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シリア政府の動き
シリアの人民議会を代弁する国営紙『サウラ』(10月2日付)は社説で、エジプトのムハンマド・ムルスィー政権に関して、「知性が欠けており、アラブの国家安全保障を破壊しようとしている」と批判した。
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SANA(10月2日付)は、ヒムス県、ハマー県での「最近の事件」に関連して逮捕された逮捕者のうち、殺人を犯していない151人を釈放したと報じた。
釈放者の地域別内訳はヒムス県タッルカラフ市で107人、ハマー県ハマー市及び郊外が44人。
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『シャルク・アウサト』(10月2日付)は、ラタキア県カルダーハ市でのムハンマド・アサド殺害およびハイイル家襲撃事件(未確認情報)に関して、活動家の話として最新情報を伝えた。
それによると、事件は9月29日に発生、ムハンマド・アサドは危篤状態で、いまだ死亡していない。
またアサド大統領がハイイル家襲撃事件に関与した者を処罰することを条件に、ハイイル家、ウスマーン家をカルダーハに追放することで事態の収集が進められている。
この活動家によると、事件の背景には、アサド政権が崩壊した場合、アラウィー派を誰が守るのかというカルダーハ市民の不安があった。
事件は29日、ムハンマド・アサドがアーリフ・ハイイルの喫茶店で、アサド政権の行方をめぐってアーリフの息子と口論となり、ムハンマド・アサドが撃たれた。
これを受け、ムハンマド・アサドの「子飼い」がハイイル家やカウズィー・ウスマーンの家を襲撃、ハイイル家の子息4人が負傷、ウスマーン家の子息5人が死亡した。
その後、共和国護衛隊や治安部隊が展開し、事態収拾をめざした。
だが、9月30日には、リフアト・アサド前副大統領の支持者がデモを行い、アサド政権の弾圧への遺憾の意を示すとともに、ハイイル家殺害に関与した者の処罰を求めた。
また10月1日には、ダイル・ザウル県での戦闘で死亡した兵士2人の遺体(アドラー家、ファーディル家の子息)がカルダーハ市に到着したのを受け、デモが発生した。
なおこれら一連の情報の事実確認はとれていない。
国内の暴力
アレッポ県では、『ハヤート』(10月3日付)は、活動家の話として、軍・治安部隊のアレッポ市への増援により「虐殺」の可能性がある、と報じた。
一方、SANA(10月2日付)によると、アレッポ市郊外のカルラク地方、アレッポ国際空港街道などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦、殲滅、装備を破壊した。
またアレッポ市のスライマーン・ハラビー地区、カルム・ジャバル地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺害した。
アッサーン村で、反体制武装勢力の戦闘員が略奪品の分配で仲違いを起こし衝突、ラスラーン家の戦闘員2人を含む3人が死亡した、という。
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ダマスカス郊外県では、SANA(10月2日付)によると、ハラスター市で軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、数十人の戦闘員を殺害した。
AKI(10月2日付)は、アンワル・ブンニー弁護士の話として、シリア法律研究調査センター執行委員長のハリール・マアトゥーク弁護士がダマスカス郊外県サフナーヤー市の自宅で逮捕されたと報じた。
一方、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市での砲撃で2人死亡、また「革命戦闘部隊」の攻撃で軍兵士6人が殺害された。
またザバダーニー市、サクバー市、フーシュ・アラブ村、バービッラー市でも空爆があったという。
『ワタン』(10月2日付)は、住民の話として、過去最大級の掃討作戦がドゥーマー市で行われていると報じた。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区とアサーリー地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。
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ヒムス県では、SANA(10月2日付)によると、ヒムス市ブスターン・ディーワーン地区、ワルシャ地区、バーブ・フード地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力が交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、SANA(10月2日付)によると、対ヨルダン国境のナスィーブ村で車爆弾が誤爆し、反体制武装勢力の戦闘員多数が死亡した。
ラジャート高原の学校に、反体制武装勢力が侵入し、器物を破損し、生徒を誘拐した、という。
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ハマー県では、SANA(10月2日付)によると、サラミーヤ地方のアカシュ村、アミール村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺害した。
