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アサド政権の動き
各紙によると、ダマスカス県ラウダ地区にある米大使館前で数百人が、イスラーム教を冒涜したと非難されている映画の上映に抗議するデモを行った。
デモ参加者は、シリア国旗、アサド大統領の写真、そして反体制運動がシンボルとして用いている委任統治時代の旗を掲げて抗議行動を行った。
シリア・アラブ・テレビ(9月14日付)によると、デモは13日もあったという。
なお「アフバール・シャルク」(9月14日付)によると参加したのは約200人。
国内の暴力
ダマスカス県およびダマスカス郊外県では、ロイター通信(9月14日付)によると、軍戦闘機やヘリコプターがダマスカス県東部(タダームン区)、ザマルカー町を空爆した。
住民の一人によると、「自由シリア軍と関係あったすべての建物が完全に破壊された」。
また別の住民によると、「自由シリア軍は昨日からまったく見られない」という。
シリア人権監視団によると、ルクンッディーン区で車が爆発、また地元調整諸委員会によるとカーブーン区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した、という。
『ハヤート』(9月15日付)によると、ヤルムーク区でパレスチナ人の遺体15体が発見された。
同報道によると、彼らはバービッラー市で軍に処刑されたという。
一方、ダマスカス郊外県では、SANA(9月14日付)によると、軍・治安部隊がサイイダ・ザイナブ町、フジャイラ村で反体制武装勢力の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、シリア人権ネットワークによると、ブスラー・シャーム市では12人が死亡、反体制活動家はこれを「虐殺」と断じた。
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アレッポ県では、『ハヤート』(9月15日付)によると、アレッポ市シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区が軍・治安部隊の砲撃を受け、サーフール地区、マイサル地区、フィルドゥース地区、マーリア市、バーブ市が軍の空爆を受けた。
AFP(9月14日付)は、軍が高度からの空爆を行っており、自由シリア軍は反撃できない、という。
一方、アレッポ市マイダーン地区では、軍・治安部隊と反体制武装勢力が一進一退の戦闘を続けている、という。
これに対して、SANA(9月14日付)は、アレッポ市マイダーン地区にあるタウリード病院など反体制武装勢力が拠点として使用としていた施設複数を軍・治安部隊が「浄化」したと報じた。
またブスターン・バーシャー地区、ジャービリーヤ地区、ハナーヌー地区、ジャズマーティー地区などで、軍・治安部隊と反体制武装勢力と交戦し、戦闘員数十人を殺害した、という。
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ヒムス県では、『ハヤート』(9月15日付)によると、ラスタン市、クサイル市が軍・治安部隊の砲撃を受け、多数が負傷した。
一方、SANA(9月14日付)によると、タルビーサ市とラスタン市で軍・治安部隊が特殊作戦を断行し、反体制武装勢力の戦闘員多数を殺傷した。
またヒムス国民和解委員会が、ラスタン市、アイン・ナスル市、タルビーサ市、マシュラファ村、サアン村で女性2人を含む市民19人の釈放に成功した。
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ラタキア県では、シリア革命総合委員会によると、マルジュ・ザーウィヤ村で軍・治安部隊が「樽爆弾」を使用し、少なくとも6人が死亡した。
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ハマー県では、SANA(9月14日付)によると、ハマー市内で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、戦闘員多数を逮捕、武器弾薬を押収した。
反体制勢力の動き
民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表は、AFP(9月14日付)に、委員会の代表がアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と会談し、シリアの危機への視点や解決に向けた方策について協議したと語った。
会談は「重要で、有益で、実り多かった」という。
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中国外交部報道官は、9月16日から20日に民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表が北京を訪問すると発表した。
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イラクのヌーリー・マーリキー首相はシリア国民評議会在米加渉外局長のマフムード・ダッハーム・ムスラト局長を団長とするシリアの反体制勢力使節団とバグダードで会談したと発表した。
首相広報局の声明によると、会談でマーリキー首相は、「過渡期におけるイラクの経験を活用」するよう呼びかけるとともに、イラク政府がシリアの統合維持と内戦突入阻止を支持するとの立場を伝えた。
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自由民主シリアのための「共に」運動は声明を出し、「運動内の大多数の意思を反映」し、民主的変革諸勢力国民調整委員会からの脱会を決定したと発表した。
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『ハヤート』(9月15日付)によると、ハサカ県では、カーミシュリー市、アームーダー市、カフターニーヤ市で反体制デモが行われた。
またアレッポ県アレッポ市各地区、アイン・アラブ市などでも反体制デモが行われた。
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反体制活動家はフェイスブックなどで、ダマスカス郊外県ドゥーマー市などでの反体制デモの画像を配信した。
クルド民族主義勢力の動き
ハサカ県では、『クッルナー・シュラカー』(9月15日付)によると、ハサカ市、ラアス・アイン市、ダルバースィーヤ市、アームーダー市、ダイリーク市で、金曜礼拝後に数千人のクルド人が反体制デモを行った。
また同日夕方、トルコ西部イズミル県沖のエーゲ海での小型漁船沈没の犠牲者の遺体が到着すると、ハサカ市、ラアス・アイン市、ダルバースィーヤ市、アームーダー市で再び追悼デモが発生した。
レバノンの動き
軍は声明を出し、シリア人質8人と武器弾薬を積んだ軽トラックを差し押さえた、と発表した。
諸外国の動き
ローマ法皇ベネディクト16世はレバノンに向かう特別機のなかで記者団に対して、「数千人の命を奪う武装紛争」を停止させるため、シリアへの武器供与を停止するよう呼びかけた。
AFP(9月14日付)が報じた。
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ハマースのイスマーイール・ハニーヤ首相は、ガザのウマリー・モスクの演説で、ダマスカス県ヤルムーク区でのパレスチナ人殺害に触れ、「こうした方法でパレスチナ人の血を侮辱することに沈黙はできない」と批判した。
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エジプトのムスリム同胞団のムハンマド・バディーウ最高導師は、「国際的な談合」がシリアに対して行われ、「すべての者が勇敢なるシリア国民の勝利を恐れている」と述べ、シリアの反体制運動への支援をアラブ諸国の政府と国民に呼びかけた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、訪問先のウクライナで「アサド体制は必然的終焉に近づいている」との挑発的発言を行った。
AFP, September 14, 2012、Akhbar al-Sharq, September 14, 2012、ʻAks al-Sayr, September 14, 2012、al-Hayat, September 15, 2012、Kull-na Shurakaʼ, September 14, 2012, September 15, 2012、al-Kurdiya News, September 14, 2012、Naharnet.com, September 14, 2012、Reuters, September 14, 2012などをもとに作成。
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