アレッポ市北部のダウワール・シーハーン検問所で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦するなか、シリア軍が反体制武装勢力弾圧にクラスター爆弾を使用したとの一部報道を否定(2012年10月15日)

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国内の動き

アサド大統領は2012年大統領決定第18号を発し、反体制武装勢力から奪還したアレッポ市の修復を目的とするウマイヤ・モスク保存修復委員会を設置、ムハンマド・ワヒード・アッカード・アレッポ県知事を委員長に任命した。

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シリア軍武装部隊は声明を出し、反体制武装勢力弾圧にクラスター爆弾を使用したとのヒューマン・ライツ・ウォッチの発表に対して、「我々はそのような爆弾を保有していない」と反論した。

SANA(10月16日付)が報じた。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市北部のダウワール・シーハーンの検問所で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、軍の兵士8人が死亡した。

Youtube, October 16, 2012

Youtube, October 16, 2012

ラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、この検問所はアレッポ市とアアザーズ市を結ぶ街道に位置し、アレッポ市への主要な入り口の一つだという。

一方、治安筋は、AFP(10月15日付)に対して、ダウワール・シーハーンで、3トンの爆発物を積んだ車を運転する「自爆テロリスト」を殺害したのち、爆弾の解除に成功した、と述べた。

アブドゥッラフマーン所長は、シーハーン国立病院近くの検問所で軍兵士が爆弾がしかけられた車を爆破した、と認めた。

AFP(10月15日付)によると、アレッポ市北東部のターリク・ブン・ズィヤード兵舎(アシュラフィーヤ地区バニー・ザイド)を反体制武装勢力が襲撃したが、軍・治安部隊が撃退し、多数の戦闘員を殺傷した。

このほかシリア人権監視団によると、アレッポ市バーブ・ナスル地区、ジュダイダ地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦、サーフール地区では軍・治安部隊が砲撃を行った。

他方、SANA(10月15日付)によると、アレッポ市旧市街、スッカリー地区、アウラム・スグラー村、第2ムハンディスィーン地区、ウワイジャ地区、フライターン市、アンジャーラ村、カフルナーハー村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力の拠点などを攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備(車輌)を破壊した。

またアレッポ市マルジャ地区で、反体制武装勢力による迫撃砲の攻撃で家族4人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ基地近くで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

一方、SANA(10月15日付)によると、ワーディー・ダイフ村、ハーミディーヤ市、マアッラト・ニウマーン市郊外、イフスィム村、バーラ村、サルジャ村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

マアッラト・ニウマーン市郊外で、反体制武装勢力が軍のヘリコプターを撃墜し、乗組員1人を捕捉する映像が、ユーチューブ(10月15日付)で公開された。

「アフバール・シャルク」(10月17日付)などによると、このヘリコプターはマアッル・ハッタート村の空爆を行っていた。

複数の反体制活動家はAFP(10月17日付)に対して、ヘリコプターは上空1500メートルを飛行中に14.5ミリ対空砲の砲弾を浴びた、という。

http://www.youtube.com/watch?v=SUbudh7RnG8

http://www.youtube.com/watch?v=ceePdEI2zks

http://www.youtube.com/watch?v=OXPYS1VR8y0

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市での軍・治安部隊の砲撃で子供3人が死亡した。

一方、SANA(10月15日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ブスラー・シャーム市で子供1人が射殺された。

一方、SANA(10月15日付)によると、ダルアー県西部、北部で、軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を継続し、外国人戦闘員を含む数十人の戦闘員を抹殺した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アサーリー地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、東グータ地方のカーラ市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のための砲撃を行った。

一方、SANA(10月15日付)によると、東グータ地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を継続し、シャイフーニーヤ村などで戦闘員数十人を殺傷、装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市が、軍の砲撃・空爆を受けた。

一方、『ワタン』(10月15日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、バーブ・トゥルクマーン地区、バーブ・タドムル地区など旧市街で、軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のための大規模な軍事作戦を継続した。

またクサイル市郊外のフサイビーヤ村で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「浄化」を実行した。

さらに、SANA(10月15日付)によると、タッルドゥー市、ヒムス市スルターニーヤ地区、ハーリディーヤ地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(10月15日付)によると、ムハルダ市郊外で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

