シリア政府代表団はデミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表との会談で初めて政治文書を提出する一方、イスラエル首相による「ゴラン高原は永遠にイスラエルのもの」発言を非難(2016年4月18日)

スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表は、バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表を団長とするシリア政府代表団と会談した。

この会談で、シリア政府代表団は、週末にデミストゥラ国連特別代表が示した8項目からなる質問状に対して回答した政治文書を提出した。

シリア政府代表者がこうした政治文書を提出するのはこれが初めて。

『ハヤート』(4月19日付)が入手したコピーによると、この政治文書において、シリア政府代表団は、シリア政府には新憲法やそれに基づいた選挙について協議する権限はないと回答し、現行憲法を停止したかたちでの移行期ではなく、現行憲法のもとでの政治プロセスを追求する意思を示した。

また、シリア政府支持者、反体制派、無所属からなる挙国一致内閣の樹立、というデミストゥラ国連特別代表の提案に関しては、同内閣のもとで新憲法を起草することは可能だと回答したという。

その一方、シリア政府代表はこの会談で、17日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が占領下のゴラン高原で「ゴラン高原は永遠にイスラエルのものだ」と発言したことを非難し、シリア政府が国連安保理議長と事務総長宛に書簡で「無責任な挑発行為」に抗議するため介入するよう要請したことを明らかにした。

ゴラン高原の回復は、3月24日にデミストゥラ国連特別代表が、ジュネーブ3会議第3ラウンドにおける基本原則(議題)として発表した12項目(http://syriaarabspring.info/?p=27583)の第1項目に「シリアの主権、独立、統一の尊重。いかなる領土も譲歩せず…シリア国民は平和的な手段を通じて、占領下のゴラン高原回復に努める」と明記されている。

ネタニヤフ首相の発言は、これを根本から否定するのもので、シリア政府代表団がこの発言に言及したことで、デミストゥラ国連特別代表は、紛争解決に向けた議題の練り直しを迫られたかたちとなった。

AFP, April 18, 2016、AP, April 18, 2016、ARA News, April 18, 2016、Champress, April 18, 2016、al-Hayat, April 19, 2016、Iraqi News, April 18, 2016、Kull-na Shuraka’, April 18, 2016、al-Mada Press, April 18, 2016、Naharnet, April 18, 2016、NNA, April 18, 2016、Reuters, April 18, 2016、SANA, April 18, 2016、UPI, April 18, 2016などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.