アレッポの反体制武装活動家が西側諸国が武器供与を拒み続ける場合アル=カーイダの支援を受けることも辞さないとの脅迫、アルジェリアのブラーヒーミー元外相がアナン特使の後任への就任を受け入れる(2012年8月17日)

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国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団が、マッザ航空基地周辺で反体制武装勢力と軍・治安部隊が交戦したとの声明を出した。

シリア革命総合委員会によると、「自由シリア軍」がマッザ航空基地近くのカフルスーサ・ダーライヤー検問所を攻撃した、という。

またシリア人権監視団などによると、カダム区(ダルアー街道)、タダームン区でも交戦があり、マッザ区(バサーティーン)、カフルスーサ区はヘリコプターの攻撃を受けた、という。

アレッポ県では、シリア革命総合委員会などによると、アレッポ市マイサル・シャルキー地区などが軍・治安部隊の激しい砲撃を受けた。

一方、SANA(8月17日付)によると、アレッポ市サイフ・ダウラ地区、カッラーサ地区、ブスターン・バーシャー地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力への掃討作戦を継続した。

ギリシャ・カトリック教会アレッポ司教区のジャーン・クライマーン・ジャンバルト師は声明を出し、ヨーロッパ人に対して、シリアの反体制武装勢力に武器を供与しないよう求めた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がタッル市を制圧し、反体制武装集団は同市から撤退」した。

またハジャル・アスワド市でも戦闘があった。

一方、SANA(8月17日付)によると、タッル市では軍・治安部隊の制圧により治安と安全が回復した。

またクドスィーヤー市、バービッラー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル地方で軍・治安部隊の発砲により5人が死亡した。

クサイル市では、自由シリア軍が軍・治安部隊の包囲を解除するための作戦を開始した、という。

一方、SANA(8月17日付)によると、フルクルス地方、タッルカラフ地方などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

またSANA(8月17日付)によると、ヒムス市で、国民和解委員会メンバーのハビーブ・ファンディー氏およびUNSMIS監視団出席のもと、殺人を犯していない反体制活動家75人が釈放された。

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ハマー県では、SANA(8月17日付)によると、ガーブ地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナーミル村で軍・治安部隊の要撃により青年2人が殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、後者の戦闘員1人が殺害された。

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イドリブ県では、複数の活動家によると、ジャルジャナーズ町がヘリコプターの攻撃を受け、家屋30棟以上が破壊された。

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インターネットなどでは、「我らが自由軍の統一をもって、我々の勝利は実現される」と銘打った反体制デモが呼びかけられ、ダマスカス県中心部で行われたというデモの映像などが配信された。

反体制勢力の動き

『ハヤート』(8月17日付)は、アレッポの反体制武装活動家が西側諸国が武器供与を拒み続ければ、アル=カーイダの支援を受けることも辞さないと述べた、と報じた。

al-Hayat, August 18, 2012, 2012

al-Hayat, August 18, 2012, 2012

アブー・アンマールを名のるアレッポの反体制武装活動家は「我々はここでアル=カーイダなど要らない。しかし誰も我々を支援しなければ、彼らと同盟する…。もしこれらの戦闘員がここに来たら、彼らは住民を洗脳し、3ヶ月もあればアレッポ市は彼らの基地となるだろう」と述べた。

またバラー・ハラビーを名のる活動家も「主たる目的はアレッポでの流血停止だ。西側もアラブも我々を支援しないのなら、我々はアル=カーイダに流血停止を頼むことになるだろう…。最後に自分たちの未来を決するのはアレッポ住民だ。バッシャール・アサドのような暴君に対して蜂起できる民衆は、その後(体制打倒後)にアル=カーイダと戦う能力はあるだろう」と述べた。

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MTV(8月17日付)は、ファールーク・シャルア副大統領が離反したと報じた。

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ダマスカス県・同郊外県軍事評議会は声明を出し、ヒズブッラーのメンバーだとされるハッサーン・ミクダード氏の拉致が、「自由シリア軍を編成していない架空の集団」が犯行声明を行っているとし、拉致が「シリア政府の協力のもとヒズブッラーが行ったねつ造」と断じた。