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ラタキア県では、SANA(10月2日付)によると、ラタキア市・カサブ町間のカスタル・マアーフ町、バッルーラ村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、数十人の戦闘員を殺害した。
反体制勢力の動き
シリア革命支援クルド総合委員会は、信頼できる治安筋(アラウィー派)の話として、カーミシュリー市での自爆テロは政権が仕組んだ自作自演だと発表した。
しかし、事件に関しては自由シリア軍が犯行を認めている。
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シリア人権監視団はHPで、2012年10月1日現在の死者数は、民間人22,257人、兵士7,578人、離反兵1,187人に達したと発表した。
2012年9月の死者数は4,727人に上るという。
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ユーチューブ(10月2日付)で戦闘服を着た老人が、自身、子供、孫とともに「ムスタファー末裔大隊」を名のる武装組織を結成したと発表した。
この老人は自らの家族を「アッラーのための革命家たち」と自称、アレッポ市のサイフ・ダウラ地区におり(未確認情報)、アサド政権の軍を放逐すると述べた。
http://www.youtube.com/watch?v=I6SGiMBpk9E&feature=player_detailpage
クルド民族主義勢力の動き
トルコのマルディン県当局は声明を出し、同県シェイユルト地方にシリア領内から潜入しようとした「分離主義テロリスト」(PKK)と治安部隊が交戦し、2人を殺害したと発表した。
声明は、ハサカ県ダルバースィーヤ市の国境を警備中の「人民防衛隊」にトルコ軍が未明に発砲し、隊員3人が死亡した、とシリア人権監視団が発表したのを受けて出された。
「人民防衛隊」はPKK系の民主統一党の民兵組織。
レバノンの動き
「アフバール・シャルク」(10月2日付)は、ヒズブッラーのメンバーでシリア国内での作戦司令官を務めていたとされるムハンマド・フサイン・ハーッジ・ナースィーフ・シャンマス(通称アブー・アッバース)が9月30日にヒムス県クサイル地方での反体制武装勢力との戦闘中に戦死し、レバノンで葬儀が行われたと報じた。
複数の情報によると、シャンマスは自由シリア軍の要撃を受け、乗っていた車を即席爆弾で爆破され、死亡したという。
この要撃では、ヒズブッラーの兵士複数が死傷したという。
ヒズブッラーもシャンマスが「職務を遂行中に殺害された」として認めており、葬儀にはムハンマド・ヤズバク、イブラーヒーム・アミーン・サイイドら幹部が参列した。
ファールーク大隊のバッラー大隊が、ユーチューブ(10月2日付、その後削除)クサイル地方でのヒズブッラー・メンバー要撃の実行声明を発表した。
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チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領は『ハヤート』(10月2日付)に対して、「マイノリティを安心させ、暫定機関を保護するため、シリアへのアラブ平和維持軍」を派遣するべきだと述べるとともに、「反体制勢力が暫定機関を指導するための挙国一致政権を樹立」するべきだと持論を展開した。
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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、アサド政権による化学兵器使用の可能性に関して、「こうした過程が現実のものとなれば、すべての終わりだ」と述べた。
AFP(10月2日付)が報じた。
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エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣は『ハヤート』(10月4日付)に対して、「アサド大統領は来るべき(紛争和解のための)対話において何らの役割も果たさない…。改革の時が来た。現体制を変革せねばならない」と述べた。
AFP, October 2, 2012、Akhbar al-Sharq, October 2, 2012, October 3, 2012、AKI, October 2, 2012、al-Hayat, October 3, 2012、Kull-na Shurakaʼ, October 2, 2012、al-Kurdiya News, October
2, 2012、Naharnet.com, October 2, 2012、Reuters, October 2, 2012、SANA, October
2, 2012、al-Sharq al-Awsat, October 2, 2012、al-Watan, October 2, 2012、Youtube, October 2, 2012などをもとに作成。
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