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シリア政府の動き
ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣が国連総会で演説した。演説における主な発言は以下の通り。
「我が国は1年半にわたり体系的なテロに直面し、それは国民、人的・知的スタッフ、国家機関、そして歴史的史跡に及び、爆破テロ、暗殺、虐殺、略奪破壊に遭っている…。そのなかにはアル=カーイダの一派とされるヌスラ戦線による犯行もある」。
「我々は安保理がこれらの爆破テロを非難することに失敗したことを奇異には思わない。なぜなら安保理メンバーの一部がこうした行為を支援しているからだ」。
「外国に支援されたテロ、そしてそれとともに行われる前代未聞のメディアの煽動は、宗教的な過激主義に依拠しており、それは地域において旧知の複数の国によって保護されている。そしてこれにより、武器、資金、戦闘員の国境からの流入が促されている」。
「こうした現実において、我々は自問せざるを得ない…。テロとの戦いをめぐる国際社会の合意は、真剣に遵守されているのか?カタール、サウジアラビア、トルコ、米国、フランスは…資金、武器、外国人戦闘員を通じて、どれほど紛れもなくシリアでのテロを煽動・支援していることか」。
「シリア政府は事件発生当初から対話を呼びかけてきた。しかし、ほとんどの反体制勢力はそれに応えてこなかった」。
「国際社会の(紛争解決に向けた)あらゆる試みの成否は、シリア政府の遵守のみだけでなく、我が国における武装集団を支援する国々の遵守を必要とする。こうした国の筆頭にあげられるのが、トルコ、サウジアラビア、カタール、リビアなどで、これらの国は、武器供与、資金提供、教練、武装戦闘員の潜入を停止し、対話を促し、暴力を停止させる必要がある」。
「私はシリア国内外のすべての当事者に対して、祖国の屋根の下での建設的対話を呼びかける。シリアの門戸は対話と国家建設を望む全ての人々に開放されている。これを実現するため、私は本総会に出席する国の代表に呼びかける。我が国の暴力を終わらせるため、武器供与、資金提供、武装集団の潜入教練停止に向けて圧力をかけることを」。
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ムアッリム外務在外居住者大臣は、国連の潘基文事務総長と会談し、SANA(10月1日付)によると、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表のミッションを含むあらゆる側面で協力し、すべての当事者による暴力の停止、国民対話の開始をめざすことを確認した。
しかし、『ハヤート』(10月2日付)によると、潘事務総長は「もっとも強い調子」で、アサド政権による暴力行使と人権侵害を非難した。
マーティン・ネシルキー国連事務総長報道官によると、会談で潘事務総長は、シリアでの人権危機は周辺諸国の懸念も増幅させていると述べたという。
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ムアッリム外務在外居住者大臣は、マヤーディーン(10月1日付)に対して、米国が化学兵器問題を口実にして、イラクのフセイン政権を崩壊させる前に行ったことに似た「キャンペーン」を行っているのではと批判した。
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イタリア紙『コリエル・デラ・セラ』(10月1日付)は、フランスの諜報機関がアサド政権からリビアのムアンマル・カッザーフィー大佐の衛星電話の番号を入手し、居場所を突き止め殺害した、と西側外交筋の話をもとに報じた。真偽は定かでない。
カッザーフィー大佐は殺害される直前、シリアへの亡命を計画し、シリア側に衛星電話の番号を与えていた、という。
国内の暴力
アレッポ県では、SANA(10月1日付)によると、アレッポ市マルジャ地区、ハナーヌー地区、シャッアール地区、カーディー・アスカル地区、サーフール地区、カッラーサ地区、アウラム・クブラー町、バーブ市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
アレッポ県のワヒード・アッカード県知事はAFP(10月1日付)に対して、アレッポ市旧市街での火災が「軍の前進を妨害し、略奪を隠蔽するための武装テロ集団の犯行」と断じた。
また消防隊が消火のために現場に近づこうと試みた際、「武装テロ集団」の狙撃主が消防隊員1人を射殺したと付言した。
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AFP(10月1日付)は、地元の商人の話として、アレッポ市のアカバ地区、アワーミード地区、ウマウィー・モスク周辺など、旧市街の市場に軍は展開しておらず、その外の検問所から発砲を続けていると伝えた。
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アレッポ県では、SANA(10月1日付)によると、アレッポ市郊外のヌッブル市に、軍が人道支援物資を輸送した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町、アイン・タルマー村で、軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のため攻撃を加えたという。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルキーン市を軍が空爆し、18歳以下の子供8人を含む市民21人が死亡したという。
