シリア人権監視団は、ダマスカス郊外県ダーライヤー市一帯での14日晩の戦闘で、アラブ諸国からの民兵からなる武装部隊「アラブ民族護衛隊」の前線司令官が死亡したと発表した。
これに関して、SNN(5月15日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(5月15日付)は、戦死した前線司令官がアルジェリア人のフサイン・イーサー氏(アブー・ウダイ)だったと伝えた。
アラブ民族護衛隊は、2013年半ばのダマスカス郊外県での化学兵器使用疑惑事件を受け、米英仏がシリアへの懲罰空爆を画策した際に、これに対抗するために結成された組織で、アルジェリア人、パレスチナ人、エジプト人、そしてシリア人などの「スンナ派」のアラブ民族主義者が参加しているという。
クッルナー・シュラカー(5月15日付)によると、アラブ民族護衛隊は以下4つの大隊から構成されているという:
1. ハイダル・アーミリー大隊
2. ワディーア・ハッダード大隊
3. ムハンマド・ブラーヒーミー大隊
4. ジョール・ジャマール大隊
イーサー氏はこのなかのジョール・ジャマール大隊の司令官を務め、同部隊はダマスカス郊外県での戦闘に参加してきた。
イーサー氏は14日、自身の部隊を率いて、ダーライヤー市への突入を試みたが、ジハード主義武装集団の反撃を受け、死亡したという。
シリア政府を支援する外国人戦闘員としては、レバノン人、イラク人、イラン人、アフガン人など「シーア派」が注目される一方、シリアで暮らしてきたパレスチナ人の多くもシリア軍とともに反体制武装集団との戦闘にあたっているが、アルジェリア人戦闘員の死亡が報じられたのは、これが初めてであり、ドゥラル・シャーミーヤは、「アルジェリア政府がシリア政府に対してこうした支援を行っている事実が初めて確認された」と伝えられた。
なお、イーサー氏の戦死に先立って、2013年にはアラブ民族護衛隊のエジプト人司令官アーミル・イード・アブドゥッラー氏(アブー・ナースィル)がダマスカス郊外県での戦闘で死亡している。
AFP, May 15, 2016、AP, May 15, 2016、ARA News, May 15, 2016、Champress, May 15, 2016、al-Durar al-Shamiya, May 15, 2016、al-Hayat, May 16, 2016、Iraqi News, May 15, 2016、Kull-na Shuraka’, May 15, 2016、al-Mada Press, May 15, 2016、Naharnet, May 15, 2016、NNA, May 15, 2016、Reuters, May 15, 2016、SANA, May 15, 2016、SNN, May 15, 2016、UPI, May 15, 2016などをもとに作成。
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