14日にオーストリアの首都ウィーンで開かれたウィーン3会議での各国の協議の内幕に関して、米国が、サウジアラビア、トルコ、カタールなどアサド政権の退陣に固執する「シリアの友」の主導国としてではなく、参加各国の仲介者として振る舞い、これらの国に圧力をかけて合意に至った、と報じた。
それによると、米国は、ロシアとは対象的に戦略を持っておらず、アサド大統領の進退をめぐって意見を異にしていたもの、ロシアが提示した解決案に追随しようとしたという。
また、13日のパリでの同時多発テロ事件を受けるかたちで、参加各国は「テロとの戦い」や政治プロセスに向け歩み寄っていったという。
会議では、テロ組織と戦うすべての武装勢力の間で包括的な停戦を実現したうえで政治プロセスに着手すべきだとするロシア、イランをはじめとする国々と、移行プロセスを優先させ、アサド大統領の進退問題を決着すべきだとする諸外国(サウジアラビア、トルコ、カタールなどと思われる)が対立した。
これに対して、米国は後者を主導するのではなく、「仲介者」として振る舞い、国連の仲介のもとでのシリア政府と反体制派の対話開始と合わせて、停戦を実施する、との妥協案を示したという。
一方、シリア政府との交渉にあたる反体制派の統一代表団をめぐっては、米国が主要アラブ諸国(サウジアラビア、カタールなど)が参加したかたちで反体制派の拡大会合を開くことを主張、これらアラブ諸国やトルコは、シリア革命反体制勢力国民連立の主導のもとに統一代表団が設置されることを条件とすべきだと主張し、慎重な態度を示した。
また、イランは主要アラブ諸国の出席に異議を唱えたという。
移行プロセスをめぐっては、反体制派を支援する諸国は、国連安保決議によって期限を定めることを求めるなか、ジュネーブ合意(2012年)そのものを受諾していないイランをロシアが説得し、閉幕声明に移行期についての文言を含めることを認めさせた。
これを受け、米国は、アサド大統領の進退についての言及がなければ、行程すらも拒否しようとしたアラブ諸国(サウジアラビア、カタールなど)を説得し、この問題を先送りにしたという。
テロ組織の定義をめぐっては、ロシアとイランがシャームの民のヌスラ戦線を明記するよう強く求めたのに対し、アラブ諸国(サウジアラビア、カタールなど)は、組織としてのヌスラ戦線と、そのなかのシリア人メンバーを区別すべきだとしたうえで、「テロリストと目されるようなムハージリーン(外国人戦闘員)はヌスラ戦線においては少数派で、大多数のメンバーはシリア人であって、彼らはテロリストではなく、シリア政府の暴力を前にヌスラ戦線以外の選択肢がない」と主張した。
だが、最終的には、国連安保理が定める国際テロ組織のブラックリストに従い、ダーイシュに加えてヌスラ戦線の名も閉幕声明には明記されることになった。
AFP, November 15, 2015、AP, November 15, 2015、ARA News, November 15, 2015、Champress, November 15, 2015、al-Hayat, November 16, 2015、Iraqi News, November 15, 2015、Kull-na Shuraka’, November 15, 2015、al-Mada Press, November 15, 2015、Naharnet, November 15, 2015、NNA, November 15, 2015、Reuters, November 15, 2015、SANA, November 15, 2015、UPI, November 15, 2015などをもとに作成。
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