反体制勢力の動き

自由シリア軍のタウヒード旅団は、アレッポ県シャイフ・ナッジャール地方で軍の戦闘機を撃墜したと発表した。

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『ニューヨーク・タイムズ』(10月15日付)は、複数の米国高官の話として、シリアの反体制勢力のために供与されている武器のほとんどが、過激なイスラーム主義者の手に渡っており、そのことが米国の不快感を高めている、と報じた。

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民主的諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はフェイスブック(10月15日付)で、自身がシリア政府との対話を行うことに執着し、シリア国民評議会を外国の手先とみなしていると述べたとする『ワタン』(10月14日付)の記事は事実に反すると発表した。

クルド民族主義勢力の動き

クルディーヤ・ニュース(10月15日付)は、クルド最高委員会がハサカ県各地の避難民らに支援物資800パッケージを配給した、と報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、反体制武装勢力弾圧にクラスター爆弾を使用したとのヒューマン・ライツ・ウォッチの発表に対して、「そうした確証はない…。この地域には違法に持ち込まれた大量の武器がある」と述べ、シリア軍が使用したことは確証できないと述べた。

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カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、レバノンのナジーブ・ミーカーティー首相との会談後の記者会見で、シリア情勢に関して、カタールが提案したアラブ平和維持軍派遣構想がアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表の国連軍派遣案に合致している、と述べ、ブラーヒーミー共同特別代表が国連軍派遣を検討していると主張した。

またアラブ監視団であれ、国連監視団であれ、充分な武装が必要との見解を示した。

一方、シリア国内の反体制武装勢力やサラフィー主義者への支援に関しては、「我々は国家として、世界のどの場所でも過激な集団を支援していない。我々が行っていることは、アラブ連盟の指示を受けており、シリアに関する連盟特別委員会の枠内でのことだ」と支離滅裂なことを述べた。

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イラクのバグダードを訪問中のアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は記者会見で、平和維持軍派遣の意思を示したとのカタール首相の虚言を否定した。

またブラーヒーミー共同特別代表は、イラン訪問時に、イード・アル=アドハー期間中の停戦を提案し、イラン側に協力を求めた、という。

アフマド・ファウズィー報道官が声明で明らかにした。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、ブラーヒーミー共同特別代表との会談で「文書化された詳細な、しかし非公式の提案」を行ったと述べた。しかしこの提案の詳細には触れなかった。

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イランのホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は、アーラム・チャンネル(10月15日付)に、ブラーヒーミー共同特別代表の訪問時に、「我々は暴力停止、武器供与・テロ集団支援停止、反体制勢力と政府の国民対話の実施を提案した」と述べた。

アブドゥッラフヤーン外務副大臣はまた「大統領選挙と国会選挙が行われる移行期間を…アサド大統領の監督のもとに行う」ことを提案し、シリア側が「この提案に同意している」と付言した。

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イラクのヌーリー・マーリキー首相は、ブラーヒーミー共同特別代表と会談し、「危機の平和的解決の方法について協議した」。

首相府の声明によると、この会談で、マーリキー首相は、「シリア国民の人命の保護、シリアの将来、統合の維持、地域の安定維持に向けた早急な行動」をブラーヒーミー共同特別代表に求めた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣によると、14日のルクセンブルグでのEU外相会合の晩餐の席でロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は「アサドは決して去らないだろう」と述べるとともに、西側諸国による制裁を厳しく非難した。

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EU諸国外相は、アサド政権を支持する28人と2法人への追加制裁を決定した。

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『クッルナー・シュラカー』(10月15日付)はシリアの治安当局がシリア国内のハマースの複数の事務所を閉鎖したと報じた。

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トルコの非常事態局は、シリア人避難身の数が10万363人に達したと発表し、EU諸国に避難民の受け入れを呼びかけた。

AFP, October 15, 2012, October 17, 2012、Akhbar al-Sharq, October 15, 2012, October 17, 2012、‘Aks al-Sayr, October 15, 2012、al-Hayat, October 16, 2012、Kull-na Shuraka’, October 15, 2012、al-Kurdiya News,
October 15, 2012、Naharnet, October 15, 2012、The New York Times, October 15, 2012、Reuters, October 15, 2012、SANA, October 15, 2012などをもとに作成。

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