一方、SANA(10月1日付)によると、サルキーン市、ダーナー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タファス市で5人が砲撃により死亡した。
一方、SANA(10月1日付)によると、タファス市、ザイズーン地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、アル=カーイダの戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市・タドムル市間の幹線道路で、反体制武装勢力が軍を要撃し、兵士18人を殺害した。
一方、SANA(10月1日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区、サムアリール村(ハウラ地方)などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(10月1日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
反体制勢力の動き
自由シリア軍副参謀長を名のるアーリフ・ハンムード大佐は『シャルク・アウサト』(10月1日付)に対して、「ハサカ県軍事評議会が最近発足し、県内での軍事活動を開始した…。この作戦はより大きな軍事作戦への始まりだ」と述べ、9月30日のカーミシュリー市での自爆テロへの関与を認めた。
ハンムード大佐によると、ハサカ県軍事評議会は、ハサン・アブドゥッラー大佐によって結成されたという。
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シリア記者連盟は、2011年3月以降、78人のジャーナリストがシリアで死亡、2012年9月の死者数は13人に上ったと発表した。
13人中、5人がダマスカス県・ダマスカス郊外県、4人がダイル・ザウル県、2人がアレッポ県、1人がハマー県、1人がヒムス県で死亡した。
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シャーム・ウラマー連盟は、「国内の占領に対する努力と勢力の糾合」を呼びかけ、アサド政権の打倒を訴えた。
諸外国の動き
アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長はブリュッセルで記者会見を開き、「我々は軍事的解決を考えていない…。我々は軍事的オプションに関して何ら話し合っていない」と述べた。
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アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は、2012年のシリアからの避難民の数が当初の予想の4倍近くの70万人以上に達する恐れがあると述べ、同年の避難民の発生数が今世紀最大規模に達するとの懸念を表明した。
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ヨルダン治安当局は、ザアタリー国営避難民キャンプでのシリア人避難民の抗議デモを催涙ガスを使用して強制排除した。
聖典スンナ教会のザーイド・ハマード代表によると、デモには約500人のシリア人避難民が参加し、ヨルダン側治安要員を含む数十人が負傷した。
またデモ参加者は野戦病院、キャンプに放火、救急車を破壊した、という。
ヨルダンの総合治安局長報道官は、1日のヨルダンの天候は風が強く、数百のキャンプが風で飛ばされたのに抗議し、デモが発生したと述べた。
しかし、ハマード代表は、アサド政権を支持する集団が避難民のなかに潜み、暴動を煽ったと疑っている。
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AFP(10月1日付)は、ヨルダンのマフラクで「伝統的武器」や暗視ゴーグルを所持しているシリア人4人が逮捕されたと報じた。
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ハマースのハーリド・ミシュアル政治局長はトルコを訪問し、AKPの大会に出席した。
大会でミシュアル政治局長は「我々は自由と尊厳をめざすシリア国民の革命を歓迎する…。我々は、我々が自由、民主主義、改革を実現することと、レジスタンスを行い、覇権と占領に抵抗することが矛盾しないと考えたい」と述べた。
これを受け、シリア・アラブ・テレビ(10月1日付)は、ハマースのハーリド・ミシュアル政治局長が「レジスタンスを売り渡し…マフムード・アッバース大統領にとって代わろうとしている」と非難した。
http://www.youtube.com/watch?v=lVvRD-Opv8E
AFP, October 1, 2012、Akhbar al-Sharq, October 1, 2012, October 2, 2012、Corriere della Sera, October 1, 2012、al-Hayat, October 2, 2012、Kull-na Shurakaʼ, October 1, 2012、al-Kurdiya News, October
1, 2012、al-Mayadin, October 1, 2012、Naharnet.com, October 1, 2012、Reuters,
October 1, 2012、SANA, October 1, 2012、al-Sharq al-Awsat, October 1, 2012などをもとに作成。
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