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シリア国民評議会渉外局のムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏はシリアに密入国し、アレッポ市に3日間滞在した。

滞在を受け、ナッジャール氏は、『ハヤート』(8月18日付)に対して「国際社会の早急な行動がなければ、シリアは完全に崩壊する」と述べた。

ナッジャール氏は「シリアのための民主的行動グループ」メンバーでもある。

レバノンの動き

ミクダード家連盟は、革命調整諸委員会報道官のアブドゥッラー・ヒムスィーを拉致したと発表した。

また同連盟が、ハッサーン・ミクダード氏の拉致問題をフォローアップするための委員会を設置したと発表した。

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NNA(8月17日付)は、トルコ人のアブデルバセト・オルソラン氏がベイルート郊外のシュワイハート市で誘拐された、と報じた。

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ミシェル・スライマーン大統領は、『サフィール』(8月18日付)に対して、「バッシャール・アサド大統領とはよい関係だ。隠し立てするべきことではない。私にとって最大の関心事はミシェル・サマーハ元情報大臣が持っていたとされる爆発物の発見・押収だ…。(大臣逮捕に関して、アサド大統領)が連絡してくるとは思っていなかったし、実際に連絡はなかった…。この問題にシリアの高官が関わっていないことを望んでいる」と述べた。

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、イスラーム諸国会議機構によるシリアの加盟資格停止を「一部のアラブの国の為政者は、パレスチナが強力にならないよう、シリアを根絶しようとしている」と非難した。

諸外国の動き

アルジェリアのアフダル・ブラーヒーミー元外務大臣が8月31日に退任するコフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使の後任への就任を正式に受け入れた。

複数の消息筋によると、アナン特使の「失敗と距離を置く」ことを望んだブラーヒーミー氏の要請により、同氏の地位は「合同特使」ではなく、「共同特別代表」となる。

またジュネーブにあった特使の本部も、ブラーヒーミー氏の要請により、ニューヨークに設置される。

これを受け、国連の潘基文事務総長は、ブラーヒーミー氏の共同特別代表を任命したと声明を出した。

声明では、ブラーヒーミー氏の「多大な能力と経験」を高く評価する一方、国連安保理に対して同氏への「統一された支援」を求めた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、ブラーヒーミー氏の共同特別代表就任に関して、「我々が前任者のアナン特使のような失敗を望まないのであれば、安保理でコンセンサスに達しなければならず、いかなる妨害も許してはならない」と述べた。

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フランスのレオン・ファビウス外務大臣はトルコ領内のシリア人避難民キャンプを慰問し、「バッシャール・アサドは存在するに値しない」と非難した。

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エイドリアン・エドワードNHCR広報官は、17万人以上のシリア人が周辺諸国で難民申請を行った、と発表した。

また8月14~15日の2日間で、アレッポ県アレッポ市、同県アアザール市、イドリブ県、ラタキア県から約3,500人がトルコ領内に非難した、と付言し、トルコにおけるシリア人避難民の急増に警鐘を鳴らした。

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イラン外務省報道官は、エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領が提案したシリア問題を協議するためのエジプト、イラン、サウジ、トルコからなる連絡グループ設置構想への支持を表明した。

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イエメンのバアス党はアラビーヤ(8月17日付)に対して、アブドゥッラー・アフマル民族指導部副書記長がアサド政権によって逮捕されたと述べるとともに、アサド大統領に退任を求めた。

AFP, August 17, 2012、Akhbar al-Sharq, August 17, 2012、AKI, August 17, 2012、al-Hayat, August 17, 2012、August 18, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 17, 2012、al-Kurdiya
News, August 17, 2012、MTV, August 17, 2012、Naharnet.com, August 17, 2012、NNA,
August 17, 2012、Reuters, August 17, 2012、al-Safir, August 18, 2012、SANA, August 17, 2012などをもとに作成。

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