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シリア政府の動き
ファールーク・シャルア副大統領離反に関するメディアの報道に対して、シリア・アラブ・テレビ(8月18日付)は、「一時たりとも祖国を離れようと考えたことはない」、「危機が始まった当初から副大統領が様々な当事者とともに流血停止と国民的改革実施のための包括的対話を通じた政治プロセスをめざしてきた」との速報を流し、否定した。
またSANA(8月18日付)によると、副大統領事務所が声明を出し、一部メディアによる離反報道を否定、「外国の軍事介入を排除した…国民和解の実現」を呼びかけた。
さらに副大統領事務所は、アフダル・ブラーヒーミー氏のシリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表就任への支持を表明した。
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変革解放人民戦線のカドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣とアリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣がロシアのモスクワに到着した。
SANA(8月18日付)によると、モスクワではロシア首脳と、危機打開に向けた包括的政治プロセス、国民和解に関して協議する、という。
国内の暴力
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市フィルドゥース地区、スッカリー地区、ブスターン・ザフラー地区、カッラーサ地区、イザーア地区、アアザーズ市などが軍・治安部隊の砲撃を受けた。
一方、SANA(8月18日付)によると、アレッポ市各所、ラトヤーン村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」掃討を継続した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区が軍・治安部隊の砲撃に曝され、2人が死亡した。
一方、SANA(8月18日付)によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区で反体制武装勢力の武器・弾薬庫が爆発し、多数の戦闘員が死亡した。
またタッルカラフ地方では、レバノンからの潜入を試みた反体制武装勢力を国境警備隊が撃退したほか、クサイル市では軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、タダームン区、ジャルマーナー市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
また複数の反体制活動家などによると、カダム区、アサーリー地区に対して軍・治安部隊が砲撃を行ったという。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市が軍・治安部隊の砲撃を受ける一方、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、フラーク市、ガーリヤ・ガルビーヤ市、カラク村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
一方、SANA(8月18日付)によると、フラーク市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ヒルブナフサ村に軍・治安部隊が突入し、反体制活動家を逮捕した。
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ハサカ県では、SANA(8月18日付)によると、ハサカ市・カーミシュリー市間の街道やカーミシュリー市近郊で軍・治安部隊が反体制武装勢力8人を逮捕した。
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ラタキア県では、SANA(8月18日付)によると、反体制武装勢力が占拠していたカサブ町のラジオ・テレビ局を軍・治安部隊が「浄化」した。
またフルンルック地方、ナブウ・ムッル地方でも軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を行った。
反体制勢力の動き
クルディーヤ・ニュース(8月18日付)は、国内の対立に関する世論調査を実施、PKK系の民主統一党と自由シリア軍との衝突がもっとも懸念されている、と報じた。
300人を対象に行われた世論調査では、38.3%が民主統一党と自由シリア軍との衝突を懸念、また38%がクルド民族主義政党どうしの衝突を懸念していることが分かった。
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3月に政権を離反したアブドゥー・フサームッディーン前石油省次官は、アラビーヤ(8月18日付)に対して、シャルア副大統領が「軟禁状態にある」と述べた。
フサームッディーン前石油省次官は「シャルアの姿勢は周知のもので、彼は以前からシリアを出国したいと考えている。しかしそれができない状況にあり、彼は長らく軟禁状態にある」と述べた。
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シリア民主フォーラムは声明を出し、シリア・クルド国民評議会のファイサル・ユースフ氏の事務局長就任に歓迎の意を示した。
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シリア民主フォーラムが声明を出し、自由シリア軍に関して、国際社会は政府軍・シャッビーハと同様、一部メンバーの非人道的な行為を非難するべきだと主張するとともに、「革命」の諸目的に奉仕するべく組織構築を行うべきだと呼びかけた。
具体的には、民族、宗教・宗派に基づく差別の拒否、国際慣習に基づく軍として組織編成・活動、国際法に基づく捕虜への対処、復讐の停止などを求めた。
レバノンの動き
NNA(8月18日付)は、ベイルート国際空港街道で武装した4人の集団がシリア人3人を一時拉致した、と報じた。
また、ベイルート郊外でレバノン人のイリヤース・アディーブ・アンダラーウス氏がシリアの反体制運動を支援していると疑われ17日に一時拉致されたと報じた。
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ミシェル・スライマーン大統領は、マロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教との会談後、記者団に対して、ミシェル・サマーハ元情報大臣のテロ未遂容疑事件に関して、「レバノンはシリアの高官(アリー・マムルーク)を起訴している。私は彼(アサド大統領)がこの件について明らかにすることを待っている」と述べた。
諸外国の動き
アフダル・ブラーヒーミー・シリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表は、アサド大統領の退陣の是非に関してロイター通信(8月18日付)に「私にとって、そういうことはきわめて時期尚早である。何が起きているかを充分知らないからだ」と述べた。
また安保理については、「彼らがどのように支援できるのか真剣に検討する…。彼らは私にこのミッションを実行するよう要請している。しかし、彼らが我々を支援しなければ、ミッションなど存在しないことになる。彼らは分裂しているが、このような事態に対処できるはずであり、そうすることを望んでいる」と述べた。
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アフダル・ブラーヒーミー氏のシリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表就任に関して、ロシア外務省は「アナン特使が準備したシリアでの正常化の行程表と停戦案、ジュネーブでのシリア作業グループの声明、国連での関連する決議に従って行動することを期待する」と歓迎の意を示した。
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米国務省は声明を出し、アフダル・ブラーヒーミー氏のシリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表就任への支持を表明し、シリア国民を代表とする政府樹立を求める合法的な要求に応えるよう求めた。
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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、アフダル・ブラーヒーミー氏のシリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表就任に関して、「彼自身が期待する偉業」が実現するよう支援すると誓約した。
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英国の外務副大臣は、アフダル・ブラーヒーミー氏のシリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表就任に関して、「完全に支持する」と表明した。
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イランのハサン・フェイルーズ・アーザーディー参謀長は、「米国、英国、シオニストはアル=カーイダや過激集団を利用して、シリアで内戦をしかけようとしている…。しかし彼らはいずれ、自分たちがこうした集団の標的になることを知るだろう」と述べた。
またイランの政治家・経済学者・元革命防衛隊司令官のモフセン・レザーイー氏は「我々は今日、シリアでの最終局面を目の当たりにしている…。シリアがアメリカ人の手に落ちれば、イスラーム復興運動はアメリカ的運動になるだろう。しかしシリアが自らの政策を維持すれば、イスラーム復興運動はイスラームに根を下ろすだろう」と述べた。
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UNSMISのババカール・ジャイ団長は、8月19日の監視団の任期終了を前にダマスカスで記者会見を開き、「民間人保護のため国際人道法に遵守する」ようアサド政権と反体制武装勢力に改めて求める一方、「こうした遵守はなされていない」と非難した。
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Sky News(8月18日付)は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣がシリア領空での飛行禁止空域設定を拒否した、と報じた。
AFP, August 18, 2012、Akhbar al-Sharq, August 18, 2012、al-Hayat, August 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 18, 2012, August 20, 2012、al-Kurdiya
News, August 18, 2012、Naharnet.com, August 18, 2012、Reuters, August 18,
2012、SANA, August 18, 2012などをもとに作成。
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